Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ハンブレッダーズ×reGretGirl、盟友同士が爆音で示した“対バン”の意義 『この先の人生で忘れられないツアー』Zepp Tokyoレポート

ぴあ

reGretGirl(ハンブレッダーズ×reGretGirl『この先の人生で忘れられないツアー』6月28日Zepp Tokyo公演より)

続きを読む

コロナ禍に於いてライブバンドがライブを自粛せざるを得ない状況はまるで手足を縛られた状態だ。だからこそまだ予断は許さない状況の中でも、オーディエンスを対面して爆音を鳴らせる瞬間にバンドマンは全身全霊を開放する。自分の存在意義を賭けて。

ハンブレッダーズとreGretGirlは共に大阪を地元とし、イベントや対バンで切磋琢磨し、ハンブレッダーズが2020年2月、1stアルバム『ユースレスマシン』で、reGretGirlは2021年1月、1stアルバム『カーテンコール』でメジャーデビューした盟友関係にある。

この2バンドが互いのこれまでの中止になってしまったツアー名称をミックスしたタイトルを冠したスプリットツアー『この先の人生で忘れられないツアー』を東名阪で開催。今回は中日となった6月28日のZepp Tokyo公演をレポートする。

先攻はreGretGirl。ちなみに出演順は担当楽器メンバーがゲームで対決。この日は勘で30秒に近いカウントを当てた方に権利が付与されたそうで、ハンブレッダーズ木島(Dr)が29.8秒で勝利。reGretGirlの前田将司(Dr)は33秒という僅差だったと平部雅洋(Vo/Gt)がMCで発表。こんなところにもスプリットツアーらしい楽しさが伺える。

平部雅洋(reGretGirl)

サポートでギターとキーボードを加えた編成のreGretGirlは冒頭から人気曲「ピアス」でギア全開。彼らの失恋ソングの中でも、二人の思い出を痛みで実感しようとする主人公の切なさが染みる。だが、ある種、それも物語としてスケールの大きなアンサンブルで聴かせるようになった印象だ。ドライブする平部のリフが牽引する「AJAX」への繋ぎもスムーズだ。

曲調の幅を広げたことを印象付けるreGretGirl流のポップなダンスチューン「グッドバイ」、〈味がしない訳がないでしょう〉という歌い出しに掴まれる「pudding」のサビは平部が渾身のロングトーンを放つ。ペース配分なんてお構いなしだ。

よりにもよってこんな時に口唇ヘルペスができてしまったと嘆く平部だが、Zepp Tokyoのスケール感でもフロアと会話するのが彼らしいと言えば彼らしい。前述の出番対決のMCで沸かせた後は「夏になってしまうけど、春の歌をやろうと思います。最低で最高の春の歌」と、「スプリング」を紹介。先に大人になっていく元カノと変わらない自分をビビッドに描写することで、しっかり聴き手の心にトゲを刺す。失恋ソングのあるあるだけじゃない成長痛のようなリアリティは彼らならではの強みだ。

十九川宗裕(reGretGirl)

そのニュアンスは続く「おわりではじまり」に接続され、演奏面でも十九川宗裕(Ba)のメロディアスなフレージングとピアノのアンサンブルなど新たな個性も見せる。シームレスに未練たらたらソングの真骨頂「デイドリーム」が淡々とした調子から、狂おしいほどに自分以外の誰かと過ごす元カノの妄想が頭から離れない後半へ。身もふたもないほどの苦しさをポップソングに昇華すること、それはやはり彼らの独自性だ。

改めてハンブレッダーズとの関係をお互いにZepp Tokyoの10分の1ほどのキャパシティのライブハウスで活動していた頃の記憶や、同じような場所にいたバンドの中でも近い歩幅で活動していた数少ない盟友として励みになっていることを平部が吐露。ツアーであることの意義を示唆して、「一つだけ幸せな曲があるので」と、「カーテンコール」を5人体制ならではのシンセストリングスも交えたスケール感で演奏。

前田将司(reGretGirl)

一転、このバンドの中で最も聴かれているであろう「ホワイトアウト」。切なさも後悔も走る速さで振り切るような感覚はもはやこのバンドがこれからも持ち続けるであろう普遍性に思えた。歌の中で諦めの悪い男であり続ける平部も、それをポップミュージックとして強度を増していくバンドそのものもこの世代では無二。ラストの「soak」まで走りきってステージを後にした。

後攻・ハンブレッダーズが響かせた不変的なロックンロール

転換時のサウンドチェックですでにギターやベースの音の大きさにニヤつきながら後攻のハンブレッダーズを待つ。暗転し、ブルーグリーンのライトに照らされるステージに現れたサポートギター・うきを含む4人が楽器を鳴らし、重なったところからいきなり名曲「銀河高速」でスタート。

ハンブレッダーズ

でらし(Ba)のハイテンションなアクションも含め、冒頭からいい意味で相手を倒しに来ている感じで、これぞスプリットの醍醐味だ。バンド賛歌であり、音楽賛歌であり、自分たちが今ここにいる理由を黙々と、しかしよく通るボーカルでムツムロ アキラ(Vo/Gt)が大きなフロアの奥の奥まで届ける。

