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さくらしめじ、ハッピーなムード届けたクリスマスライブ 初の中野サンプラザ公演を振り返る

リアルサウンド

18/12/28(金) 15:00

 シャンシャンシャンという鈴の音を合図に、スクリーンには雪の降る映像が映し出された。それに続き、『サンタと魔法のものがたり』と題された絵本のページが開かれ、世界中の人々にプレゼントを届けるサンタの物語がアニメーションで展開していく。そんなほっこりとするオープニングを経て、ステージ上に元気よく飛び出したのは田中雅功と高田彪我の2人ーー12月15日、彼らにとって初の舞台となる中野サンプラザにおいて、一足早いクリスマスを過ごすべく開催された『さくらしめじのHappy X’mash LIVE 2018 in 中野サンプラザ』はハッピーなムードで幕を開けた。

 巻き起こる大歓声の中、1曲目に届けられたのは新曲「123」。ギターをジャカジャカとかき鳴らし、歌声を高らかに響かせていく2人は本当に楽しそうだ。足を蹴り上げたり、大きくステップを踏んだりとアグレッシブな動きを見せる雅功。首にタンバリンをかけ、客席をしっかり見つめながら凛とした立ち姿でプレイする彪我。歌声のみならず、パフォーマンスにおいても個性の違いを感じさせながら、時にお互いに目をしっかりと合わせて1曲を共に紡いでいき、他にはないさくらしめじだけの世界をカラフルに描き出していく。

 「今日は最高の思い出を作りましょう!」と雅功が叫び、4人のダンサーを交えて披露されたのはアッパーな「スタートダッシュ」。曲中の“Ding Dong Ding”パートでは最高の一体感が生まれていく。続く「菌カツ!」でも、“き”“の”“こ”、“き”“ん”“かつ”を会場全員で叫び、曲が持つ楽しさを共有。オーディエンスをグイグイと巻き込んでいくライブスタイルがさくらしめじ流だ。

 憧れだったという中野サンプラザに立てた喜びを伝えたMCに続いては、爽やかなラブソング「ひだりむね」、大人っぽい表情を見せるAAAのカバー「恋音と雨空」、学生ならではの出来事を現役高校生としてリアルに届ける「せきがえのかみさま」を連続で。さくらしめじは多彩な魅力を持つデュオであるが、個人的には「恋音と雨空」の表現が強く印象に残った。シンガーとしての力量が如実に浮き彫りになるこういったテイストがオリジナル曲でも増えてくるとアーティストとしての面白みが俄然増す気がする。そんなことを思わせてくれるくらい、トーンを少し落とした2人のボーカルはかっこいい。

 そして、アーティストとしての表情を鮮烈に感じさせてくれたのが、2人のギターと歌だけで届けられた「きのうのゆめ」と「まよなかぴくにっく」だった。その演奏からは“フォークデュオ”というスタイルにこだわる彼らが抱いているであろうギターへの愛情をしっかり感じることができたし、シンプルなサウンドの上で絡み合う2人の声にも強い説得力が満ちていた。その愛らしいルックスと性格からアイドル的な人気を誇るさくらしめじではあるが、アーティストとしての存在感もまたシーンにしっかりアピールできるものだと思う。続いて披露された最新EPからの楽曲「My Sunshine」では、これまでにない斬新なサウンドとともに骨太なパフォーマンスを見せ、力強いメッセージを放っていく。その姿にもまたアーティストとしての強い矜持がにじんでいたように感じた。

 コレサワからの提供曲「届けそこねたラブソング」では楽しいクラップが巻き起こる。2人のギターだけで始まった後、力強いサウンドが融合していく「はじまるきせつ」では、カラフルな照明とともに、きのこりあん(ファンの総称)に向けられた素敵なメッセージを真摯に伝えていく。その後のMCでは冬の好きなところを“じめじめランキング”として発表。2人の微笑ましい回答に、会場はあたたかな笑い声に包まれた。MCで見せる無防備なほどのナチュラルな表情もまた彼らの大きな武器なのだと思う。

