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現代の出来事とリンクする描写の数々 『JIN-仁-』が送る、医療最前線へのリスペクト

リアルサウンド

20/4/25(土) 6:00

 時代劇と医療ものを掛け合わせ、放送当時大ヒットとなった『JIN-仁-』シリーズの特別編『JIN-仁- レジェンド』(TBS系)が先週から放送され、初回から11年ぶりの仁先生(大沢たかお)の活躍に思わず胸が熱くなった。

 本作は、日曜劇場枠で2009年10月期に放送された『JIN-仁-』(パート1)、2011年4月期に放送された『JIN-仁-』完結編(パート2)の全22話を再編集した特別編である。

【写真】『キングダム』でインパクトを残した大沢たかお

 脳外科の医師である南方仁(大沢たかお)は、病院から逃げ出した患者を追いかけた際に階段から落ち、そのはずみで江戸時代にタイムスリップ。仁はこの境遇に戸惑いながらも次第に持ち前の医療の技術で江戸の街を救っていく。第1回目の放送では、江戸の町に広がるコロリという伝染病の処置にあたった。コロリとは、コレラのことである。ワクチンが存在しない江戸時代では確固たる治療法がなく、罹患するとコロリと死んでしまうことからこう呼ばれた。未来から来た仁は、それまでに培われてきた医療の知識からコロリにどう立ち向かえばいいのかを心得ていたため、滞在先の立花家の娘・咲(綾瀬はるか)にサポートしてもらいながら、町に広がるコロリの感染拡大を阻止することができた。

 第2回目の放送では、仁が患者の治療で立ち寄った遊郭の花魁・野風(中谷美紀)から重度の梅毒に侵された先輩を助けてほしいと頼まれる。かつては不治の病といわれていた梅毒だが、ペニシリンの普及により発症が劇的に減少した。この知識があった仁は、現代での恋人である友永未来(中谷美紀)が考えついた方法で、腐ったみかんの青カビからペニシリンを生成することに成功。夕霧(高岡早紀)を救おうと奔走するのであった。

 4月18日、19日に放送された内容は、まさにコロナ禍における日本の姿と重なるものがあり、SNSではその点に着目した意見が散見された。仁と咲が、当時まだ正体不明であった伝染病に立ち向かい、献身的に治療をする姿は現代の医療従事者の姿と重なり、多くの感謝の声が溢れていた。徹底した衛生管理、それでもなお前線にいる者は常に危険にさらされている。仁がコロリに感染するシーンでは、かなりのリスクの中で治療に当たっている様子がリアルに描かれ、その生々しさからは目を伏せたくなるほどであった。しかし、仁も咲も治療をすることを諦めない。医療に携わる人々の責任感によって我々の健康は守られていると痛感するシーンとなった。

 さらに、ペニシリン開発はワクチン開発を急ぐ現代人の姿と重なる。本作では、ペニシリン開発のためにヤマサ醤油が一役買うが、異業種の支援という点では現在もトヨタ自動車株式会社が人工呼吸器の増産の支援チームを結成したり、シャープ株式会社がマスクの国内生産を始めるなど、こちらもつい現代での出来事を重ねて観てしまう。

 仁にとっては、自身の医療行為は歴史を歪めてしまうことに繋がる。しかし医師として、人として、苦しむ人をそのまま見殺しにできないという気持ちもあり、相反する2つの感情に苦しむこととなる。こうしたジレンマはタイムリープものの作品に度々登場するが、本作ではこの仁の苦しみを疫病と戦う町民を通して描き、SF、医療、歴史とジャンルをまたいだ魅力で視聴者の関心を誘った。

 歴史は繰り返すという言葉通り、新しい感染症が出るたびに人間はそのウイルスや病原菌との闘いを繰り返してきた。しかし、一度溢れた感染症に人類が完全勝利をおさめることは今でも難しい。現在、日本だけでなく世界中で繰り広げられている病原体との闘いの中、私たちにできることは何なのかを再確認することが大切だろう。エンタメを通して勇気と元気をもらい、前線へのリスペクトを忘れずに全うしたい。次週は江戸を飛び越え、現代との繋がりの正体が明かされそうだ。仁の奮闘を見守りたい。

(Nana Numoto)

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