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BOYSぴあSelection 第42回 杉野遥亮

杉野遥亮 Part1「普通や正解に縛られる必要なんてない」

全2回

PART1

185cmのスマートなスタイル。そして涼やかでシャープな面立ち。20代も半ばを迎え、俳優・杉野遥亮さんはますます大人の雰囲気をまとうようになった。

けれど、話しはじめると屈託がなくて、おしゃべり好き。こちらが驚いてしまうほど真っ正直で、自分を良く見せようという欲がない。

たくさんの可能性を秘めた25歳が、今どんなことを考えているのか。杉野遥亮のリアルを前後編の2回に分けてお届けする。

── 『直ちゃんは小学三年生』、本当に面白かったです。大好きなドラマになりました。

ありがとうございます。そう言ってもらえるとうれしいです。

── 今日杉野さんにお話を聞くために家でいろいろ調べてて。4年前の雑誌なんですけど、家にあったんで持ってきました(と、雑誌を見せる)。

(雑誌をまじまじと見て)若い! ヤバい(照)。デビューして1年目のときか〜。やっぱり顔が違いますね、すごく女の子っぽい(笑)。

── 顔つきってやっぱり内面が表れるものだと思います。デビューして5年が過ぎましたが、自分自身、内面の変化は感じますか。

それは感じます。正直、最初なんて現場でおしゃべりするのが楽しかっただけの時期もありました。どの作品も愛情を込めてやっていたんですけど。演じることを追求するというより、どちらかと言うと人と話したりつながることが好きだったんですよ。

── 意識が変わりはじめたのはいつ頃からですか。

『福岡恋愛白書』で初めての主演、そのあと、初めて連ドラの主演を『スカム』でやらせていただいて。そうやって自分がちょっとずつ作品の中心に寄っていくなかで、作品と向き合う時間がより長くなって、仕事に対する考え方も変化していきました。『スカム』のあとに『さぶ』というドラマでも主演をさせていただいた流れは大きかったです。そこでものをつくる楽しさを覚えたというか。

特に最近は作品に関わっていく中で、ちゃんと本音で向き合うことが増えっていって。それは『教場Ⅱ』がきっかけだったと思います。そこから『アプリで恋する20の条件』、『直ちゃんは小学三年生』、そして『東京怪奇酒』と作品が続いていく中で、自分が何を大切にこの仕事をやっているか見えてくるようになりました。

── 『東京怪奇酒』では本人役で出演します。自分を演じるのは難しかったですか。

これまで何度か自分役を演じる作品はあったんですけど、役名が杉野遥亮というだけで、作品の中に出てくるのは別に僕じゃないというつもりでいます。

その上で他の役との違いを言うと、普段の役作りは台本を読んで受けたインスピレーションに自分を入れていく感覚なんですけど、本人役は自分に寄せてくるイメージですね。たとえば、ふとした仕草や挙動に関しては、その場でナチュラルに出たものをそのまま活かせるので、難しさは特に感じなかったです。

── あくまでリアルな自分ではなく、“『東京怪奇酒』に出ている杉野遥亮”だけど、何気ないリアクションに本人の素っぽい部分が見え隠れしていると。

そうです。ただ、そこにいるのは素の僕ではないっていう。その曖昧なラインは『東京怪奇酒』でも狙えたのかなと思います。

自分の意思を届けることは大事なんだって思いました

── ちなみに心霊話がメインのお話ですが、ホラーは得意ですか。

苦手です(笑)。正直、そっちの世界はまったくわからない。だから、この作品に関しては出演依頼を3回お断りしました。

── それはなぜ?

