Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

小芝風花主演『モコミ』が説く親子関係の難しさ 母・千華子を縛る世間の目という“呪い”

リアルサウンド

21/2/28(日) 12:15

 「萌子美の10年間を奪ってしまってごめんなさい」ーー土曜ナイトドラマ『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』(テレビ朝日系)第5話は、ついに母親の千華子(富田靖子)が萌子美(小芝風花)に涙ながらに謝る母親の内省回となった。

 “人と接する仕事”というだけで花屋でのバイトを始めることにも否定的だった千華子の心配をよそに、萌子美は確実に“外の世界”に居場所を作りたくさんの人と繋がり始めていた。幼少期より萌子美と他の子との差異を見つけてはそれが少しでもバレないように萌子美を隠すようにし、娘本人にはすぐに直すように矯正しようとしてきた。

 10年間の引きこもり生活を経て、萌子美が初めて勇気を振り絞って言った“自分のやりたいこと”に対してもまず第一声が「失敗したらどうするの?」、萌子美のフラワーアレンジメントを気に入ってくれたお客様が現れたと聞いたときも「ビギナーズラックってやつかしら? 調子に乗っちゃダメよ」と、先回り先回りして未然に少しのリスクの芽でも取り除こうとする。萌子美が不要に傷ついたり、期待をした分それが叶わなかった時のショックがないように、恥をかかないようにと、観ているこちら側からすると過保護がさらに行きすぎてとてもとても窮屈な形で、ただ彼女なりの“親としての務め”を果たそうとする。とにかく千華子は常に切羽詰まっていて、何かに駆り立てられていて、確かに彼女と一緒にいる方も心休まらないだろうが、何より彼女自身が自分にたくさんの呪いをかけてしまっており、自分で自分を疲れさせてしまい、事を複雑にしてしまっている。

 ただ、ここまで極端でなくとも多かれ少なかれ「親子関係」というのはそんな側面があるものなのかもしれない。特に母親は“家族のために”“子どものために”と心を砕きながらあれこれ手を焼くが、それが尽く裏目に出る場合もあるだろう。「親子なら、家族なら分かり合えて当然」というあまりに乱暴な思い込みもあるが、子は親の分身ではないし“別の人間”である以上、確かに2人の間には他の人間関係同様に“相性”は存在する。“相性の悪い親子”という組み合わせもいて当然だし、それぞれの人間関係に適切な距離感があるように、親子にも家族間にも必要な距離感があるのだと思う。

 ただ、千華子は萌子美のことに限らず、自分が高校教師の夢を諦めたことも、自身の父親・須田観(橋爪功)の元教え子との不倫のせいだとし、「親が元教え子と不倫した高校教師なんて世間の恥さらしよ」と言い捨てる。さらに、税理士業務を自宅で始めた夫の伸寛(田辺誠一)が近所のコンビニに昼食を買いに行ったのをご近所さんに見られた際にも「私が家事をやってないみたいに思われるじゃない。ご近所の笑い者よ」と、あらゆる評価基準が「世間の目」「世間体」になってしまっているのだ。そりゃあこの性質の母親の下に、モノと話せる萌子美という組み合わせは互いにとって相当ハードモードだったことだろう。

 それでも正座して涙ながらに謝罪する千華子の姿はこれまでのような一方的な物言いでも、押しつけがましさもなく、いつものともすれば高圧的にも見える態度や威厳は皆無で、少し小さく見えた。「萌子美の時間を奪ってごめんね。小さい頃から人と比べて違うと、変だ、おかしいと思って、直さなきゃって思ってきた。人とのコミュニケーションが苦手って決め付けて(中略)何にもわかってなかった。お母さんが萌子美の一番の理解者だって本気で思ってた」。ただ、彼女の言葉には「私が娘の個性を認めてさえいれば本当であれば、娘は学校にも行けて、引きこもりにもならず、そうしたら今頃は他の子と変わらない人生を歩めていたのかもしれない」というようなニュアンスも含まれており、それを敏感に察知した祖父や萌子美に「この10年間は無駄じゃなかった。自分とたくさん対話する時間を持てたことで花を好きになれたし、これからも自分にしか作れない世界観を作っていくから」と諭される。きっとこの言葉の本当の意味を千華子はこれから徐々にゆっくりと咀嚼していくのだろう。

 ちなみに、この様々な“呪い”に絡め取られていた母親役を演じる富田靖子は、『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)では主人公が働く製薬会社の女性支店長役を演じており、そこでは従来の働き方からの積極的に改革を進めようとする上司役を好演。本作で見せる千華子とは全く違った顔を見せていた。

 次週は兄の俊祐(工藤阿須加)の心に巣食うかなり根深い闇の正体が明かされそうだ。その一方、萌子美が岸田佑矢(加藤清史郎)を自宅に連れてくるという急展開が清水家を待ち受けているようでさらに見応えのある回となりそうだ。

■佳香(かこ)
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:00~23:30放送
出演:小芝風花、加藤清史郎、工藤阿須加、田辺誠一、富田靖子、橋爪功、水沢エレナ、内藤理沙ほか
脚本:橋部敦子
演出:竹園元(テレビ朝日)、常廣丈太(テレビ朝日)、鎌田敏明
音楽プロデュース:S.E.N.S. Company
音楽:森英治
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:竹園元、中込卓也(テレビ朝日)、布施等(MMJ)
制作著作:テレビ朝日
制作協力:メディアミックス・ジャパン(MMJ)
企画協力:オスカープロモーション
(c)テレビ朝日

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む