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第2次緊急事態宣言の影響は限定的? 国内アニメ作品が牽引する映画興行

リアルサウンド

21/1/14(木) 18:00

 先週末の動員ランキングは、『銀魂 THE FINAL』が土日2日間で動員20万4000人、興収2億8700万円を記録して初登場1位。遂に、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の観客動員連続1位記録が12週で途絶えることとなった。もっとも、興収ではIMAX興行も好調な『鬼滅の刃』が興収2億9900万円と僅差ではあるがリードしていて、週末の興収連続1位記録は13週と伸ばしている。

 『銀魂 THE FINAL』で注目すべきなのは、7年半前に公開された前作『劇場版 銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』(「完結篇じゃなかったの?」というツッコミは一先ずおいておくとして)からのフランチャイズとしての成長だ。2013年7月に公開されて最終興収17億円をあげた『劇場版 銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』の公開初週土日2日間の成績は、動員22万1469人、興収2億8185万9900円。この数字だけだと今回の『銀魂 THE FINAL』とほとんど変わらないが、当時はまだ新作の公開が土曜日だった時代。今作は初日から1月11日(月・祝)までの4日間の累計で、動員38万4000人、興収5億3100万円をあげていて、最終興収で前作を超えるのも時間の問題。そして何よりも驚くべきは、この数字を4都県の映画館で午後8時以降の営業を自粛している緊急事態宣言下で叩き出したことだ。

 ちなみに、『鬼滅の刃』の興収は前週の約46%という大幅ダウンを喫しているが、前週が正月3が日だったこと、公開13週目とさすがに息切れが出てくる時期であることを踏まえると、こちらも緊急事態宣言による決定的な影響は受けていないことがわかる。13日(水)には緊急事態宣言の及ぶ地域が全国11都府県と拡大されたので、今週末もさらなる目減りは予想されるものの、現時点における映画興行への影響は「限定的」とすることが可能だろう。

 もっとも、トップ10のうち6作品が(CG作品も含む)国内アニメーション作品に占拠されたランキングを見れば明らかなように、数字への影響は限定的だとしても、公開されている作品のラインナップ、及び客層には明らかに偏りがあり、これは言うまでもなく昨年来のコロナウイルスのパンデミックが及ぼした影響に他ならない。もう何度も本稿で伝えてきたように、ハリウッド・メジャーの作品が極端に少なく(先週末のランキングには1作品もなし)、高年齢層向けの作品も強いて挙げるなら8位に初登場した『おとなの事情 スマホをのぞいたら』くらい。前者は配給サイドの問題。後者はそもそも高年齢層の観客の多くが映画館に戻ってきていないことが原因だ。

 1月9日(土)には、1月23日公開予定の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の深夜0時からの世界最速上映の中止がアナウンスされた。緊急事態宣言下で午後8時以降の営業の自粛が迫られている(というのも変な日本語だが、変な状況なのだから仕方がない)のだから当然と言えば当然だが、懸念していた公開延期のアナウンスは今のところない。また、同じく1月9日に各興行会社に通達(相変わらず後手後手だ)された政府からの要請項目の中には、多くの関係者が予想していた「座席の50%制限販売」の要請が入っていなかった。先週末の『銀魂 THE FINAL』の健闘、そして「座席の50%制限販売」の要請がなかったことは、2021年の本命、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の(昨年の公開延期を経ての)予定通りの公開を大いに後押ししたのではないだろうか。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「集英社新書プラス」「MOVIE WALKER PRESS」「メルカリマガジン」「キネマ旬報」「装苑」「GLOW」などで批評やコラムやインタビュー企画を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。最新刊『2010s』(新潮社)発売中。Twitter

■公開情報
『銀魂 THE FINAL』
全国公開中
監督・脚本:宮脇千鶴
監修:藤田陽一
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)空知英秋/劇場版銀魂製作委員会
公式サイト:gintamamovie.jp
公式Twitter:@gintamamovie

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