去年、緊急事態宣言下での自粛期間があって、僕自身、人に対する思いやりだとか、エンタメで何を届けられるだろうとか、そういうことをすごく考えるようになったんです。

たとえば『直ちゃん〜』だったら、小学3年生の頃を思い出して、何か想いを馳せたり、感銘を受けたりしてもらえると思うから、すごく素敵な作品だなと思いました。しかし、『東京怪奇酒』という作品では何を共感してもらえるのか、僕にははじめそれが見えなくて。僕なんかが作品をお断りするなんて言うと偉そうに思われてしまうかもしれないですけど、正直気持ちがついていかないというのがありました。

── そんな戸惑いの中で、最終的にやると決めたのは何が理由だったんですか。

マネージャーさんの熱意に負けました。だから、そこまで言ってくれたマネージャーさんのためにというのが本音なんですけど、やると決めたからには面白いものはつくりたいし。だけど杉野遥亮として心霊スポットで飲酒する行為を肯定するように思われたくないなという部分はあったので、そこはすごく監督と話し合いながら撮影をやらせてもらいました。なので作品にも僕の葛藤がしっかり描かれていると思います。

心霊現象って信じる人もいればまったく信じない人もいて、同じものに対して温度差がすごくあるなって思うんです。僕は霊的なものはただ見えないだけで、存在はしていると信じているし、でも見えないからこそ信じられない人もいるわけで。だから現場で意思疎通を図ろうとしても価値観が人それぞれ違うからどうしていいかわからないことがあったんですね。

僕は霊を信じる人間なので、あまり冒涜するようなことをするのは怖いし。でも、杉野遥亮という役だからこそ、僕はこう思いますということはちゃんと伝えておきたかった。そういう話し合いをいっぱいしたという感じです。

作品づくりを通して、ちゃんと自分の意思をストレートに届けることは相手のためにも自分のためにも大事なんだって学ぶことができたことは、いい経験になりました。

こういう時代だからこそ元気になってもらえる作品を届けたい

── それぞれ価値観が違う人が集まって同じ方向に向かってものをつくること自体、そもそも難儀なことですよね。

難儀なことだなと。こういうご時世だから飲みの場もなくて、どうやってコミュニケーションをとったらいいかわからないとおっしゃる方もいるんですけど、僕はこういう時代だからこそ本音でしゃべることから逃げちゃいけないんだなって、今回すごく思いました。

これは常々思っていることなんですけど、キャストもスタッフもみんなが本気でやって、本音で話をするから、いい作品ができるし、結果的に仲も良くなるんじゃないかなって。

そのためには僕がまず自分の軸を持ってプロとして立つことが重要だと改めて考え直した現場でした。

── そこまで自分の意思を伝えることって珍しいですか。

これまでは監督のオーダーに応えたいという気持ちがすごく強かったというか。だから、どちらかと言うと、自分の思っていることを提示する機会は少なかったかもしれないです。

── あくまで俳優部の一員として役割をまっとうすることに専念していた。

そうですね。俳優部の一員としてという位置付けに重きを置いていた感じがします。それが、今回は主演ということで、長い時間、プロデューサーや監督とお話ができたし、キャストの誰よりも長い時間座組みにいることで見えるものもあったから。その中で、自分だからできることってなんだろうって考えることがすごくありました。

これまでは、どっか遠慮しちゃうところがあったんですよ。だけど、俳優としてやる以上は、少なくとも自分の感性という面では遠慮しちゃいけないなと。もちろん相手が不快にならないように伝え方には気をつけなきゃいけないですけど、自分が思っていることをちゃんと伝えられるようになろうって、今はすごく思っています。

── 自粛期間があって、いろいろ考えたという話が冒頭にありました。コロナ禍によって、エンタメを提供する側の人間として自覚が高まった部分はありますか。

まずは自分がワクワクすること。楽しいっていう想いは大切だと思います。

その上で、相手を思いやるとか、相手のために何ができるとか、そういう考えで動く時代なのかなって。作品を届けるときも、やっぱりその想いがないと。ただの自己満足でやっていても届かない。こういう時期だからこそ、相手に元気になってもらいたいなって気持ちは強くなりました。

