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TAIKING/PIA SONAR MUSIC FRIDAYインタビュー

バンドを経て、新天地へ。Suchmosギタリスト・TAIKINGソロ活動開始の今に迫る。

特集連載

第10回

「ひとりの音楽家としてバンドという枠を超えてチャレンジしたいっていうすごいシンプルなところ」

── ソロ活動のきっかけは、やはりバンドの活動休止が大きかったんですか?

TAIKING 実際にアナウンスされたのは7月だったんですけど、気持ちとしてはソロでも活動したいなっていうのはずっとあったんですよね。だからバンドが止まる前からスタッフとも話はしていましたし、構想としては1年くらい前から考えていました。

── Suchmosに加入される前はひとりで音楽制作をされていたんですよね?

TAIKING 作編曲をひとりでやっていました。だからスタイルとしてはひとりで音楽制作をできる体制は持ってはいたんですけど、バンドに入ってからは常にみんなで作っていたので、ずっと封印状態だったんですよね。特に僕らはセッションを軸に曲作りをしていて、いいものができたらそこを膨らませていって構築していくっていうような作り方だったので。

── じゃあ真逆というか、ソロとバンドでは曲作りのアプローチが全然違うわけですね。

TAIKING ソロの方がどちらかというとロジカルな印象ですね。こういうビートの曲がいいなと思ったらまずはドラムから打ち込んでいってベースを乗せて、ピアノを弾いてギターを弾いて、最後に歌を歌ってっていう感じで、ひとつひとつイメージに沿って構築していく感じなんですよね。だからわりとナウいというか(笑)、今っぽい作り方かなと。

── 1年くらい前からソロ活動の構想が芽生えていたということですが、それは自然とそういうふうな思いが強くなっていったという感じですか?

TAIKING そうですね、自然と、というのが一番近いかもですね。やっぱりそこにはコロナが影響していて、自粛期間にデモ作りを始めたんですよ。最初は普通にコロナが収束してバンド活動ができるようになった時のためにと思ってやっていたんです。そしたらそのうちに、バンドでやるにはちょっと合わないかもしれないけど自分的にはいいなと思えるものもできるようになって、そっちはそっちで録音しておこうっていう2軸ができたんですよね。

── バンドのモチベーションって、やっぱり仲間に認めてもらいたいというか、仲間といい音楽を共有したいということがまずはあると思うんですよね。

TAIKING このメロディ、YONCEに歌ってもらいたい、とかですよね。

── ええ。ではソロの場合に感じているモチベーションは何ですか?

TAIKING やっぱりひとりの音楽家としてバンドという枠を超えてチャレンジしたいっていうすごいシンプルなところですよ。自分の可能性を広げて行ってトライできるところは全部していくっていう心構えというか。あとモチベーションになったのは、YONCEがカッコ良すぎたから憧れちゃったっていうのはあるかもしれないです(笑)。おれも歌う!って。

── めちゃくちゃピュアですね(笑)。

TAIKING カッコいいものはカッコいいから(笑)。ムカつくくらいカッコいいんで。それこそ2年前に横浜スタジアムでライブをやったんですけど、あいつが「Yeah!」って言うだけで3万人が「Yeah!」って言うんですよ。何それ!って(笑)。ま、YONCEだけじゃなくバンドメンバーみんなカッコいいんで、じゃあおれが全部やろっかなって(笑)。だからソロ作品はギターだけじゃなくて全部のパートを自分ひとりでやっちゃいました。

── ということは、バンドがあったからこそソロに向かえたわけですね?

TAIKING 本当にそうですね。みんなとセッションで作っていく面白さももちろんあるんですけど、ひとりで作詞作曲編曲、プレイまで全部やることに対しての面白味って、また全然違うんですよね。それって一方を知っているからこそ感じられる面白さなんだなって思います。

── それと、サポートアクト(藤井 風、オカモト・コウキ)の経験もされて、そこから吸収したものも大きかったですか?

