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ビッケブランカ『けもなれ』、宇多田ヒカル『花晴れ』……2018年、高まる“ドラマ挿入歌”の存在感

リアルサウンド

18/11/21(水) 21:30

 米津玄師の「Lemon」(『アンナチュラル』TBS系)を筆頭に、星野源「アイデア」(『半分、青い』NHK総合)、Uru「プロローグ」(『中学聖日記』TBS系)など、ドラマ主題歌から様々なヒット曲が続々登場した2018年。その一方で、ドラマのスパイスとして機能する“挿入歌”への注目度も増しており、時折、主題歌と同等、それ以上の存在感を放つ楽曲も増えている。本稿では、とりわけ挿入歌が印象的なドラマとアーティストを紹介したい。

参考:back number、『大恋愛』主題歌はドラマのサイドストーリーのよう? 楽曲の歌詞から読み解く

■宇多田ヒカル

 今年4月にオンエアされた『花より男子』シリーズの新章『花のち晴れ~花男 Next Season~』は、イメージソングを宇多田ヒカルが担当することで話題を呼んだ。前シーズン『花より男子2(リターンズ)』の「Flavor Of Life -Ballad Version-」に続き、同作では7thアルバム『初恋』から表題曲を提供。主人公である神楽木晴(平野紫耀/King & Prince)と江戸川音(杉咲花)、そして馳天馬(中川大志)の織りなす三角関係、初めて恋に触れた3人の瑞々しい感情を表現した。

 TBSの瀬戸口克陽プロデューサーは「切ない恋を見守っていただけないか」という思いで宇多田にオファーしたと公式コメントで発表している。シリアスなシーンで晴や音の心が揺らぐ瞬間、つかの間の静寂から絶妙なタイミングで流れる宇多田の歌声、〈うるさいほどに高鳴る胸が 勝手に走り出す足が今 確かに頬を伝う涙が 私に知らせる これが初恋と〉という核心に迫るフレーズが視聴者の胸を締め付け、切ない気持ちを掻き立ていたのが印象的だった。

■ビッケブランカ
 ドラマ『獣になれない私たち』(日本テレビ系)は、周囲への気遣いで身も心も擦り減らす深海晶(新垣結衣)と世渡り上手だが誰のことも信用しない捻くれ者の根元恒星が、本音をぶつけあい傷つきながらも、自分らしく生きようとする姿を描く物語。野木亜紀子の脚本による現実社会をリアルに描写したストーリー展開が話題となっている。

 米津玄師「Lemon」や前述した宇多田ヒカル「初恋」にも当てはまるように、「まっしろ」も流れるタイミングや登場人物の心情に寄り添う歌詞に胸を掴まれる視聴者が多いようだ。ただ、頭サビから入る「Lemon」や「初恋」とは異なり、「まっしろ」は冬を連想させる物寂しげなピアノのイントロからビッケブランカの優しい歌声が響くAメロ、〈冷たさが吹いてきた 悲しみがこみあげてきた〉というサビまでドラマチックな展開が物語をより引き立てていく。劇中のセリフと楽曲がシンクロすることで、“獣になれない”=“本音を言えない”晶や恒星をはじめ、拭いきれない苦々しい過去を抱えた登場人物たちの気持ちの機微を浮き彫りにしているようにも感じられるし、同時にやりきれない気持ちに寄り添う優しさも感じられる。

 ビッケブランカは、全体の世界観をイメージしながら「まっしろ」の制作にあたったという。ドラマとリンクする部分もある歌詞だが、全体を通して聴くと誰しもに当てはまる普遍的な情景が浮かんでくる。きっと誰しも消したい過去を抱えているだろうし、社会のしがらみに疲弊することもあるだろう。仕事や人間関係で散々な目にあった晶を癒す、唯一無二のクラフトビールのように、そんなやりきれない日々をふと忘れさせるような魅力がビッケブランカの歌にも感じられる。

