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矢本悠馬が語る、『半分、青い。』ブッチャー役で得た演技の幅 「答えは脚本に隠されている」

リアルサウンド

18/8/27(月) 6:00

 最終回まで残り約1ヶ月となった『半分、青い。』(NHK総合)。映画監督の道へと再び向かう涼次(間宮祥太朗)と別れた鈴愛(永野芽郁)は、ひとり娘の花野(山崎莉里那)を連れて故郷の岐阜・梟町へ。傷心の彼女を温かく迎えたのは、幼なじみの梟会の面々だ。

 リアルサウンド映画部では、梟会のメンバーの1人であり、本作『半分、青い。』の中で、1番のムードメーカーであるブッチャーこと西園寺龍之介を演じる矢本悠馬にインタビューを行い、役についてや撮影時のエピソード、今後の展望について話を聞いた。

参考:『半分、青い。』衣装担当が明かす、鈴愛が“ボーダー柄”の理由 「着こなし過ぎない部分も大事」

●“ブッチャー”をもっとたくさん観ていただきたい

ーー『半分、青い。』でブッチャーを演じて周囲から反響はありましたか?

矢本:登場するとTwitterが盛り上がったり、覚えてもらったりというのがシンプルに嬉しいです。ブッチャーというキャラクターを受け入れていただいたり、役者としてインパクトが残せていたりするのだなと捉えています。「東京編」ではしばらく登場がなかったので、忘れられていないか心配だったんですけど、久々に登場すると思った以上に反響が大きくて嬉しかったです。でも、矢本悠馬がブッチャーに食われた感じですね(笑)。僕の名前じゃなくて、キャラクターの名前がトレンド入りだったので、インパクトが大きかったのかなと。

ーー演じる上で意識していることは?

矢本:ブッチャーは見た目が派手で、抜けているところがあるイジられキャラです。でも、それでいて温かみがあって、器が大きく、丸みのある人物で接しやすい。そんな感じが出せればいいなと思っています。あと、観てくださっている方々の中に“ブッチャー像”があると思っていて、僕の知らないところで彼が独り歩きしているような気がするんです。だから、皆さんの想像に勝つ“ブッチャー像”を出していかないといけないなと。具体的な演技面では、他のキャラクターたちと比べてアップテンポなセリフ回しで演じようと心がけています。コメディパートなので、ゆったり喋るよりはリズミカルに喋ることを徹底しているんです。その方が明るく見えたり、キャラクターとして気楽な感じに見えたりするのかなと。なので、期間が空いて久々の撮影の時に普通のスピードでセリフを喋ると、「遅くない?」と監督に言われます(笑)。ブッチャーが出てくると、どんなシーンであってもお茶の間が少し明るくなるといいなと考えながら演じています。

ーー朝ドラは1人のキャラクターを長期にわたり演じなければいけません。自身の年齢より歳を重ねていく難しさはありましたか?

矢本:ブッチャーって、ずっと変わらない人なんじゃないかと思うんです。目立ちたい、モテたいという気持ちが、たぶんファッションや髪型に出ている。何歳になっても自分が若いと勘違いしていて、常に青春しているのかなと。精神面ではあまり歳を取らせないようにしようと思い、若い時からの“ブッチャー感”を残すように演じていました。そこに、おじさんっぽい言い回しを足して年齢を重ねている感じを見せていこうと。ひとつのキャラクターを長期間演じることに関しては、大河ドラマが1年だったので、正直「もう終わっちゃうの?」という感じです。まだまだブッチャー熱あるよ。不完全燃焼だよと(笑)。

ーー不完全燃焼……それはブッチャーというキャラクターだからこそだと。

矢本:そうですね。

ーーそう感じてしまう理由は何でしょう?

矢本:まだまだやれる、まだまだやりたい、ブッチャーをもっとたくさん観ていただきたい。ただそれだけの気持ちです。もっと色んないいところがあるし、やっぱりブッチャーのことが好きなんです。刹那の爆発力があっていいですよね(笑)。合コンにいたら助かる、家族の中にいたら助かる、そんな便利な男なんです。そこをもっと出せたらなと。

ーーブッチャーと矢本さんの重なる部分は?

矢本:彼は素直で、自分の言葉に嘘がない人だと思っています。思ったことを言ってしまうところは僕自身と似ていると感じます。

●自信があった『ロンバケ』のパロディ

ーーブッチャーの妻となるのが幼少期から一緒にいる木田原菜生(奈緒)です。このカップルが好きな視聴者も非常に多いですね。

矢本:2人は結婚しましたが……恋愛結婚ではないです。友情の延長線上という感じで、お互いに歳を重ね、一緒にいることが当たり前になっていた。結婚を迫られた時に、もし要求を飲まなかったら、この当たり前が無くなってしまうかもしれない、こんなに大切な人を失ってしまうかもしれないという怖さがありました。この人を失うことはブッチャーの人生において絶対にあってはいけないことだと。そんな確信と覚悟が、あのシーンで出てきました。勢いでプロポーズするかたちになってしまったと思いますが、一緒にいなきゃダメな存在です。

ーー演じる奈緒さんの印象や、エピソードはありますか?

