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有村架純、のん、小松菜奈の相手役に続々抜擢 林遣都が求められ続ける理由

リアルサウンド

20/10/4(日) 8:00

 林遣都が求められている。『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)で改めてブレイクした形の林だが、その演技力はかねてより折り紙付き。決してうるさく自分をアピールするのではなく、繊細に作品を盛り立てる実力を持って、自分の色を残す。この先は、有村架純、のん、小松菜奈と、ヒロインの相手役としての需要が続く。その魅力とは?

 まずは10月27日から放送のドラマ『姉ちゃんの恋人』(カンテレ・フジテレビ系)。連続ドラマ『ひよっこ』の脚本家、岡田惠和と主演の有村架純が6度目のタッグを組むことで早くから話題を集めるオリジナル作品だ。両親を事故で亡くし、一家の大黒柱として、弟3人のために懸命に生きてきた有村演じる“肝っ玉姉ちゃん”桃子の奮闘を描くラブ&ホームコメディで、林は桃子が恋に落ちる青年・吉岡真人を演じる。

 演出の中心となる三宅喜重は、草なぎ剛主演で支持を集めた“僕シリーズ3部作”や、阿部寛主演の『結婚できない男』『まだ結婚できない男』、松坂桃李と山本美月共演の『パーフェクトワールド』(以上、カンテレ・フジテレビ系)などに携わってきており、人生の機微をすくう温かな作品が期待できる。また、吉岡は岡田が林に当て書きしたキャラクター。実直でいつも微笑みを絶やさず真面目に仕事に取り組んでいるが、実は心に傷を抱えている役どころで、どこか影のある役柄もよく似合う林にぴったりだ。前向きな桃子と、過去を抱えた吉岡。周囲と共鳴しながら、岡田の紡ぐ物語がふたりをどう成長させ、近づけていくのか。

 12月18日公開予定の映画『私をくいとめて』では、のんと共演。『蹴りたい背中』の綿矢りさの同名原作を、『勝手にふるえてろ』『美人が婚活してみたら』『甘いお酒でうがい』と、女性を描くことに長けた大九明子監督が料理してみせる。主役ののんが扮するのは、“おひとりさま”生活を満喫中の31歳の黒川みつ子。脳内に「相談役A」がいるみつ子は、迷ったときにはいつでももうひとりの自分である「A」に相談してきたが、ある時、年下の営業マン多田くんに恋をしたことから、生活が変わりだす。林はみつ子に変化を与える多田くんを演じる。

 大九監督は、多くの女性たちの中に共存しているファンタジーの世界を、リアルな日常に溶け込ませるのがとても上手く、本作でも「相談役A」と対話するみつ子の姿を、決して突飛な女性ではなく、どこにでもいる働く女性として映し出してくれるはず。それを、コメディエンヌの才能は証明済みののんが、かわいいだけではない、経験を重ねてプラスされた豊かさを持って、実年齢より上となる31歳のみつ子で見せてくれるに違いない。そして林は爽やかさと同時に年下男子特有の小憎らしさもきっちりと出してくれるのではないか。

 さらに2021年公開予定の『恋する寄生虫』では小松菜奈とW主演を務める。三秋縋による長編小説が原作で、極度の潔癖症のために人間関係を築けずにきた青年と、視線恐怖症により不登校にある少女のラブストーリーを描く。監督はコマーシャルフィルム、ミュージックビデオなどの映像作家としても活躍する柿本ケンサクが、脚本は、林と『ちーちゃんは悠久の向こう』でも組んだ山室有紀子が務める。『姉ちゃんの恋人』『私をくいとめて』とはまた違ったベクトルでの林が楽しめそうだ。

 2007年に映画『バッテリー』の主演でデビューした林は、同作でいくつもの新人賞を受賞し、早くからその存在を印象付け、『ちーちゃんは悠久の向こう』『DIVE!!』『ラブファイト』『風が強く吹いている』と立て続けに主演映画に出演していった。成長期ならではの強さと弱さに揺れているようなこのころの作品も秀作ぞろいだ。そして二十歳を超えてからはその実力により幅を持たせていく。2012年には『荒川 アンダー ザ ブリッジ』『ガール』『闇金ウシジマくん』『莫逆家族-バクギャクファミーリア-』『悪の教典』が公開され、その後は『ST〜警視庁科学特捜班〜』『玉川区役所 OF THE DEAD』など、テレビドラマでも印象を残していったが、やはり改めてのブレイクは『おっさんずラブ』(2018年/テレビ朝日系)のヒットである。

