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作詞家 zoppに聞く、理想的な“雨ソング”の特徴 「情景と主人公の心情をリンクさせる」

リアルサウンド

19/7/12(金) 7:00

 修二と彰「青春アミーゴ」や、山下智久「抱いてセニョリータ」など、数々のヒット曲を手掛ける作詞家・zopp。彼は作詞家や小説家として活躍しながら、自ら『作詞クラブ』を主宰し、未来のヒットメイカーを育成している。これまでの本連載では、比喩表現、英詞と日本詞、歌詞の物語性、ワードアドバイザーとしての役割などについて、同氏の作品や著名アーティストの代表曲をピックアップし、存分に語ってもらってきた。

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 第22回目となる今回は、zopp氏が出演した6月16日放送『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)のテーマだった“雨ソング”についてインタビュー。雨を用いた歌詞のポイントや、印象に残っている雨ソングの特徴などじっくりと聞いた。(編集部)

●『関ジャム 完全燃SHOW』雨ソングベスト10
1位:徳永英明「レイニーブルー」(1986年)
2位:DREAMS COME TRUE「晴れたらいいね」(1992年)
3位:ASKA「はじまりはいつも雨」(1991年)
4位:ゆず「雨のち晴レルヤ」(2013年)
5位:サザンオールスターズ「TSUNAMI」(2000年)
6位:ジーン・ケリー「雨に唄えば(Singin’ In The Rain)」(1952年)
7位:森高千里「雨」(1990年)
8位:八神純子「みずいろの雨」(1978年)
9位:小泉今日子「優しい雨」(1993年)
10位:RCサクセション「雨あがりの夜空に」(1980年)

ーー『関ジャム 完全燃SHOW』で発表された雨ソングランキングを見ていると、雨を用いた楽曲にはラブソングが多いですね。雨そのものが好きな相手を連想させるのでしょうか。

zopp:雨が降ると相手が近い存在になるんです。例えば、傘に雨が当たるとうるさくて声が聞こえづらくなりますよね。そうすると会話が伝わりづらくなります。伝えたくてもうまく伝えられないもどかしさを演出してくれるんです。雨は音を鳴らすものなので、歌詞に用いる時は音とちゃんとリンクさせることが大事だと思います。あとは、カップルが1つの傘に入ることで自然と距離が近くなりますよね。好きな人が近い距離にいるというドキドキ感は、より印象に残りやすいですよね。

ーーテゴマスの「アイアイ傘」も、相合傘をしている主人公のもどかしい心情が描かれています。

zopp:僕は歌詞を作る上で3つの要素を大事にしています。それは「共感」「教訓」「憧れ」です。「共感」に重点をおいた歌詞であれば多くの人が体験したことがある内容にし、「教訓」であれば恋愛が上手くいく方法を物語を通して伝え、「憧れ」であれば実際には体験できないシチュエーションを歌詞にして聴き手に疑似体験してもらえるようにしています。雨を降らせることによって、そうした演出がしやすくなるように思います。特にもどかしさや別れを表現する際には「傘をささずに雨に濡れたまま帰った」とすることで“どうでもよくなった”心情を象徴的に描くことができます。直接的に言葉にしなくても情景で主人公の感情を代弁することができるんです。登場人物の感情を情景を通して表現している歌詞に美しさを感じます。

ーー〈通りすぎる雨がせかしてる〉というフレーズも、主人公の心情が情景に表れているかのようですよね。

zopp:そうなんです。雨が止みそうになることで、同時に何かの終わりを表すことができます。こうした擬人法は作詞のひとつのテクニックですね。

ーー雨ソングで印象に残っている歌詞はありますか?

zopp:KinKi Kidsの「硝子の少年」の冒頭〈雨が踊るバス・ストップ〉です。これは、おそらく水たまりに雨が跳ねている様子を映し出しているのでしょう。すごく良い歌詞ですよね。またこの曲のポイントは、最後にちゃんと晴れている情景を描いていることです。最初に雨が降って、最後に〈雲が切れてぼくを/照らし出す〉という歌詞に繋がる。最後のサビで主人公に救いを与えているんです。

ーー伏線がしっかり回収されているんですね。

zopp:雨を用いた楽曲のなかでも、この曲の表現方法は理想的です。雨を止ませることでコントラストがはっきりしますよね。「雨を降らせたからには止ませる」というのはわかりやすいエンターテインメントだと思うんです。僕が“雨”を歌詞に取り入れる際には、雨を通して誰かが泣いている様子を表現したり、雨が止んだことで主人公をポジティブに見せたり……情景と主人公の心情をリンクさせるようにしています。

ーーそのほかにも印象に残っている雨ソングはありますか?

zopp:竹内まりやさんが作詞した嵐の「復活LOVE」ですね。この曲は〈横なぐりの雨〉から始まり〈この部屋を飛び出した 君は〉と続く。「横なぐりの雨」というワードは台風のような荒れ模様を想像すると思うんです。そんななかで部屋を飛び出すなんて、“君”はよほど切羽詰まってますよね。たったワンフレーズで、登場人物たちの様子を鮮明に描ききっていて素晴らしいです。

ーーなるほど。わずかなワードで登場人物の心情まで伝わってくるのは興味深いですね。それに冒頭に〈横なぐりの雨〉があることで、楽曲全体に雨風の強い情景が印象づけられますね。

zopp:そうなんですよね。Mr.Childrenの「雨のち晴れ」も興味深い雨の使い方をしています。この曲では、主人公の心情を表す比喩表現として“雨”や“晴れ”を用いています。タイトルは「雨のち晴れ」ですが、歌詞の中では風景がほとんど描かれていないのがおもしろい。あと福山雅治さんの「Squall」は、「スコール」をひと夏の恋に例えていていい歌詞ですよね。スコールって短い間にたくさん雨が降るじゃないですか。ドラマティックな恋の表現として比喩しています。また、この曲も“雨”というワードがでるのは、冒頭の〈さっきまでの通り雨〉のみですが、聴き手に雨が上がったばかりの情景を想像させますよね。夏や梅雨、秋冬など季節によっても雨のイメージは変わると思います。

ーー雨には様々な表現方法があるんですね。他に天候をモチーフにした歌詞はどんなものがあるのでしょう。

zopp:雨以上にオールマイティなのが風だと思います。前に進むための追い風、抵抗する向かい風、あとは言い切りたくない時に「答えは風が知っている」という使い方をしたり。風は雨と違って明確な終わりがなくて、曖昧なことのたとえとしても使われることが多いかもしれません。この他に太陽や雪はポジティブなイメージ。雲は地上と空を区切る境界線で、もうすぐ雨が降るなど何かのヒントになるアイテムとして使われるように思います。また、流れる雲などは自由の象徴という印象ですね。

ーーこれまで、雨を用いた楽曲はたくさん発表されていますが、今後はどのような雨ソングが生まれると思いますか?

zopp:数年前から「ゲリラ豪雨」という新しい言葉がでてきています。先ほども紹介した「Squall」の〈通り雨〉や、「復活LOVE」の〈横なぐりの雨〉など、雨にも様々な種類があるんですよね。だから色分けがしやすくて何通りものパターンで物語を描くことができます。そういう意味では、まだまだたくさんの可能性を含んだコンテンツだと感じますね。

(取材=北村奈都樹・村上夏菜/構成=北村奈都樹・平沢花彩)

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