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峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら

レッド・ツェッペリンと「映えない」時代

毎週連載

第129回

ずっとアイドルの話ばっかりしてたけど、何も僕はアイドルのレコードだけを買っているわけではなくて、洋楽も結構買い集めているんだ。ちょっと前にインスタグラムでアップしてたレッド・ツェッペリンも最近改めて買ったレコードだね。

イギリスに『MELODY MAKER』っていう音楽雑誌があるんだけど、10年くらい前にバンドのパートごとの人気投票を取ったんだって。そしたら、ボーカル部門の1位がジョン・レノンとかを抑えてロバート・プラント。ギター部門の1位がジミー・ペイジ。ベース部門の1位がジョン・ポール・ジョーンズ。ドラムもダントツでジョン・ボーナム。つまり全員レッド・ツェッペリンのメンバーだったの。

これさ、70年代とかの話じゃなくて、10年くらい前の話だよ。すごいことだよね。以降もすごいバンドはいっぱい出てきてるけど、イギリスではビートルズと肩を並べてレッド・ツェッペリンの支持があるっていう。

日本で1年間を過ごしていたとして、この間に「毎年必ず聴くロック由来の曲」って言ったら山下達郎さんの『クリスマス・イブ』くらいでしょ。でもさ、イギリスには「この季節になったら、必ずこの曲!」みたいなロック音楽がもしかしたら100曲、200曲とか軽くあるのかもしれない。パブのBGMでビートルズやレッド・ツェッペリンが流れれば、老いも若きも一緒にみんなで歌うみたいな環境なんじゃないかと思う。だとしたらすごい羨ましいね。

以前にもこのコラムで喋ったけど、2019年にロンドンにライブしに行ったとき、「イギリス人にはロックに対するプライドがある」って感じた。「俺たちが生み出した音楽。それがロックなんだ」っていう。だからこそ生活に根付いていて、皆がプライドを持って、敬意をはらってロックに親しみ、接しているように思ったな。

話がちょっと飛んじゃったけど、レッド・ツェッペリンも今改めて聴くとやっぱり面白いんだよね。レッド・ツェッペリンって「ハードロックの始祖」みたいに言われることが多いけど、それだけじゃなくて、あらゆるジャンルの音楽をやってるんだ。ロックンロール、フォーク、ガレージ、サイケデリック、レゲエなんかも全部やってる。これもすごいことだよ。余談だけど、セックス・ピストルズのジョン・ライドン(ジョニー・ロットン)も、後にPILを始めてからレッド・ツェッペリンの『カシミール』っていう曲をカバーしてる。ピストルズの頃は、それまでのロックに唾を吐くようなポーズをしていたけど、でも、やっぱりレッド・ツェッペリンはジョン・ライドンも完全否定はできなかったんだろうね(笑)。

そんなすごいレッド・ツェッペリンなんだけど、ただ唯一今の時代に合わないこともあって。どんなことかと言うと「ジャケットが映えない」。インスタにアルバムをアップしたけど、まぁ映えないよ、レッド・ツェッペリンのジャケットは(笑)。映えなさで言えば、ボブ・ディランも負けてないけど、まぁレッド・ツェッペリンは一番映えないね。

でもさ、今はなんでもかんでも映えさせようとしてるでしょ。「なんでみんな揃って映えさせなくちゃいけないのか」って思うけどさ(笑)、でも、こういう問題も前に言ったように時代は繰り返されるもんだからね。

たぶん今の小学5年生とか6年生くらいの子たちがだんだん大人になってくると、「映えとかダサくね?」「映えさせてる……うわ、ダッサ!」みたいになって、やがてまた「映えない」レッド・ツェッペリンの時代が来るような気がする。たぶんクリームとかトラフィックみたいなバンドも、その「映えなさ」でリバイバルすると思うよ。

次のトレンドは「映えなさ」だと思います

構成・文:松田義人(deco)

プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。


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