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千葉雄大と伊藤沙莉は最高のコンビだった 『いいね!光源氏くん』が描いた自分自身と向き合うこと

リアルサウンド

20/5/24(日) 13:20

 よるドラ『いいね!光源氏くん』(NHK総合)が、5月23日に最終回を迎えた。本作は、『源氏物語』の光源氏(千葉雄大)が現代に生きるこじらせOL・沙織(伊藤沙莉)の前に現れるという、奇想天外なラブコメディ。

参考:千葉雄大と伊藤沙莉の魅力が最大限に 最終回を前に『いいね!光源氏くん』制作統括に聞く

 第七絵巻「ばっくとぅ京都?」で「『源氏物語』の中であなたが愛した女の人は誰一人幸せになってないから!」と光に言い放った沙織。最終絵巻「光くんばいばい?!」では、沙織との気まずい空気を打開しようと光が中将(桐山漣)を誘って居酒屋で酒をともにする。女心とは大概が本音の裏返しであると教えられた光は、「たった一人だけでも幸せにしてやれればいい」と沙織への思いを固めた。

 互いに大事な話があるという光と沙織。光の願いはこれからも現代にいたい。しかし、フィリップ(厚切りジェイソン)から源氏物語の世界に戻る方法を知った沙織は、光を元の世界に戻すことを決心していた。「私がいるのは今ここなのだから」「私はここでそなたと暮らしたい」という光に対して、沙織の返答は「あなたとは暮らせません」「あなたのことが嫌いだから」という光の幸せを思っての“裏腹”な決断であった。涙ながらに説得する光に沙織は「近いうちに出てってくれないかな」と突き返す。離れていく手と手。行き違った2人の思いが切ない。

 沙織は最後に光をデートに誘う。それは「男女が離れ離れになる前にする儀式」であり、次元ジャンプで光をもとの世界に帰すための口実だった。抹茶ラテフロートを飲み、もんじゃを仲良く食べる2人。沙織は光が大切にしてきた場所、つまり平安の都を強くイメージさせ、タイムワープの準備を始める。道路に飛び出した沙織を再び守ろうとした光は元の世界に帰って行った。

 価値観の異なる男女が同居生活の中で思いを合わせていく。本作はラブコメの王道とも言える型をなぞっていたが、“いま”の物語になったのは紛れもなく沙織のキャラクター像だろう。妹・詩織(入山杏奈)の言葉にあったように、多くの人が、自分のために、何かしらの嘘やズルをして、“正しいこと”を選択できないことが多い。詩織は“正しいこと”を選択できる姉を立派だという。しかし、沙織は「そんなつもりはない。私のために、私が決めた。私は一人の人と100%で向き合いたいから相手にも100%でいてほしい」と返す。

 沙織は常に“正しいこと”を選択する人間だったが、その中で我慢をしてきたことも人生の中で無数にあったのだ。それでも、そんな自分を卑下することはせず、受け入れた上で愛した人のために、自分のために最良の選択をすることができる。沙織は、男性に導かれ幸せを手にする、何かを犠牲にして愛を選ぶ、そういった旧時代のヒロイン像とは異なる、自分自身で新たな世界を開拓することができる、本当に格好いいヒロインだった。そんな沙織を体現できたのも、伊藤沙莉が演じたからこそだろう。

 光が去り、そのまま物語が終わったとしても納得できるものだったが、それはそれで味気ない。そんな視聴者の思いを汲んでくれたかのように、最後には花火をバックに光と沙織が再会。光との再会に涙する沙織は美しかった。新型コロナウイルス拡大の影響で多くの新作ドラマの放送が休止になる中、本作は8週間、心の癒やしを届けてくれた。千葉雄大と伊藤沙莉のこれ以上ない好演に改めて拍手を送りたい。

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