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篠田正浩「夜叉ヶ池」は越境者たちのユートピア、「坂東玉三郎なくしてはできなかった」

ナタリー

左から坂東玉三郎、篠田正浩。

「夜叉ヶ池(4Kデジタルリマスター版)」の舞台挨拶が本日7月10日に東京・ユーロスペースで行われ、主演の坂東玉三郎、監督の篠田正浩が登壇した。

泉鏡花の小説をもとにした本作は、玉三郎が村に暮らす女性・百合と夜叉ヶ池の竜神・白雪姫の一人二役を演じた物語。加藤剛、山崎努、丹阿弥谷津子もキャストに名を連ねる。

1979年に公開された本作は、松竹がこのたび映画製作開始から100周年を迎えたのを記念して42年ぶりによみがえった。篠田は「玉三郎さんに会いたくて声を掛けた」と、玉三郎は「私がずいぶんわがままを言ってできあがった映画なんです。監督は御立腹かなと思っていましたが、去年の春にお声が掛かってうれしかった」と2020年夏の再会を懐かしむ。

篠田は「百合と白雪姫の二役を演じることが可能なのは坂東玉三郎しかいないと思いました」と当時を振り返り、「(スタッフが)心血を注いでくれた特撮技術と、女形という日本の伝統芸能の技術がこの映画で結実した。それをもう一度世に出しましょうと協力を求めたら、玉三郎さんは快く受け入れてくれました」と感謝する。玉三郎は「いろいろな意味で、当時の“映画”という概念から外れた作品。デジタルリマスターという技術ができるとも思っていませんでしたし、皆様に改めて観ていただけるのはこのうえない喜びです」と再びスクリーンにかけられる心境を語った。

撮影時の思い出を尋ねられた篠田は「玉(三郎)さんに『監督、池のほとりの柳が全然動いてませんよ。風が要ります』と言われたことがあって、僕は監督としてまだ下っ端だなあと思いました。坂東玉三郎という素晴らしいパートナーなくして『夜叉ヶ池』はできなかった」と答える。その言葉に玉三郎は恐縮しつつ「スタジオ撮影なので花を取り替えないと枯れちゃうんですよね。重箱の隅をつつくようなことをして、よく監督が耐えてくれたなというのが僕の実感です」と言葉を紡いでいった。

続いて、4Kデジタルリマスター版で生まれ変わった「夜叉ヶ池」について、篠田は「がっかりしました。自分の中にあった技術がこんな簡単に再現されて(笑)」とユーモアたっぷりに言及して観客を笑わせ、「いろんな才能が集まった、映画界の越境者たちのユートピア映画だと思っています。この技術は“永久保存”のために活用していただきたい」と気持ちを伝える。玉三郎は「時を超えて観ることができる、映画だからこその喜びを感じております」と思い入れたっぷりに話した。

「夜叉ヶ池(4Kデジタルリマスター版)」は特集上映「篠田正浩監督生誕90年祭 『夜叉ヶ池』への道 モダニズム ポップアート そしてニッポン」の1本として現在上映中。7月14日にはBlu-rayが発売される。

※山崎努の崎は立つたつさきが正式表記

(c)1979/2021 松竹株式会社

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