■MONDO GROSSO

 吉岡里帆の初主演ドラマ『きみが心に棲みついた』の挿入歌「偽りのシンパシー」は、MONDO GROSSOがゲストボーカルにBiSHのアイナ・ジ・エンドを招いて制作された楽曲。ドラマ放送時までゲストボーカルが伏せられていたため、当初は吉岡里帆がマイクを握るのではという世間の予想もあったが、結果的に予想外のコラボで双方のファンが驚きの声をあげた。

 『きみが心に棲みついた』は、小川今日子(吉岡里帆)と吉崎幸次郎(桐谷健太)、星名漣(向井理)との三角関係の模様を描いたラブストーリー。真っ直ぐな吉崎と冷酷な一面を持つ星名、対極的な二人の間で揺れ動く今日子の愛憎劇は様々な波紋を呼んだ。クラブミュージック×恋愛ドラマは珍しい組み合わせと言えるが、妖しさを孕んだラブストーリーに「偽りのシンパシー」の妖艶な曲調がマッチしており、印象的なハスキーボイスからアイナ・ジ・エンドのことを知った視聴者も多かっただろう。

■サンボマスター

 映画『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』の9年後を舞台に、土屋太鳳主演で制作されたドラマ『チア☆ダン』。チアリーディングを題材にしたドラマなだけあって、劇中にはThe Buggles「Video Killed the Radio Star」、BTS (防弾少年団)「MIC Drop -Japanese ver.-」、THE BLUE HEARTS「人にやさしく」といった国内外の楽曲が複数使用された。その中でもとりわけ話題を集めたのがサンボマスターの「できっこないを やらなくちゃ」だ。

 福井県立福井商業高等学校のチアリーダー部・JETSが、2009年に全米チアダンス選手権大会で優勝した実話を元にした本作。JETSが創部初期から「できっこないを やらなくちゃ」で踊り続けていた縁もあり、サンボマスターが主題歌「輝きだして走ってく」を提供することが決まり、さらに「できっこないを やらなくちゃ」も挿入歌として複数回フィーチャーされた。

 サンボマスターだからこそ伝えられるストレートで心が震えるようなメッセージ。〈あきらめないで どんな時も 君なら出来るんだ どんな事も〉と、熱く背中を押してくれるような前向きなフレーズは、「打倒JETS」を掲げたチアダンス部・ROKETSが逆境を乗り越えながら全国制覇に向けて成長していく姿とシンクロするものがあり、同時に視聴者の胸を熱くし勇気付けた。

■m-flo

 『PRINCE OF LEGEND』は、映画、ドラマ、ゲーム、ライブ、イベントでの展開が告知されているメディアミックス作品。同作のエグゼクティブプロデューサーはEXILE HIROが務め、片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)、鈴木伸之(劇団EXILE)を筆頭に、EXILE TRIBEの面々が出演している。

 日本テレビ系で放送中のドラマでは、片寄が所属するTeam奏や鈴木が所属するTeam京極兄弟をはじめ、Team生徒会、Teamネクストといったチームが7つ(+成瀬果音)存在しており、それぞれ1980年代の洋楽ヒットナンバーをカバーしたチーム曲が挿入歌として使用されている。

 音楽のプロデュースは、同作の主題歌を務めるm-floが担当しており、80’s楽曲を現行の音楽シーンにフィットする形にアップデート。Team奏の「PSYCHIC MAGIC」(G.I.ORANGE)、Team京極兄弟の「Take On Me」(a-ha)、「Too Shy」(Kajagoogoo)など、いわゆるニューウェーブ/ニューロマンティック系のバンドが並んでおり、いずれもビジュアル面含めアイドル要素を持ったバンドとなるため、今作の“個性豊かな王子が大渋滞!”というコンセプトにも通ずるものがあるのではないだろうか。

 作品全体のテーマを表現する主題歌とは異なり、劇中で流れる挿入歌はドラマのワンシーンと化学反応を起こすことで、楽曲/映像単体では出せないインパクトを視聴者に与えることができる。今後は主題歌とあわせて、挿入歌にもより一層注目が集まっていきそうだ。(泉夏音)

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