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野村正昭 この映画がよかった! myマンスリー・ベスト

私の6月第1位は、日本映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』、外国映画『コリーニ事件』に決定!

毎月連載

第23回

20/6/30(火)

6月公開の日本映画、この5本

①なぜ君は総理大臣になれないのか
②花のあとさき ムツばあさんの歩いた道
③燕 Yan
④君がいる、いた、そんな時。
⑤PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR

※対象は3/22~6/25公開のもの

新型コロナウィルスの影響で、4月から5月にかけては、映画館は勿論、試写室も全面休止の状態で、私も映画を観始めてから、かれこれ半世紀近くになりますが、前代未聞の状況に、とまどうばかり。自粛中は、溜まりに溜まった未見で旧作のDVDを100本近く観てましたが、これはこれで、なかなか面白く、いっそしばらくは、ずっとこのままでいいかもと思ったりもしました。でも、まさか、こんなことになるとは、つい数ヵ月前までは夢想だにしませんでした。

緊急事態宣言が漸く解除になり、映画館も再開され、完全予約制という条件付きのところもありますが、試写室での上映も始まったのはいいんですが、今度は電車に乗るのさえ億劫になっている有様。いざ試写室に入っても、久しぶりの大画面に圧倒され、以前は3本ぐらい続けて観ても平気だったのに、1本観ただけで疲労困憊。慣れるまで、しばらく時間がかかりそうです。

外国映画は大作はともかく、ミニシアターで新作も公開されるようになりましたが、日本映画の場合は、まだまだエンジンがかからず、観ている本数も少ないので、今回だけはベスト5にさせていただきます。前回は邦画、洋画共に3月21日までの公開作品を対象にしていたので、今回は、3月22日から6月25日までの公開作品の中から選出しましたが、それでもまだ日本映画は寂しいなあ。

『なぜ君は総理大臣になれないのか』『花のあとさき ムツばあさんの歩いた道』など長篇ドキュメンタリーの力作に加えて、『燕 Yan』『君がいる、いた、そんな時。』などの小品も印象深く、『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』は自粛直前に、新宿歌舞伎町のシネコンで観ましたが、かなり夜遅い回にも拘わらず、客席は8割以上埋まっていて、やはりカルト・アニメは強いと痛感させられました。あの頃はまだ映画館のなかでマスクをしている人なんて殆どいなかったのに……って、ほんの2ヵ月前のことなんですけど。(私が観た6月の日本映画は9本)

『花のあとさき ムツばあさんの歩いた道』(C)NHK

6月公開の外国映画、この10本

①コリーニ事件
②未成年
③ようこそ、革命シネマへ
④ポップスター
⑤世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ
⑥アンナ・カリーナ 君はおぼえているかい
⑦アンティークの祝祭
⑧暗数殺人
⑨サーホー
⑩デッド・ドント・ダイ

※対象は3/22~6/25公開のもの

外国映画は、あとでふれますが観逃しが多く、年末までには帳尻を合わせようと決意していますが、果たして、きちんと公開されたのか、されていないのか、その情報さえ十分掴まえきれず、日本映画以上に困惑するばかり。

『コリーニ事件』は、渋めのドイツ映画ですが、ある殺人事件を通して、戦後ドイツの“不都合な真実”が、あぶり出されていく過程が実にスリリング。マカロ二・ウェスタンのスターとして一世を風靡したフランコ・ネロが、映画の要となる人物を重厚に演じて、さすがの貫禄ですしね。『未成年』は、『チェイサー』などで知られる韓国の演技派スター、キム・ユンソクの初監督作。父親の不倫に悩む女子高生と、その不倫相手を母に持つ同級生をめぐるドラマと聞いて、辛い内容かなと思いきや、これが実に初々しい青春映画になっていて、ユンソク監督の初演出とは思えない力量に目を見張りました。

『ようこそ、革命シネマへ』『ポップスター』『アンティークの祝祭』など上映規模の大小はありますが、見応えのある佳品も多く、コロナ禍さえなければ、もっと話題になったのでは。中でも『アンナ・カリーナ 君はおぼえているかい』は、昨年末に逝去した女優アンナ・カリーナを、パートナーであるデニス・ペリー監督が心を込めて作りあげたラブレター。ゴダールやゲンズブールとの出会いなど、映画ファンには、たまらないエピソードの数々が披露されていますが、本篇で上映できるのは、2020年限りなので、ぜひ観ておきたいところ。

ジム・ジャームッシュ『デッド・ドント・ダイ』は、近年ジャンル映画に意欲的なジャームッシュ監督が、よりにもよって“ゾンビ映画”に挑むという大胆というか何というか、とにかく異色作。そもそも脚本が存在したのかと疑問になるほど、全篇ユル~イ展開で、これがジャームッシュ独特の持ち味と言われてしまえば、それまでですが……。ファンにしてみれば、クセになるかも。『ハリエット』『エジソンズ・ゲーム』『ANNA/アナ』などは前述したように未見なので、いずれ観ますとお約束して、コロナ第二波が来ないことを祈りつつ、また来月!(私が観た6月の外国映画は22本)

『未成年』(C)2019 SHOWBOX AND REDPETER FILM ALL RIGHTS RESERVED.

プロフィール

野村正昭(のむら・まさあき)

野村正昭(のむら・まさあき) 1954年山口県生まれ。映画評論家。年間新作800本を観る。旧作も観るが、それを数えると空恐ろしい数になるので、数えないことにしている。各種ベストテンの選考委員を務めている。

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