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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

眉村ちあきはありのままに存在感や人気を巨大化させる 新木場コースト公演を見て

リアルサウンド

19/6/18(火) 18:00

 2019年6月4日、新木場スタジオコースト『眉村ちあき 3rdワンマンライブ~東京湾へダイビング!~』。タイトルどおり、1月13日渋谷クラブクアトロ(レポはこちら)に続く、3回目のワンマンである。クアトロは前半ひとり、後半はバンドを従えての2部構成だったが、今回は基本的にひとりでバックトラックを使用。曲によってアコギを持ったり、ハンドマイクになったり、というステージング。

(関連:なぜ即興ソングはリスナーの心を掴む? R-指定、眉村ちあき……聴き手を魅了するメカニズム

 渋谷の街を破壊する恐竜に10人の眉村ちあきが立ち向かう映像から1曲目「東京留守番電話ップ」が始まるとステージ前の紗幕に恐竜に乗った眉村ちあきのシルエットが映し出され、歌い始め、紗幕が落ち、恐竜から飛び降りるーーというオープニングだった。

 3曲目「メソ・ポタ・ミア」では特効で火の玉がステージ後方数カ所から上がる。4曲目「Queeeeeeeeeen」では、恐竜と戦うために、眉村が産んだ(という体の)キッズダンサー6人が登場、共にダンス。続く「ほめられてる!」では曲後半をキッズダンサーズにまかせて走り去った、と思ったらワイヤーに吊られて上空に登場、そのまま「ナックルセンス」を歌唱。7曲目「スクワットブンブン」(未発売曲)では歌いながらゴムボートで客の頭の上を渡ってセンターステージに移動。次の「MCマユムラ」はセンターステージで歌う。

 眉村ちあきのレパートリーの中でも屈指の「じーっと聴き入る曲」である「おじさん」、1分ほどのブレイクを経ての「ピッコロ虫」で、衣装替えして登場。「荻窪選手権」では、クリトリック・リスが宙吊りで現れて盛り上げる。

 フロアを歩いてサブステージに移動(する時のお客さんたちの通路の作り方、天才的に早い)、「I was born in Australia.」を歌う。すぐメインステージに戻って、老婆に扮したダンサー2人と共に「おばあちゃんがサイドスロー」。「奇跡・神の子・天才犬!」ではボートでフロアをぐるりと回り、もうすぐ1周というところで観客の上にすくっと立ってみせる。「本当はみんなと一緒に住みたいと思ってる、それぐらい好き。でも売れてえじゃん、こちとら。距離は離れていったとしても、心は離れたくないよな」というMCからの「代々木公園」で、本編をセンチメンタルに締めくくる。

 アンコールの前に、映像で今後のスケジュールが発表された。「9月20日 大阪ワンマン・BIGCAT」「10月21日 東京ワンマン・リキッドルーム」「6月22日 代々木公園で遊ぶ」「6月23日 バスジャック」「6月25日 仮免許取得(予定)」。

 アンコールは「書き下ろし主題歌」(というタイトルの曲)でスタート。ハンドマイクでステージを右へ左へ動きながら歌う彼女の背後にまた火の玉が上がり、レーザーが飛ぶ。初披露の新曲「緑のハイヒール」で、今日二度目の「じっと聴き入りタイム」を作ったあと、改めてお礼を言う。

 テレビ東京『ゴッドタン』のコーナーで披露した即興から生まれた名曲「大丈夫」、そしてボートにうつ伏せになってサブステージまで運ばれてから、「バイバイしたくないから作った曲です」と「本気のラブソング」。フロアをじっと見て「ハゲばっかだなあ」とひとこと。ドッと湧くフロア。

 ラストの「ビバ☆青春☆カメ☆トマト」では、「あっちの方まで行っちゃおう」とフロアへ下り、サブステージのさらに後ろまで到達。エンディングでは特効の赤テープがフロアに降り注いだ。

 「見たかさいたまスーパーアリーナ! 絶対来いよ!」と叫んで走り去る眉村、Queenの「We Are the Champions」に合わせて大合唱するオーディエンス……と、スクリーンに、スタジオコーストのバックステージが映し出される。カメラの前を駆け抜ける眉村ちあき、そのまま外に出てプールに飛び込む。『東京湾へダイビング』を実行し、爆笑と拍手がスタジオコーストを包んだのだった。

 独特な言語センス。ジャンルもルーツも整合性も関係なく、「曲が作れて歌えてしまう才能があった」としか言いようのないオリジナリティ溢れる音楽性。本能そのまんまのキャラクターと、数々の言動。というような「奔放で破天荒な部分」というのは、言うまでもなく表現者としての最大の武器であるが、売れていく過程においては障害になる場合もある。だから角を取ったり口当たりをやわらかくしたりして、多くの人に届けやすい形にする、つまりある程度無難にすることが必要となるわけだが、眉村ちあきのすごいところは、そのような配慮などまったく不要で、どんどんその存在が、注目度が、人気が巨大になっていっているところだ。そして、それがアーティストとしての存在理由に、必然にもなっている。自分が自分のままで世界に認められ、受け入れられ、愛されること。それが眉村ちあきの目指すところでもあるのではないだろうか。裏返すとそれは、他者を他者のままで認め、受け入れ、愛することでもある。って、大げさなことを書いている自分が恥ずかしくなってきたが、でも本当にそうだと思う、彼女のファンに対するスタンス、ファンとの関係性を見ていると。

 サブステージの柵の前に小さな女の子がいた。眉村ちあきが来るたびに、目をキラキラさせて本当にうれしそうに、ニコニコと観ていた。2時間半を超える長丁場だったのに、その女の子のキラキラとニコニコは最後まで一切曇らなかった。そのさまを見ていて、なんか泣きそうになってしまった。眉村ちあきらしいなあ、と思った。で、この勢いがさいたまスーパーアリーナのキャパにまで届くのは、予想よりも全然早くなりそうだなあ、と実感した。(兵庫慎司)

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