Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

古代オリエントからルネ・ラリック、濱田庄司まで240点を紹介 パナソニック汐留美術館『香りの器 高砂コレクション展』

ぴあ

21/1/14(木) 12:00

《被せグラス金彩草花文香水瓶》19世紀 ボヘミア

古代オリエントの香油壺や、アール・デコ期の香水瓶など、「香り」にまつわる器を集めた展覧会『香りの器 高砂コレクション展』が1月9日より、パナソニック汐留美術館で開幕した。3月21日(日)まで開催されている。

この展覧会は、2020年で創業100年を迎えた高砂香料工業が収集した香りにまつわる資料、美術品から、「香りの器」に焦点を絞り、約240点を展示するもの。高砂香料工業は日本画家・甲斐庄楠音の兄、甲斐庄楠音が創業した日本最大の香料メーカー。現在まで50年以上にわたり香りや香料の文化を伝えるものを広く収集していることでも知られている。

本展は「第1章 異国の香り」と「第2章 日本の香り」の2部構成。第1章では、古代メソポタミアやエジプトから始まった香りの歴史を紐解きつつ、陶器やガラスの器の変遷を見ていく。

展示風景より。古代オリエントやイスラーム世界の香りにまつわる器が並ぶ

かつて、香油や乳香、没薬など「香り」を持つ素材は、力を持つものとされ、宗教的な儀式において使われていた。そして時代が進むにつれ、王や貴族などが用いる贅沢品として用いられるようになる。それゆえに「香り」を保存する器も、価値のある豪華なものが用いられていた。

左《両耳付筒型香油瓶》 前4-3世紀 東地中海沿岸域 中《両手付香油壺》前4-3世紀 東地中海沿岸域 右《コホル瓶と青銅製ビン》前5-4世紀 東地中海沿岸域

ガラスは紀元前2300年頃にメソポタミアで発明されたと考えられ、人類は前1600年頃に容器を形作れるようになった。粘土の芯にガラス生地を巻きつける方法(コアガラス)で作られた容器に王侯貴族たちは、この器のなかに香油などを入れていたとされている。

時代は進み、17世紀頃になると現在の形での「香水」が作られるようになり、18世紀には庶民にまで普及する。その過程で、さまざまな形の香水瓶も生まれていったた。ドイツではマイセンの職人たちが、ボヘミア(チェコ)では、ガラス職人たちが、さまざまな形の香水瓶を制作している。

マイセン《色絵勿忘草文貼付香水瓶(一対)》19世紀
ボヘミアン・ガラスの香水瓶がずらりと並ぶ

そのような状況下で、香水瓶の世界、そしてガラス工芸、デザインの世界を大きく変えたのがルネ・ラリックだ。19 世紀末、アール・ヌーヴォー全盛期に宝飾デザイナーとして活躍していたラリックは、1912年、現在も人気ブランドとして知られるコティ社から香水瓶のラベルデザインを依頼されたことをきっかけに、香水瓶そのもののデザインにも着手するようになる。

ルネ・ラリック 香水瓶《レフルール(コティ社)》

《レフルール(コティ社)》は、ラリックが最初にラベルデザインを依頼された香水。彼は紙ラベルではなく、ガラス製プレートを発案し、バカラ聖の瓶に貼って販売したところ大好評となった。本作は、その後に制作されたラリック社製のもの。

ルネ・ラリック 香水瓶《蝶々》 1911年
ルネ・ラリック 香水瓶《ユーカリ》1919年
ルネ・ラリック 香水瓶《光に向かって(ウォルト社)》

目に見えない「香り」のイメージを的確にボトルのデザインに落とし込み、なおかつ大量生産も可能にしたラリック。彼がガラスの香水瓶を手掛けたことで、その後の香水瓶のデザインは大きく変わっていったのだ。

続く「第2章 日本の香り」では、日本独自の発展を遂げた香りの歴史をたどっていく。6世紀の仏教伝来とともに始まった日本の香りの歴史では、「香道」という独自の芸術も生まれるようになった。

展示風景より

この章では、香道に関する道具類のほか、濱田庄司、河井寛次郎、板谷波山などの名工が手掛けた香炉や、現在放送中の大河ドラマ『麒麟がくる』にも登場した香木「蘭奢待」などを展示。独自の発展を遂げた日本の香り文化をしっかりとたどることができる。

展示される香油壺や香水瓶、香炉などはどれも細かい細工がほどこされた繊細なもの。可能であれば単眼鏡など細部を観察できる道具を持参し、細部までしっかりと鑑賞するのがおすすめだ。

【開催情報】
『香りの器 高砂コレクション展』
1月9日(土)~3月21日(日)、パナソニック汐留美術館にて開催
https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/21/210109/

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む