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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

クリストバル・レオン

実在する宗教コロニーもとにしたアニメ映画の監督来日、チリの政治的状況にも言及

ナタリー

19/11/4(月) 21:43

「The Wolf House」を手がけたクリストバル・レオンによるトークショーが本日11月4日、北海道・新千歳空港ターミナルビルにて開催された第6回新千歳空港国際アニメーション映画祭で行われた。

ホアキン・コシーニャも共同監督を務めた本作は、ドイツの宗教的狂信者の一派から逃れてチリ南部の家に逃げ込んだマリアが主人公の物語。2匹の豚がだんだんと人間へ変身していき、家の中が悪夢のような世界に変貌を遂げていくさまが絵やパペットを用いて映された。

「Lucia」「Luis」などの短編を制作してきたレオンは、本作が実話にもとづいたものだと述べる。続けて、彼女が逃げ出してきたコロニーはチリ南部にドイツ人のパウル・シェーファー・シュナイダーが作った“コロニア・ディグニダ(尊厳のコロニー)”をイメージしたものだと説明。「皮肉な名前です。シェーファーは小児性愛者で児童虐待をしており、殺人を犯してもいたからです。規則に反した人は拷問にかけられたり、罰を受けました。強制収容所のような形です」と話し、「コロニーは1961年に作られ、1966年くらいには中の人が脱走し始めました。でも内部の残虐行為を発信しても政府は耳を傾けなかったんです」と語る。また「1973年の軍事クーデター後にはコロニーが政権とつながり、政府から送り込まれた人々を拷問・殺害したんです」と自国の歴史に触れ、「これはチリの重要な負の歴史なので、この映画を作ろうと思ったんです」と制作の経緯を明かした。

コロニーでは宣伝のために写真集や映画を制作していたと知ったレオン。「そういう宣伝物を僕たちが作っているというコンセプトで制作を始めました。シェーファーがアニメ映画やウォルト・ディズニー風のものを作ったらと考えたんです」と振り返った。「映画で見せたいイメージを描き出して、最終的に25~30枚ほどの絵コンテができました。ただ劇中のアニメーションは普通の動きや生活を表すものではなく、メタモルフォーゼを表現するものとして使おうと」と当時を回想。途中から徐々に変わっていったストーリーに軸を作るため「普通の人形は使わない」「カメラは常に動くように」など十戒のようなルールを作ったという。

5年の歳月を費やした制作はチリ以外にも、アルゼンチンやオランダなどさまざまな場所で行われている。絵画や彫刻などを行うビジュアルアーティストであるレオンとコシーニャは、レジデントアーティストとして各地のギャラリーや美術館でスタジオセットを作り、エキシビションを行いながら撮影を進めた。レオンは「チリ国立美術館では、スタジオセットの窓から来館者が制作風景をのぞけるようにしました。すでにアニメ化したシーンも見せましたね」と当時の環境を説明。「制作中は僕たちは汚れていて現場も混沌としていましたが、それをオーディエンスにも共有したかった。完成品だけを見せるのではなくて途中のプロセスを展示しようと思ったんです。この中でワークショップやコンサートを行ったりもしましたね。また、このようなシステムを取り入れたことで5年間スタジオ代を払わなくて済んだんです」と語った。さらに作品の一部をアートワークとして販売したことも明かす。

また、短編「Lucia」「Luis」と本作では家の中で物語が展開していくことを受け、「閉鎖的な場所で人々が不満を募らせているようなシーンが共通しているが、これはチリの環境と重なるものがあるのか?」という質問が投げかけられた。対するレオンは「ホアキンと僕は抑圧的な政治的環境や社会の中で育ってきました。それが作品の中に反映されていると思う」と述懐し、チリ国内での反応については「アート系の映画館で5カ月上映されて話題にもなりました。なので、人々に通じるところはすごくあったのでしょう」と語った。

「チリは世界の中でも社会的な不公平さが存在している国の1つです。数週間前にはチリの人たちが改善を求めてデモを起こしました。平等で尊厳のある生活をさせてほしいと思っているんです」と現在の情勢を説明し、コシーニャもゴム弾で撃たれたと話す。本作ではラテンアメリカ版、チリ版のおとぎ話を作りたかったのだと言い、「ラテンアメリカ版ならワイルドでなくてはいけない。さらに人種差別や植民地の話、さらに政治的恐怖などがなければならないんです。それが現実だから」と真剣なまなざしを観客に向けていた。

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