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マルモイ ことばあつめ

20/7/8(水)

『マルモイ ことばあつめ』 (C)2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

ここ数年、韓国では近現代史から着想を得た映画が次々と作られ、しかも多くの作品が大ヒットを記録しています。たとえば軍が市民に銃を向けた光州事件をタクシー運転手の目線でとらえた『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年)があげられます。また同年の公開で、大学生が獄中死したことをきっかけに盛り上がっていく韓国民主化闘争の実話を描いた『1987、ある闘いの真実』も力強い作品でした。 本作もその流れに沿った作品ということができるでしょう。この映画には自国の歴史を若い世代にきちんと伝えたいという作り手たちの熱い思いがみなぎっています。しかも本作の場合、主人公はごく普通の人々。1940年代という日本統治下の朝鮮半島にあって、母国語である朝鮮語(韓国語)を守るためには各地の方言を集め朝鮮語の辞書を作ることが欠かせないと考えた人々が命を懸けた闘いだったのです。 重いテーマにもかかわらず最後まで集中して見ることができたのは、観客に楽しんでもらおうという工夫が随所に施されているからでしょう。たとえば主人公のパンスが息子の授業料に充てるため辞書作りのリーダーであるジョンファンのバッグを盗みます。裕福で教養もある活動家と無学のコソ泥。この絶対噛み合いそうもない2人の出会いを最初に見せたのが決まりました。あとは2人がどのように対立しつつ、やがて和解していくかをじっくり楽しめばいいのです。 以下のシーンは涙無くしては見られませんでした。パンスが必死に覚えた朝鮮語を使い街中の看板を一つ一つ読み上げながら歩く場面です。ただの棒線や曲線の集まりにしか見えなかった文字がそれぞれ意味を持ちパンスの世界がどんどん広がっていく瞬間を感動的に描いています。 少数民族への圧政など様々な理由から今世界各地で言語が失われています。映画で語られる言葉の豊穣さとそれを守ろうと闘った人々の思いが問いかけるものは大きいと言えるでしょう。

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