みうらじゅんの映画チラシ放談
『死霊の盆踊り』『プラン9・フロム・アウタースペース』 『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』
月2回連載
第35回
── これはどちらも史上最低の映画監督と呼ばれたエド・ウッド関連作のリバイバルですね。
みうら なつかしいですね。『死霊の盆踊り』は特にその邦題にグッときたものです。ダマされ覚悟で観たことよく覚えてます。当然、配給は江戸木さんのところですよね?
── 配給会社はエデン、映画評論家の江戸木純さんが仕かけ人ですね。
みうら そもそも、江戸木さんというお名前も“エド・ウッド”から来てるんですものね。
── そうです、そうです。エド・ウッドがお名前の由来です。
みうら いや、あの時代、ただ買いつけるだけじゃなく、面白い仕かけをされてたことに感謝してます(笑)。
── 『プラン9』のチラシには“江戸木純スペシャルセレクション 最低映画の大逆襲 第二弾”って書いてありますね。
みうら なるほど。でも“大逆襲”って、最初に買いつけて日本に襲来させたのも江戸木さんですけどね(笑)。こないだは『野獣処刑人 ザ・ブロンソン』もありましたし、また江戸木さんのカンが働いてるってことですね。
“サイテーですよ”って言って人を呼ぶっていうのは、90年代の新しいやり方でしたね。『死霊の盆踊り』のチラシは“ヒドすぎて狂おしい”って書かれてますし、『プラン9』は“ヒドすぎて愛おしい” ね(笑)。ところで『死霊の盆踊り』の原題の『Orgy of the Dead』ってどういう意味なんですか?
── “Orgy”は乱交という意味ですね。
みうら なるほど、原題と邦題は近いんだ。僕、こないだ『夜這い』なんて本を買ったんですけど、盆踊りの夜には、昔は乱交が結構あったみたいですね。田舎の大きめの神社に行くと、必ず若者が集う館があったらしいですよ。そこで年に1回、婚活パーティーみたいなことを夜中にやるらしくて、そこで乱交して、結ばれたりしていたとも書いてありました。
あと、当時からこういう感じのチラシやポスターだったと思うんですけど、抜群にキッチュでセンスが良かったんです。それで僕らも騙されたわけだし(笑)。昔の新東宝チックというか。当時は『フリークス』と『ピンク・フラミンゴ』を観に行った者は必ず『死霊の盆踊り』は外せないものでしたからね。
それを思えば、こないだ江戸木さんが企てた『ザ・ブロンソン』のロバート・ブロンジーも、エド・ウッド系列の人ってことになります。
── 確かに、サイテー監督の次に打ち出したのがソックリさんですから、ブレてないですね。
みうら 流石です。みなさんもまず、この2本を観なきゃ話は始まらないでしょう。