TAIKING それは大きかったですね。今年の5月に藤井 風くんのライブに呼んでもらってプレイしたんですけど、めちゃくちゃ新鮮でしたね。風くんってこういうコード進行に行くのねって学んだりして。

── そこでいろんなタイプのアーティストと一緒に音楽をやることによって自分のコアな部分がわかるということもあったんじゃないでしょうか?

TAIKING 例えばコード進行とかメロディの流れとか、サビのしまい方とかって個性が出るんですよ。新鮮な驚きがある一方で自分のことがわかってくるというか、おれはこれでいいやって思えるようになったんですよね。影響されつつも影響されないでおこうっていうか、あまりやれることを増やしすぎても自分のカラーって出にくくなると思うので、おれってこういう色っていう部分をまずはきっちり伝えていけたらいいのかなって思ってます。

「『Easy』ほどイメージ通りにいった曲ってあんまりないんですよね(笑)」

── デビュー曲『Easy』はTAIKINGさんのカラーが感じられる曲ですね。

TAIKING イントロのギターとかは僕のカラーがわかりやすく出ているのかなと思ってもらえるかもですね。バンドでやってる時も、人の耳に残るフレーズを作るねってよく言われてたんですよ。『STAY TUNE』とか『MINT』とか、曲の象徴的な部分というか、「あ、この曲ね」ってわかるところは自分が担っていたという自負があるんで、それを『Easy』ではカッティングで表現できたところが、ひとつ自分っぽいのかなって思ったりしますね。「軽快なギターサウンドのイントロの曲」って理解してもらえる感じというか。

── イントロのカッティングのフレーズからイメージを膨らませていったんですか?

TAIKING 『Easy』はそうですね。夏っぽい曲を作りたいなっていうそもそものイメージはあったんですけど、だからこそカッティングの爽やかな雰囲気のものを作りたいなって思っていました。そしたらあのフレーズが出てきて、そこから肉付けをしていって、歌詞もせっかくなら夏だし湘南のことを書きたいなと思って、片思いの淡い1日の情景を描いてっていうふうにやっていったら、狙っていた地点にうまくたどり着けたなっていう印象がありますね。

でも実はそういうふうにイメージ通りにできる曲ってあんまりなかったりするんです。先ほどソロはロジカルにやっているって言ったんですけど、そう思ってやっていても狙いから逸れていく曲が多かったりするんですよ。

── それはそれで曲が求めていた形かもしれませんもんね。

TAIKING そうそう。だから『Easy』ほどイメージ通りにいった曲ってあんまりないんですよね(笑)。

── タイトルの『Easy』という言葉は、いろんな感情や意味を含んでいるようにも思えるのですが、どんなイメージですか?

TAIKING 最初から“Easy”っていうことを言いたいというわけではなかったんですよ。イントロができて、じゃあメロディつけるかって鼻歌でフンフン歌って、サビのところにきたら、メロディと一緒に“Easy”って言葉がくっついて出てきたんですよ。じゃあ“Easy”って言葉と、“夏”“湘南”というところでどういう歌詞が書けるだろう?っていう感じで全体を考えていきました。

── 歌詞はこれまで書くことがあったんですか?

TAIKING いや、バンドでも1曲も書いたことなくて、そもそも僕は言葉自体をあんまり知らないんですよ。だから普段話す言葉でしか書けないですね。

── それでいいというか、それだからこそあの『Easy』の雰囲気が出るんじゃないですか? 僕はすごく小説っぽい歌詞だなって思いましたけど。

TAIKING マジですか!(笑)。

── 特にここ、〈地元のカレー屋は裏道で窓ガラスの落書きは小さくて読めない〉っていう部分に宿るリアリティはすごいなって思います。

TAIKING はははは。夕方くらいに集まって、展望台に行った後にカレー屋に行ったりして、そろそろ感情的にはキメにいかなきゃいけないなっていう時間と気持ちの流れみたいなものを、湘南を舞台に書いたっていう感じですけどね。

