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布袋寅泰 GUITARHYTHMという人生

ライブで磨かれた音楽の力を世界へ 『GUITARHYTHM Ⅳ』後編

毎週連載

第14回

19/8/19(月)

全国ツアー「HOTEI Live In Japan 2019 ~GUITARHYTHM VI TOUR~」を展開中の布袋寅泰。今回のライブの基軸をなすのは最新作『GUITARHYTHM Ⅵ』だ。その世界観をより深く理解するために、この連載ではGUITARHYTHMシリーズを読み解いていく。ライブアーティストとしての成熟を糧に世界を視野にとらえた『GUITARHYTHM Ⅳ』を2回に分けて振りかえる。

── 冒頭を飾るヘビーなロックチューン「SERIOUS?」は、ツアータイトル「GUITARHYTHM SERIOUS? TOUR」にもリンクしましたが、もともとの楽曲タイトル候補は「POSITIVE?」だったという話は本当ですか。

布袋 ずっしり重いビートだよね。「うわべだけのラブソングなんて歌えない」。これは今も一貫したポリシー。「SERIOUS?」とは日本語だと「マジ?」「それ、本気?」って感じかな。楽しそうにしてるけど「それ本気?」。あくせく働いて金を儲けても「天国じゃ金は使えないぜ」って。「お前の本気って何?」。そんな問いかけは、自分自身に対するものであったりもする。僕の曲の主人公は僕の理想を描いていることが多いんだよ。シャウトしたら嘘つけないから、有言実行するしかない、みたいな。タイトル候補? そうだっけ? 覚えてないな。なんでそんなこと知ってるの?(笑)。さては誰かがリークしたな? ネットでBOØWYの“幻のデモテープ”とか見つけると「あぁ、流した犯人はアイツだな」とだいたい想像はつくけどね。本人たちはうれしくないもんだよ。

── 萩原健一主演ドラマ(1993年の『課長サンの厄年』)の主題歌となった「さらば青春の光」は、GUITARHYTHMシリーズの枠を超えた日本語タイトル、エモーショナルなサウンドでファンの幅を広げ、カラオケ人気も高い楽曲となりました。誕生の経緯と狙いは?

布袋 当時は“タイアップすると売れる”時代で、僕はそんなことしたら売れてもタイアップのおかげになってしまって悔しいから、タイアップは絶対嫌だっていつも断ってたの(笑)。しかし、主役が萩原健一となれば話は違う。『太陽に吠えろ』『傷だらけの天使』『前略おふくろ様』……男はみんな好きだもの。完全に世代だもの。番組のディレクターが萩原さんに「この番組の主題歌をお願いするのは布袋寅泰以外にいない!」と熱心にオファーしてくれて、結果視聴率20%を超えるヒットになった。萩原さんにもご挨拶にうかがったよ。楽屋に招き入れてくれてね。緊張したなぁ。その後自分も厄年を迎え、今じゃ同級生が定年の話をする世代だよ。この曲を作ったときと今とでは、歌そのものの意味が違う。いまだに僕のライブでみんなが歌ってくれる曲だよ。「さらば青春の光 あの頃俺とお前は 傷つくのも恐れずに ただ走り続けていた」の「俺とお前」は「俺とファン」でもあり、『傷だらけの天使』の「ショーケンと水谷豊」でもあり、「布袋と氷室」でもあるんです。

── 名曲「サレンダー」。タイトルは“降伏”という意味ながら、メッセージからは対極の意味を感じました。「サレンダー」にこめた意図を教えてください。

布袋 降伏寸前から這い上がる。そんな不屈の魂を描きたかった。ロックのギターソロ史上例を見ない12小節が同じ音階という挑戦も、どんなに風が吹き荒れようとこの魂だけは決して揺るぎはしない、という強い思いを表現したかったんだよ。意外かもしれないけど僕はブルース・スプリングスティーンが好きで、作っているときに彼の「(涙の)サンダーロード」や「ボーン・トゥ・ラン(明日なき暴走)」あたりのイメージも入っているかもしれない。この曲には。

── 壮大なストリングスからスタートする「INTERMISSION」には、GUITARHYTHMらしい映画のサウンドトラックのようなセンスを感じました。スペインを旅していて生まれた世界観だそうですが、どのような心象風景でしたか。