矢本:奈緒ちゃんとはたくさんコミュニケーションをとっていました。心が綺麗で、ずっと笑顔で、一緒にいて落ち着く人です。なので、カップルになってプロポーズをして結婚するという時のお芝居は、あまり恥ずかしさはなく落ち着いてできました。

ーー奈緒さんとの共演シーンで印象深いのが、北川悦吏子さん脚本の『ロングバケーション』(フジテレビ系)のパロディです。矢本さんが木村拓哉さんが演じていた瀬名をコピーした名シーンは大きな話題となりました。

矢本:長尺で一発撮りだったんです。しかもけっこうなセリフ量だったので大変でしたし、木村拓哉さんの役を演じるというのは衝撃的でした。僕が演じるなんて……と、一旦、木村さんに心の中で謝りました(笑)。そして実際の映像を見て研究し、すべての動作を奈緒ちゃんと完全コピーするつもりで頑張ったのですが、本編で全然使われていませんでした……。どんなかたちでもいいので、あの映像を流して欲しいです!

ーーぜひ観たいです(笑)。

矢本:『半分、青い。』で1番自信のある芝居かもしれません(笑)。

ーー萩尾律とはお金の繋がりだけではない親友ですが、演じる佐藤健さんとの関係はどうでしょう?

矢本:僕はどの現場でも寝ているか漫画を読んでいるかなんですけど、一時期、健くんがなぞなぞの本を持ってきていて、それを一緒に解いていました。いつも健くんが僕より先に解くんですけど、たまに僕が先に解いちゃうと彼はめちゃくちゃ悔しがるんです。そんな時、なんだか律とブッチャーっぽいなと思いました。

ーー涼次役の間宮祥太朗さんとはプライベートで親しいようですが、涼次役を見ていかがでしたか?

矢本:彼は普段はかなり男らしい人なんです。なので涼次のような甘い雰囲気とか、ふわっとしたキャラクター性は一緒にいた時に感じたことがないので、それを見事に演じきっている、やっぱりいい役者さんだなと思います。褒めたくないですけど(笑)。褒めたら逆に「バカにしてんだろ」って連絡きそうなので、けなしてるくらいがちょうどいいです。

ーー物語は終盤に入り、梟会の面々も40代に差し掛かっています。高校生のときと大人となった彼らにはどんな変化がありますか?

矢本:空気とかは変わりませんが、みんな大人になっているし、その中でブッチャーと菜生のコンビがパワーアップしています。以前よりも個性が強くなっているんです。夫婦漫才のように、どちらかがボケたら、どちらかがツッコむ。それがいちゃいちゃしているように見えるような、幸せな姿が視聴者の方々に伝わると嬉しいです。鈴愛は変わりませんね。真っ直ぐで、自分が思ったことをすぐに行動に移す。それが周りからしたら迷惑なこともあるんですけど、許せるし、可愛いし、見守ってやりたいし、応援してやりたい。そんなヒロインです。

●役者としての幅が広がった『半分、青い。』

ーー本作を経て、役者として得たものは?

矢本:学生時代のブッチャーは、1人でちんぷんかんぷんなことばかり言っていて、みんなにスルーされることも多かった。いったいこの人は誰のどのセリフを聞いて、どんな気持ちでこんなことを言うんだろうと思ってしまうシーンが多かったんです。普通はひとつ前の相手のセリフを受けて発言するものですが、彼の場合はおかしなタイミングでその瞬間に関係のないことを言ったりします。そこに対応していくのは難しかったですし、考えることで役者としての視野が広がったかなと思います。そのカギを台本の中から見つけることが、台本に対して視野を広げるということなのかなと思います。

ーーそこには脚本の北川さんの意図もあると。

矢本:そうですね。ブッチャーには謎のことを言わせて、ちょっとおバカな感じを演じて欲しいのだという意図は分かるんですけど、ただバカなことを言うだけじゃダメなんです。彼の言葉に“ホンモノさ”というか、意味を持たせないといけない。その正解を知っているのは北川先生だけなので、絶対に答えは脚本に隠されているはずなんです。

ーー次に朝ドラに出る時はどんな役を演じたいですか?

矢本:10年後か20年後かに、ヒロインの父親役をやりたいです。奈緒ちゃんがインタビューで「母親役をやりたい」と言っていたのを聞いて、「あ、俺も父親役やりたいな」と思いました。いいパパとか演じたら、人気出そう(笑)。迷惑かけるお父さん、空気読めないお父さんをぜひ楽しく演じたいです。

(取材・文=折田侑駿)

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