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【おとな向け映画ガイド】

志村けんから沢田研二へ『キネマの神様』、金と夢を取り戻せ!『明日に向かって笑え!』をご紹介。

ぴあ編集部 坂口英明
21/8/1(日)

イラストレーション:高松啓二

今週末(8/6〜7)に公開される映画は16本。全国100スクリーン以上で拡大公開される作品は『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』『キネマの神様』『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』『映画 太陽の子』の4本。中規模公開、ミニシアター系の作品が12本です。今回はその中から、オトナにおすすめの『キネマの神様』と『明日に向かって笑え!』をご紹介します。

主人公はギャンブルと映画好き
『キネマの神様』

完成するまでのご苦労そのものが、まるで映画じゃないですか! といいたくなります。なんともドラマチック。できあがったことが奇跡のような映画です。

原作者の原田マハさんと雑誌で対談した山田洋次監督がその席で、自分が映画化するならこんなエンディングにして……と語りだし、企画はそこからとんとん拍子にまとまり、なんと100周年を迎える松竹の記念映画に決まりました。

ギャンブル好き、女好き、そして映画好き、そんな主人公ゴウのキャラクターはそのままに、ストーリーはほとんどオリジナル。若き日のゴウを演じるのは菅田将暉、50年後は、1999年『鉄道員〈ぽっぽや〉』でちらっと出演して以来の志村けん。ところが、志村さんがコロナに感染して急逝。撮影も中断を余儀なくされました。

救世主として現れたのは沢田研二さんでした。驚きました。コンサート活動は続けているものの、最近はテレビを始め、マスコミにでることはまずありません。志村さんとは同じ渡辺プロの先輩にあたる存在。これこそ“友情出演”です。映画になってみると、志村さんとはひと味ちがいますが、沢田流の、調子のよさそうな軽めのキャラ、若い頃さぞかしモテただろうと思わせるゴウ像です。志村さんへのオマージュともいえるシーンもあります(ここ涙出ます)。

ドラマは、黄金時代の撮影所を舞台にした50年前と、主人公たちの今が交差します。小津安二郎や木下惠介もいた松竹大船撮影所、ゴウは生きのいい助監督です。もちろん、当時スタジオを駆け回っていた山田監督の分身のような存在です。親友テラシンの片想いの相手、撮影所前にある食堂の看板娘淑子は、実はゴウが好き。というトライアングルのラブストーリーがその後どんな風に展開するか。淑子役は永野芽郁と宮本信子。親友テラシン役は野田洋次郎と小林稔侍です。

スタジオでの撮影風景、この映画のために作られた劇中劇のような映画の1シーン、スタッフが集まる食堂の雰囲気など。映画ファンにはたまりません。リリー・フランキーはゴウの師匠にあたる監督役。北川景子は当時の人気女優を華やかに演じています。松竹のあの人がモデル?とか、いろいろ想像できます。大船撮影所は現存しませんので、スタジオ部分は東宝撮影所で撮影。現代パート、映画館のシーンには埼玉の名画座、川越スカラ座が使われました。セットの美術、セリフのすみずみまで、しみじみ堪能できる作品。作り手たちが心をこめて大切にこしらえた、まさに映画の神は細部に宿る、といえるプロたちの仕事です。

【ぴあ水先案内から】

植草信和さん(フリー編集者、元キネマ旬報編集長)
「……スタッフ・キャスト全員が、〈映画の神様〉の存在を信じていることが伝わってくる……」

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平辻哲也さん(映画ジャーナリスト)
「……沢田研二は、そのバトンを受け取り、志村さんの思いをまといながらの演技を見せる。……沢田なしに、この映画は成立しなかった。その決断には拍手を送りたい。……」

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笠井信輔さん(フリーアナウンサー)
「……涙なしには観られないクライマックスに、これは山田監督の今は亡き奥様に対するラブレターなのではないかと強く感じた。」

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(C)2020「キネマの神様」製作委員会

正直者たちがリベンジ!
『明日に向かって笑え!』

「アルゼンチン版“オーシャンズ11”」と紹介されることもありますが、そんなにカッコよくありません。ごく普通のおじさんおばさんによる金庫強盗です。でも、だからこそ痛快! 本国アルゼンチンで公開年1位の大ヒットとなった、実に楽しいエンタテインメント映画なのです。

2001年。元サッカー選手、いまは細々とガソリンスタンドを経営する主人公フェルミンが、友人たちと農業協同組合を作ろうと、なけなしの金をかき集め、銀行に預けるのですが、国が金融危機に陥り口座が凍結してしまいます。ところが、事態に便乗した銀行の支店長と悪徳弁護士がその預金を奪い取ったことを知り、リベンジ大作戦を企てるのです。

脚本を担当したエドゥアルド・サチェリの原作小説を映画化。監督はセバスティアン・ボレンステインです。主人公のフェルミン役はアルゼンチンを代表する名優でプロデューサーでもあるリカルド・ダリン。彼をはじめ、ほとんどのキャストが60〜70代の実力派です。それぞれの積み重ねてきた“知恵”や“技術”がこの大作戦に結集します。あんがい陽気に、まるでサッカーのゲームのように、金庫奪還に挑む、というコメディタッチの展開が、確かに、ちょっと荒削りな『オーシャンズ11』を観ているようです。

【ぴあ水先案内から】

野村正昭さん(映画評論家)
「……アテにならない政府や悪徳エリートを叩きのめす、ストレス解消に最適」

野村正昭さんの水先案内をもっと見る

(C)2019 CAPITAL INTELECTUAL S.A./KENYA FILMS/MOD Pictures S.L.

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