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『Nizi Project』『PRODUCE 101 JAPAN』……近年のオーディション番組のトレンドは? 人気集めた背景と理由を考察

リアルサウンド

20/7/6(月) 12:00

 オーディションプロジェクト「Nizi Project」(以下、「ニジプロ」と表記)を追う地上波番組『虹のかけ橋 デビューメンバー最速公開スペシャル!』、Hulu『Nizi Project』6月26日放送分にて、ガールズグループとしてデビューする9人のメンバーが正式決定した。グループ名は「NiziU」。その結果は各メディアで大々的に報じられ、複数の関連ワードがTwitterでトレンドに入るなどSNSでも大きな反響があった。

(関連:NiziU『Make you happy』インタビュー

 オーディションは、昨年2019年7月からスタート。1万人を超える応募者のなかから合宿トレーニングや何回かの審査を経て、最終的に9人に絞られた。その様子は随時ネット配信やテレビ番組などを通じて伝えられ、特に最後のほうは情報番組『スッキリ』(日本テレビ系)でも連日のように特集された。

 ここ最近、オーディション番組が話題になることが増えている。この「Nizi Project」もそうだが、今年3月にデビューしたボーイズグループ・JO1のメンバーを選ぶため、やはり昨年から配信・放送されていた『PRODUCE 101 JAPAN』も大きな盛り上がりを見せた。

 なぜいま、これほどオーディション番組が人気を集めているのか? その背景と理由をここでは少し考えてみたい。

 アイドルの歴史は、オーディション番組の歴史でもある。いまから50年ほど前に始まった『スター誕生!』(日本テレビ系、1971年放送開始)。森昌子、桜田淳子、山口百恵の「花の中3トリオ」、ピンク・レディーなどが輩出したことで有名だ。そこから日本のアイドルの歴史は本格的に始まったと言っても過言ではない。

 この番組が画期的だったのは、テレビでの予選、予選合格者を集めた決戦大会、スカウトされる瞬間、そしてデビュー曲披露に至るまで、一般の素人が歌手としてデビューするまでのプロセスを詳しく見せてくれたことである。そのドキュメンタリー性が生む興奮や感動は、いまもオーディション番組の根底にあるものだろう。

 その後もおニャン子倶楽部のメンバーオーディションが番組中であった『夕やけニャンニャン』(フジテレビ系、1985年放送開始)があり、そして1990年代にはモーニング娘。などを生んだ『ASAYAN』(テレビ東京系、1995年放送開始)もあった。

 ただ、これらの番組では、合格者を選ぶのはあくまでプロの審査員やミュージシャンだった。そこにファンや視聴者は直接かかわることはできなかった。

 近年のオーディション番組で大きく変わったのは、まずそこだろう。視聴者が合格者を決める視聴者参加型オーディションが現在のトレンドである。その背景には、いうまでもなくインターネットの普及がある。テレビだけでは難しかったような、大規模な視聴者投票がネットの活用によって容易になるからである。

 『PRODUCE 101 JAPAN』は、そうした視聴者参加型オーディションの典型だ。同オーディションでは、101人の練習生がバトル形式でのパフォーマンス披露など数々の課題をこなしていくなか、その模様を見た視聴者による複数回にわたる投票で最終的にデビューメンバー11人が選ばれた。投票数は累計で約6500万票に達した。

 面白いのは、『PRODUCE 101 JAPAN』において投票する一般視聴者が「国民プロデューサー」と呼ばれる点である。

 この“プロデューサー”という表現には、アイドルファンならではの願望の実現という面が感じられる。かつての『スター誕生!』にせよ『ASAYAN』にせよ、ファンは直接投票こそできないものの、自分ならこの人を選びたい、こんな曲を歌わせたいといったプロデューサー感覚で番組を見ている面が少なからずあった。公開オーディションという形式が、そういう願望を掻き立てたのである。

 その意味において、視聴者参加型オーディションはファンの夢の実現という側面がある。同時にそうしてデビュー前からずっと見守り続けることで、応援にもいっそうの熱が入ることにもなる。『PRODUCE 101 JAPAN』で最終順位の発表の際に、会場に詰めかけたファンが一喜一憂する姿からもそんな思いが伝わってきた。

 同じ視聴者参加型オーディション番組からは、AKB48のメンバーが加わったIZ*ONEも生まれているが、そこに近年のオーディション番組が生んだもうひとつのトレンドも表れている。それは、アイドル文化のボーダーレス化である。

 最近は、IZ*ONEが日本と韓国、また同じくオーディション番組で結成されたTWICEが日本、韓国、台湾といったように、国境を越えて集まった多国籍のメンバーで構成されるグループが増えている。

 NiziUの場合も、グローバルオーディションとしてまず日本国内8カ所とハワイ、LAを含む10カ所でオーディションが開催された。したがって、日本だけでなく韓国やアメリカからオーディションに参加する者もいた。そしてデビューメンバーに選ばれたニナことヒルマンニナはアメリカ出身で、数年前に日本に移り住んだ経歴の持ち主である。

 また「ニジプロ」では、TWICEを育てたことでも有名な韓国の音楽プロデューサー、J.Y.Park(パク・ジニョン)がメンバー選考に当たった。この点でもボーダーレスである。「ニジプロ」を見ても『ASAYAN』におけるつんく♂を彷彿とさせるようなところがあり、J.Y.Parkはもう一方の主役と言ってもいい。当然、音楽やパフォーマンスの方向性にもプロデューサーである彼の意思が強く反映される。

 そうなったとき、日本のアイドル文化そのものに変化は起こるのか、といった点も興味深い。従来、日本のアイドル文化は、「カワイイ」カルチャーの一環として海外からも注目されるように日本独自のものとされてきた。それは一言で言えば、完成していない未完成な存在の成長を見守り、応援する文化である。

 一方、韓国では欧米流のショービジネスの影響も強く、逆に完成したプロフェッショナルなものを提供しようとする志向がある。そうしたなかで、日本でも特に若い世代を中心にK-POPグループの人気も高まっている。

 NiziUのデビューメンバー決定の翌日『スッキリ』に生出演したJ.Y.Parkも、最終的にメンバーを絞り込んだ際のポイントとして「彼女たちがアマチュアではなくプロだと思って誰が目立つか見た」と語るなど、“プロ”であるべきことを強調していた。それは世界を見据えているからでもあるが、そうしたグループが日本でどう受け入れられるのか、今後のアイドル文化の行方を占う意味でも注目したい。

(太田省一)

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