── TAIKINGさんの歌詞ってすごく映像が浮かぶんですよね。

TAIKING それはめちゃくちゃうれしい。

── だから書き慣れている人なのかなって思ってました。

TAIKING 全然ですね。歌は歌ってはいたんですけど、ここまできちんとした作詞はやったことがなかったので。『Easy』を発表した後に、聴いてくれた人たちのSNSを見て、おれって歌詞ちゃんと書けてたんだって気づかせていただくという(笑)。

── それと、ギターソロについてなんですけど、アウトロの位置にあるのも絶妙で、何よりさすがのフレージングですね。

TAIKING あれは実は苦労しました。あのギターソロだけで録音するのに5時間くらいかかってて。というのも、アドリブでギターソロを弾くのはあんまりしたくないんですよね。その作品の中に溶け込んだフレーズとしてギターソロを聴いてもらいたいっていう気持ちがあるんで、結構フレージングは考えるんですよ。だからニュアンスも含めて時間がかかりますね。

『Easy』のギターソロに関しては、湘南の1日がずっと続いていくっていう感じを出せたらいいなと思ったんです。ギターソロだから目立つっていうことではなくて、ずっと聴いていたいって思えるようなスマートでリラックスできるソロを弾きたいというのは意識しましたね。

── アウトロの位置にあるのも納得です。

TAIKING そこはやっぱりギタリストなんでっていう気持ちもありつつ、最後はギターで終わりたいなって思いました。実際録音したのも他のパートが全部終わって最後にやりました。

「やっぱりカッコつけたことをいったん卒業したいっていうのが個人的にはあって」

── MVはまさに湘南の1日を描いたものですけど、映像の質感がすごくいいですね。記憶の奥底にしまってあったものみたいな感じで。

TAIKING はははは。そうですね。あれすごいですよね。運動会の時にお父さんがよく持ってたような家庭用ビデオカメラで撮ったんですよ。その質感がすごく良くて、結局全編そのカメラで撮ったんですけど、内容的にも台本は一切なしだったんですよ。とにかく1日湘南でカメラを回しながら過ごそうよっていうノリだったので。

── 実際に1日で撮ったんですか?

TAIKING いや、3日くらいかけました。夏の曲だから晴れてなきゃいけないっていうのもあって。実は撮り始めたのが梅雨の時期だったんですよ。それで晴れ間を狙って撮るという感じだったので1日では無理でしたね。

── ソロとしての楽曲が自然と地元の湘南に集約していって、そこから始めるというのはすごく意味のあることだと思います。

TAIKING やっぱりカッコつけたことをいったん卒業したいっていうのが個人的にはあって。年齢的なこともあるのかもしれないですけど、すごくリラックスしている状態を見てもらう方がいいんじゃないかなっていうのもあって、1曲目は『Easy』がぴったりだなって思ったんですよね。

── 地元ということで言うと、TAIKINGさんが10代後半から始めていた地元の仲間とのつながりで作ったコミュニティ「CONNECTION」をこのタイミングで復活されたんですよね。

TAIKING そうなんですよ。最初は本当に遊びの感覚で、高校の時に僕と友達のダンサーで学校の壁を超えた卒業ライブみたいなものをやろうっていうことで始まったんですよ。それが結構面白かったんですよね。ダンサーが10組くらいにバンドが4組、あとはチアリーダーとかストリートバスケのチームとかもいて、めっちゃくちゃだったんですけどね(笑)。それで僕はバンドを始めて、で、友達のダンサーも彼は彼でその世界で活躍して、それから10年以上経っているけど今だったらまた面白いことができるかもしれないねっていう話をして、このタイミングでやることにしました。

一番の目的は、地元の横浜に何か還元したいなっていうのが大きいですね。ゴミ拾いとかみんなでやってるんですよ。あと、こういう時期なんでテイクアウトのおいしいお店の紹介とか。そういう活動から始めて横浜の魅力を発信していきつつ、カルチャーの交差点みたいなイベントにつなげていけたらいいなって思っています。

── 10月23日(土)にYokohama Bay Hallで『CONNECTION FES』を開催しますね。そこにもダンスチームをはじめフリースタイルバスケのチームが出たり、まさに最初の原型がありますよね。

TAIKING ほんとですね(笑)。やっぱりみんなやり続けてたからできるんでしょうね。世界レベルな人たちが出てくれるんで、いい意味でカオスだと思いますよ(笑)。でもそれこそが目指している感じというか、いろんなカルチャーがギュッとなっている場所に横浜がなればいいなと思います。

── ところで今、曲ってどれくらいあるんですか?