だから、さっき『直ちゃん〜』のことを言ってもらえたときはすごくうれしかったです。何か届けられたのかなと思うと、自分はこの仕事をやっていて良かったなと実感します。

ずっと縛られて生きてきた分、これからは正直でいたい

── こういう時代だからこそ、表に出る人間ができることってなんだと思いますか。

僕は正直でいなくちゃいけないと思っています。

── 25歳の誕生日のとき、Twitterにあげていましたよね、「自分に嘘をつかない」って。 でも正直に生きるのって怖いですよね。

確かに、自分に正直に生きることはすごく難しいと思います。僕も気付かぬうちに嘘をついてしまうかもしれない。でも、注意してくれる人がいれば、そこからまた直していけばいいと思います。だから、僕はやっぱり自分に正直に、あとは思いやりを持って、これからもやっていきたい。

私利私欲とか権力とか知名度とかお金とか、そういうもののためにやっているような時代じゃもうなくなったって勝手に僕は思っています。

── じゃあ、今は有名になりたいとか売れたいがいちばんのモチベーションではない?

もちろんもっといろんな人に知られたいとか、もっと有名になりたいとか、お金もうちょっとほしいなとかはありますよ?(と、すぐ近くにいたマネージャーさんを見る)

── ちらっと見た(笑)。

全然ありますもん(笑)。でもそこがいちばんではない。お金とか知名度とかは、あとからついてくるもんだなって思っています。それよりも、この1年、自分が明日死ぬかもしれないっていうことが前よりもリアルになったからこそ、毎日自分が楽しいことをやって、行き着くところに行き着くしかないなって。

── 確かにそう考える人は増えてきた印象を受けます。

今って本当に個の時代になっていますよね。だからもう誰かが決めた普通とか正解とかに縛られる必要なんてまったくないじゃんと思っていて。人それぞれなんだから、自分を無理やり正解とか普通に当てはめる必要なんて本当にない。

こう言うことで、もしかしたら僕は別の誰かを居心地悪くさせているのかもしれないけど、僕自身も自分を正解とか普通に押し込むことで苦しんだりしてきたから、自分のためにも言っています。

── それはつまり普通であろうとした時期があったということですか。

学生時代はほとんどそうでした。子どもの頃から先生に褒められたい気持ちが強く、褒めてもらえることってなんだろうって思っちゃうんですよ。それで先生がいいと言ってくれるものをやったりして。そうなると、もう先生のための自分になっているじゃないですか。

本当は、もっと自分らしく生きて、自分のことをいいと言ってくれる人といればいいだけの話だったのに、いつからかそういう親とか先生に良い子と思われたい自分になっていました。

── お利口さんの優等生というか。

お利口さんの優等生でした。だけどそれが息苦しくなって、高校生の頃は学校とかもサボっていましたし。なんでこんな規則的な時間割の中で生きていかなくちゃいけないんだって、ずっと思っていました。今はそんなふうにいろんなことのあり方に疑問を持つ人が増えているのかなって気はします。

── 俳優はひとりの表現者。自分が何を考えているかが表現に出ますし、ちゃんと個人としての軸を持っていないと、あっという間に消費されちゃいますもんね。

そう思います。だから、ちゃんとなんでも自分で判断したい。ネットの情報を鵜呑みにするんじゃなくて、自分はその人を見てどう思うか、それだけでいいと思う。

作品なんかもそうですよね。ひとつの作品に対していいって言う人もいれば、めっちゃ最悪と思う人がいてもいいと思う。それがたとえどんなに評価されている作品でも。もちろん評価されているものをノーと言うのって勇気のいることだけど。

僕らはみんな人それぞれ。その人その人の考えがあっていい。普通も正解も何もない。生き方だって考え方だって個々でいいじゃんって、今すごく思っています。

PART2ではより杉野さんの内面にフォーカスし、25歳の等身大の人間性にせまります。3月上旬公開予定、写真満載、サイン入りチェキプレゼントありでお届け。お楽しみに!

撮影/奥田耕平、取材・文/横川良明、企画・構成/藤坂美樹、ヘアメイク/Emiy、スタイリング/作山直紀

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