続く「ユースレスマシン」は彼のシニカルかつ反骨心を軽妙に昇華。そもそもこのスプリットツアーのタイトルの前半分は彼らのアルバム『ユースレスマシン』のリード曲の歌詞「この先の人生に必要がないもの」およびそれを冠したワンマンツアーから取られている。

人生にジュブナイルアニメーションもSF小説もロックンロールバンドもなくても死にはしない。でもこの一瞬を変える魔法は自分が知っていればいいのだ。ここにいる両バンドのファンを全肯定されるようで、こみ上げるものがある。

ムツムロ アキラ(ハンブレッダーズ)

新曲「フェイバリットソング」では、でらしとうきがドラムセット台に並んで座って演奏したり、シンプルなステージだからこそ、メンバーのキャラクターが際立つ。

「7月21日にシングル出ます!」と短くムツムロが発して、その新曲「ワールドイズマイン」へ突入。木島の4分キックが心拍を上げる。かと言ってダンスロックかと言えばそれだけじゃない、2Aにはミクスチャーテイストのアンサンブルが入ったり、ハードなギターソロもあるという、この時代にロックンロールがこんなにみずみずしく響くのか?と驚嘆するナンバーだったのだ。ロカビリーっぽさのある「ユアペース」に繋いだのも効果的。

さらにムツムロの堂々としたボーカリストとしての成長が迫る「ファイナルボーイフレンド」。コミカルかつ妄想が過ぎる愛の独白だが、ここでも彼はロックンロールに対してと同様に世間の価値観はどうでも良いのだ。自分の心が動くことにしか価値を感じない。そう表明することの清々しさなのだと思う。

木島(ハンブレッダーズ)

MCでは一週間前に上京したことを報告したムツムロ。インスタグラムで友人にいい洗濯機を教えて欲しいとコメントしたところ、平部と十九川から同じドラム式洗濯機を勧められた一件でフロアに笑いが起こっていた。平部がハンブレッダーズに対して「励みになる存在」と話したのとは対照的なムツムロらしい友情の示し方でもある。

ずっとトップスピードで走り続けるライブも終盤、メジャー1stシングルの表題曲「COLORS」で、恋愛だけじゃなくこれからの人生で様々な色=価値観が混ざっていくことを前向きに歌い、クライマックスは彼らがライブバンドであることを率直な言葉とマインドで伝える「弱者の為の騒音を」、そして、コロナ禍の中でいち早くライブハウスへの感謝を伝える意味も込めて、大阪の様々なライブハウスで撮影したミュージックビデオも話題になった「ライブハウスで会おうぜ」を演奏。

そう。ここなら感極まって泣いてもきっとバレないし、隣の誰かも同じかもしれない。ここでしか味わえない興奮と安堵感が相まって押し寄せる最強のライブハウス・アンセムをやり切って、4人はステージを後にした。

でらし(ハンブレッダーズ)

長い拍手がアンコールのクラップに変わり、早々に再登場したハンブレッダーズ。そう。アンコールの権利は後攻にあり、なのだ。

音楽で世界の色が変わる、それが錯覚でもいい。〈ヘッドフォンの中は宇宙〜自分の歌だとハッキリわかったんだ〉という真実のパンチラインを持つ「DAY DREAM BEAT」を選んだ彼ら。声は発せないけれど、マスクの中か心の中できっと歌っていたはず。この場所は自分たちのものーーその気持ちを確認できた痛快な“ザ・対バン”がそこにあった。

取材・文 / 石角友香

<ツアー情報>
ハンブレッダーズ『秋のグーパンまつり2021』

ハンブレッダーズ『秋のグーパンまつり2021』告知画像

10月13日(水) 京都府 京都KYOTO MUSE
OPEN 18:00 / START 18:30

10月16日(土) 新潟県 新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
OPEN 17:30 / START 18:00

10月17日(日) 宮城県 仙台darwin
OPEN 17:30 / START 18:00

10月23日(土) 群馬県 高崎club FLEEZ
OPEN 17:30 / START 18:00

10月24日(日) 神奈川県 横浜1000CLUB
OPEN 17:15 / START 18:00

11月7日(日) 北海道 札幌cube garden
OPEN 17:30 / START 18:00

11月13日(土) 高知県 高知X-pt.
OPEN 17:30 / START 18:00

11月14日(日) 岡山県 岡山YEBISU YA PRO
OPEN 17:30 / START 18:00

11月19日(金) 愛知県 名古屋BOTTOM LINE
OPEN 17:45 / START 18:30

11月21日(日)福岡県 福岡BEAT STATION
OPEN 17:30 / START 18:00

【チケット料金】
スタンディング:4,000円(ドリンク代別)
一般発売日:9月12日(日)

関連リンク

ハンブレッダーズ オフィシャルサイト:
http://humbreaders.com/

reGretGirl オフィシャルサイト:
https://www.regretgirl.com/

アプリで読む