TAIKING アルバム2枚分くらいあるんですよ。

── え!

TAIKING 実は(笑)。なので、それをどう出していくかっていうのは今後楽しみにしていてください。結構いろんなタイプの曲があるので。あ、まさにこの番組(『PIA SONAR MUSIC FRIDAY』)のオンエア日(8月27日)に、新曲の『VOICE』という曲が発表されました。『Easy』に比べたら、もうちょっと尖った感じの曲ですね。

── 聴かせていただきました。ファンキーなノリがあって、ギターリフが印象的でした。

TAIKING そうですね。リフっぽい感じにダンサブルなブラックミュージック寄りのものを当てるのって結構難しくて、リフと共存しにくいんですよ。それをどうにかクリアできないものかという試行錯誤から始まって、自分の中では新しいサウンド感を求めた曲ですね、『VOICE』は。たぶんSuchmos好きな人は入りやすい曲なんじゃないかなって思いますね。これもどういう反応なのかすごく楽しみです。

Text:谷岡正浩 Photo:吉田圭子

リリース情報

『Easy』8月1日(日)配信リリース
fcls.lnk.to/TAIKING_Easy

『VOICE』 8月27日(金) 配信リリース
fcls.lnk.to/VOICE

イベント情報

CONNECTION FES 2021
日程:2021年10月23日(土)
会場:Yokohama Bay Hall
時間:16:30開場、17:30開演
チケット代:3,500円(4歳以上はチケット必要)
出演:
<バンド>
TAIKING(Suchmos)
<TAIKINGサポートメンバー>
Gt:Tondenhey(ODD Foot Works)
Ba:小杉隼太(HSU from Suchmos)
Key:大樋祐大(SANABAGUN.)
Dr:岡本啓佑(黒猫チェルシー)
<DANCE>
DefClan
Mad Skills Styler
CNS(Cloud Nine./No Spectator)
F.S.A
<FREESTYLE BASKETBALL>
STILL BALLIN (スティボ)
<HUMAN BEATBOX>
TATSUYA
<EVENT MC>
SUV
Shishigami
※詳細はCONNECTIONインスタグラムアカウントにてご確認ください

プロフィール

TAIKING
2019年、デビューからわずか4年で地元・横浜スタジアムでの3万人動員のワンマンを実現し、2021年に活動休止を発表した6人組ロックバンドSuchmosのギタリスト。ソロとしては藤井風のワンマンライブへのサポート参加をはじめ、オカモトコウキ(OKAMOTO’S)のサポートアクトなども務める。また、自身の仲間たちと地元横浜の活性化を掲げるコミュニティ「CONNECTION」を結成し、様々な企画展開や清掃活動などの地域貢献活動も行う。ソロプロジェクトとして、2021年8月にF.C.L.S.より「Easy」を配信リリース。Gt.のみならずVo,Ba,Dr,Key,などすべてをこなし、そのマルチな才能を発揮している。

関連リンク

Twitter: https://twitter.com/totsukataiki
Instagram: https://www.instagram.com/taikitotsuka
YouTube: https://www.youtube.com/channel/UCNtaVBzhBbt3WQd4NPlgPAg
CONNECTION Instagram: https://www.instagram.com/connection_yokohama/

番組概要

放送局:J-WAVE(81.3FM)
番組名:PIA SONAR MUSIC FRIDAY
ナビゲーター:櫻井海音
放送日時:毎週金曜 22:30~23:00
番組HP:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarfriday/
番組twitter:https://twitter.com/SONAR_MUSIC_813
ハッシュタグ:#sonar813
番組LINEアカウント:http://lin.ee/H8QXCjW

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