 「踊る準備はできてるかー!」という彪我の叫びをきっかけに後半戦へ突入。人気曲「てぃーけーじー」では、ギターを持たずにハンドマイクでステージ上を駆け回りながら歌う彪我の姿に観客たちのテンションもブチ上がる。全員で合わせた振り付けや、“T”“K”“G”のコール&レスポンスの楽しさたるや! 続いてプレイされたアッパーなダンスナンバー「ブン!ブン!BuuuN!」では、みんなでタオルを振り回して爽快な風を中野サンプラザに巻き起こす。雅功もギターを置いて、ハンドマイクで大暴れだ。聞けばこの曲、これまでにライブで1度披露されただけの未発表曲なんだとか。そんなことが信じられないほどに、ライブのキラーチューンとして機能していたことに雅功と彪我も驚いていた。上昇を続ける興奮はまだまだ続く。2人のアグレッシブなギタープレイからスタートした情熱的なロックナンバー「でぃすとーしょん」では、曲中で「一緒に遊ぼうぜ!」「もっと行けんだろ!」と雅功が客席を煽りまくる。この時、天井に設置されたミラーボールに向けて4筋のグリーンの照明がステージ上から照射されることで、クリスマスツリーのような四角錐を形作っていたのにも感動した。美しい光の粒が降り注ぐ中、さくらしめじのクリスマスパーティはまさにクライマックスの様相を呈していく。

 ポップチューン「あやまリズム」を楽しく駆け抜けた後のMCでは2人からのクリスマスプレゼントとして、来年1月からJFN PARKでレギュラーラジオがスタートすることが発表され、さらにこの日が初披露となる新曲も届けられた。「生活の中、生きていく中で本音はなかなか言い出せないもの。でも勇気を持って、一歩を踏み出して伝えてみよう……そんな曲です」という雅功の言葉を受けてプレイされた「先に言うね」は、せつなさを秘めた疾走系のナンバー。スクリーンに映し出された歌詞をじっくりと噛みしめながらも、サウンドに身をゆだねて楽し気に揺れる客席。その上空からはスノーマシンで雪が舞い始め、感動的な光景が広がっていく。一足早いホワイトクリスマスを演出し、まっさらな新曲を届けてくれるなんて、さくらしめじは心憎いことをさらりとやってのけるのだ。その後、ステージ上には『サンタと魔法のものがたり』」に登場するサンタが届けてくれた巨大なクリスマスツリーが現れ、「えそらごと」へ。曲中に放たれた金テープが客席でキラキラと輝く中、本編はエンディングを迎えた。

 きのこりあんによる合唱に導かれる形で始まったアンコール。客席からの愛を受け取り、それに応えるように2人のギターだけで「おもいでくれよん」を歌い始めた。が、途中で彪我が歌詞を飛ばしてしまうアクシデントが発生し、まさかのテイク2へ。「申し訳なーい!」と謝る彪我を笑顔で受け入れる、きのこりあんとのあたたかい絆が見えた瞬間だった。その後、2019年2月から始まる2マンライブと、5月3日に2度目の日比谷野外大音楽堂でのワンマンが決定したことが発表されると会場には割れんばかりの大歓声が巻き起こった。野音に関してはメンバー2人も事前に聞いていなかったようで、彪我は「うれしいぞ、こんにゃろー! 楽しみだー!」と素の表情で驚きと喜びを表現していた。そしてラストナンバーとなる「みちくさこうしんきょく」を全身全霊で届け、無数の笑顔で埋め尽くされた初の中野サンプラザ公演は幕を閉じた。

「今日味わった嬉しさ、楽しさをしょって? せおって?……背中にのっけて(笑)、この先も頑張っていきたいと思っています!」(彪我)

「もっとたくさんの人と楽しいを共有できるように2人はずっと走り続けますので、期待していただければと。これからもよろしくお願いします!」(雅功)

 ステージを去る前に、しっかりと未来に向けた決意を言葉にした2人。大躍進を遂げた2018年を経て、2019年の彼らはさらなるステップアップを見せてくれるはずだ。この日のライブから受け取った、そんな確信にも似た予感こそが彼らからきのこりあんに向けて贈られた最高のクリスマスプレゼントだったのだと思う。

(取材・文=もりひでゆき/写真=埼玉 泰史 / 大庭 元)

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