布袋 「地球の端に腰掛けて 命がけの暇つぶし」。いい言葉だと思わない? 曲はまんま(デヴィッド・)ボウイの「SOUND AND VISION」だけど(笑)。そう、映像撮影のためにスペインを回った。マラガをジープで走ったり、マドリッド闘牛場でも撮影したな。スピルバーグが『太陽の帝国』の撮影で使った場所で見た夕日は驚くぐらい大きかったよ。あるときはニューヨークのマンハッタン、あるときはジャマイカの山の奥地、そしてまたあるときはスイスのアルプス山脈と思えばベニスでゴンドラに揺られ! そんな日々だったからね、あのころは。そんな壮大な旅の気分をファンのみんなにも味わってほしかった。

── 「SIREN」は、花田裕之さんに提供した楽曲のセルフカバーとなりました。その意図とは?

布袋 意図はないけど、よく洋楽でもあるじゃない? 提供した曲の逆カバー。できたときからいつか自分でやりたいと思っていた曲。この曲は名曲だよ! 誰も気づいてないかもしれないけど。

── 最高のエンディングを迎える「RUN BABY RUN」。この曲をラストに選んだ理由はなんですか。

布袋 これはね、僕の父がよく「寅泰くん、男たるもの夢は大きく、世界の海を渡るような大きな男になりなさい」と、地球儀を回しながら語った言葉を膨らませて曲にしたんだよね。人生は迷うことばかり。行っても行っても行き止まり。だけど、だからこそそれを超え、自分を超えるという目標を持つ意味がある。そんな大きな歌を作りたかった。この曲は名曲だよ! みんな気づいていると思うけど(笑)。

── ツアー終盤、(1994年)11月26日の国立代々木競技場「GUITARHYTHM SERIOUS! CLIMAX ARENA TOUR」のステージでGUITARHYTHMシリーズの(一旦の)完結を宣言されました。当時の心境を教えてください。

布袋 ギタリズム宣言とはBOØWYのギタリストだった布袋寅泰がソロアーティストとして活動してゆく、という独立宣言でもあったんだよね。気負いもあったし未熟だったし、鎧をまとって戦う必要があった。けど、アルバムを3枚作って、合間にCOMPLEXがあって、ソロアーティストとしての基盤ができあがり、「ギター」と「リズム」というコンセプトで自分を縛る必要がなくなったと感じた。もっと自由に自分の可能性を大衆にぶつけてみたいと思い始めた。「マリオネット」も「B.BLUE」も「BE MY BABY」も僕のポップセンスから生まれたサウンドとメロディ。そろそろ「布袋寅泰」でも実験してみたいと思った。BOØWY解散から6年。また何かを始めるにふさわしいときがきたと感じたんだ。その後「スリル」「POISON」「バンビーナ」「RUSSIAN ROULETTE」とその花は開くことになる。

── 『GUITARHYTHM IV』とは、これまでのキャリアにおいてどんなポジションに位置付けられる作品ですか。

布袋 第2期布袋寅泰の脱皮前夜かな?(笑)。もちろん第1期はBOØWYね。アルバムのジャケット通り、今までの自分にさよならを言って、次なる野望に心ときめかす自分。その時期に孤独と向き合って世界中を旅できたことは、のちの活動において大きな経験となったことは間違いないよ。

質問作成:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ) 構成/編集部

当連載は毎週月曜更新。次回は8月26日アップ予定。『GUITARHYTHM Ⅴ』前編をお届けします。

プロフィール

布袋寅泰

伝説的ロックバンドBOØWYのギタリストとして活躍し、1988年にアルバム『GUITARHYTHM』でソロデビュー。プロデューサー、作詞・作曲家としても高く評価されており、クエンティン・タランティーノ監督の映画『KILL BILL』のテーマ曲となった「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY(新・仁義なき戦いのテーマ)」が世界的に大きな評価を受ける。2012年より拠点をイギリスへ。2014年にはThe Rolling Stonesと東京ドームで共演を果たし、 2015年10月にインターナショナルアルバム『Strangers』がUK、ヨーロッパでCDリリースされ、全世界へ向け配信リリースもされた。2017年4月にはユーロツアー、5月には初のアジアツアーを開催。6月9日から「HOTEI Live In Japan 2019~GUITARHYTHM Ⅵ TOUR~」で全国24ヵ所24公演を巡る。


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