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サンダンス映画祭:アメリカにおける黒人のリアルを語る『Emergency』

ぴあ

『Emergency』 (c)Sundance.org

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「これは友情についての物語。だが、この国で黒人の若い男性であるというのはどういうことなのかも語りたかった」

ケイリー・ウィリアムズ監督は、「Emergency」上映前のヴァーチャル“舞台挨拶”でそう述べた。

主人公クンリー(ドナルド・エリース・ワトキンス)は、卒業を目の前にした黒人の大学生。彼はまじめで成績も優秀だが、親友のショーン(RJ・サイラー)はのんびり屋でおふざけ好き。そんなふたりは、ある夜、思いもかけないことに巻き込まれる。パーティを梯子して大騒ぎする前、ちょっと家に立ち寄ると、リビングルームに見知らぬ白人の若い女性が倒れていたのだ。もうひとりのルームメイトでヒスパニック系のカルロス(セバスチャン・チャコン)は、部屋でゲームに夢中だったため、誰かが入ってきたのに気づかなかった。

クンリーはすぐに救急車を呼ぼうと提案するが、ショーンは断じて反対。黒人である自分たちを見たら、警察は自分たちに濡れ衣を着せるとわかっているからだ。とりあえず彼女を乗せた車で移動する3人。だが、同じ頃、その若い女性の姉は、パーティの途中で消えた妹を探していた。携帯のGPSを使って検索するうち、姉は、妹が黒人の男性たちと一緒にいることを知る。

クライマックスのクンリーとショーンのシーンは、究極に感情的でパワフル。見ていて涙が出そうになるが、それはふたりを演じた役者も同じだったようだ。上映後のヴァーチャル会見に出席したワトキンスは、ズームがつながる直前、必死で涙を拭っていたのだと明かした。それはサイラーも同じだったという。感動のシーンについて、ウィリアムズ監督は、「純粋さを失っていないクンリーを、ショーンがどんなことから守ろうとしていたのか、あのシーンでわかるのだ」と述べた。自分にも息子がいるというワトキンスは、「この脚本を読んでいて、自分がどう言われて育ったのか、また自分が息子にどんなことを教えているのかを思い出してしまった。世の中は変わらないといけない。だけど、自分の力では変えられない部分もある。そういうことを、深く考えさせられた」と語っている。

文=猿渡由紀

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