 主演の田中圭の憎めない主人公ぶりもさることながら、林が見せた牧凌太の清さがなければ、この美しい物語は成立しえなかった。その後も安定した演技力を見せた連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合)や、追い詰められ、ギリギリの我慢も超えてしまった青年の苦しみを爆発させ、多くの生徒役のなかでも群を抜いた存在感を示したスペシャルドラマ『教場』(フジテレビ系)など、その実力を発揮してきた。

 そして『世界は3で出来ている』(フジテレビ系)での素晴らしさ。コロナ禍だからこそ生まれた同作では、1卵生の三つ子を林がひとりで見事に演じ分け、たったひとりで物語に引き込み続けた。長男・泰斗の生真面目さ、中間子である次男・勇人のバランス力、そして三男坊・三雄の愛らしさ。表情も姿勢も、それぞれの特徴がありつつも、リアルから外れた過剰な芝居はない。そのうえで、それぞれがしっかりとその人として生きていた。「上手いな」などと考える間もなく、なんの違和感も抱かせずに、3兄弟のおしゃべりを見守りながら時間が過ぎていく。そして「ウィズコロナ」時代を通じて感じたリアルな痛みと、それでも続く明日への思いを抱かせてくれた。

 思うに林は、容姿もそうだが、とても澄んだ魅力を感じさせる俳優だ。12月には30歳を迎えることもあり、ここ数年、ぐっと落ち着きが増して、大人の男のオーラが滲んできたが、それでも瑞々しさを失わず、澄んでいる。そして『世界は3で出来ている』のように、ひとりで立てる揺るぎなさがあるからこそ、強いアピールをせずとも、その透明度でキャラクターの呼吸をしっかりと作品に染み渡らせる。明こうと暗かろうと、等身大の青年だろうがアウトローだろうが、その浸透力は変わらない。もちろんヒロインの横でも。待機作には瀬々敬久監督、佐藤健主演の『護られなかった者たちへ』、篠原哲雄監督による主演作『犬部!』も連ねる。林遣都はその変わらぬ澄んだ力で、ひとつひとつの役柄、作品を受け入れ受け止めながら、観る者を引き込み、求められ続ける。

※記事初出時、一部に記述の誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

■望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。

■放送情報
『姉ちゃんの恋人』
カンテレ・フジテレビ系にて、10月27日(火)スタート 毎週火曜21:00〜放送
出演:有村架純、林遣都、奈緒、高橋海人(King & Prince)、やついいちろう、日向亘、阿南敦子、那須雄登(美 少年/ジャニーズJr.)、スミマサノリ、井阪郁巳、南出凌嘉、西川瑞 、和久井映見、光石研、紺野まひる、小池栄子、藤木直人ほか
脚本:岡田惠和
音楽:眞鍋昭大
演出:三宅喜重(カンテレ)、本橋圭太、宝来忠昭
プロデュース:岡光寛子(カンテレ)、白石裕菜(ホリプロ)、平部隆明(ホリプロ)
制作:カンテレ、ホリプロ
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/anekoi/
公式Twitter:https://twitter.com/anekoi_tue21
公式Instagram: https://www.instagram.com/anekoi.tue21

■公開情報
『私をくいとめて』
12月18日(金)、全国ロードショー
出演:のん、林遣都、臼田あさ美、片桐はいり、若林拓也
監督・脚本:大九明子
原作:綿矢りさ『私をくいとめて』(朝日新聞出版)
製作幹事・配給:日活
制作プロダクション:RIKIプロジェクト
企画協力:猿と蛇
(c)2020『私をくいとめて』製作委員会
公式サイト:kuitomete.jp
公式Twiter:@kuitometemovie

『恋する寄生虫』
2021年全国ロードショー
主演:林遣都、小松菜奈
監督:柿本ケンサク
脚本:山室有紀子
原案:三秋縋『恋する寄生虫』(メディアワークス文庫/KADOKAWA刊)
配給:KADOKAWA
(c)2021「恋する寄生虫」製作委員会
公式サイト:koi-kiseichu.jp

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