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和田彩花の「アートに夢中!」

ブダペスト―ヨーロッパとハンガリーの美術400年

月2回連載

第32回

20/1/20(月)

現在、国立新美術館で開催中の『ブダペスト国立西洋美術館 & ハンガリー・ナショナル・ギャラリー所蔵 ブダペスト―ヨーロッパとハンガリーの美術400年』(3月16日まで)には、日本とハンガリーの外交関係開設150周年を記念し、ハンガリー最大の美術館であるブダペスト国立西洋美術館とハンガリー・ナショナル・ギャラリーのコレクションが集結。ルネサンスから20世紀初頭まで、約400年にわたるヨーロッパとハンガリーの絵画、素描、彫刻の名品130点が一堂に会している。クラーナハ、ティツィアーノ、エル・グレコ、ルノワール、モネなど巨匠たちの作品に加えて、日本では目にする機会の少ない19・20世紀ハンガリーの作家たちの名作も、多数出品されている同展。和田さんから見たハンガリー美術とは?

美術史を通覧

シニェイ・メルシェ・パール《紫のドレスの婦人》1874年 ブダペスト、ハンガリー・ナショナル・ギャラリー © Museum of Fine Arts, Budapest – Hungarian National Gallery, 2019

今回の展覧会は、ルネサンスから20世紀初頭まで、約400年のヨーロッパとハンガリーの美術の歴史を通覧することができる、見応えたっぷりの展覧会でした。前半がルネサンスから18世紀、後半が19世紀・20世紀初頭というふうに分かれて展示されていて、私はやはり、自分が接している作家や作品、そして年代の近い後半の展示の方にとても興味を持ちました。

絵と一体になってしまいそうな感覚に

ムンカーチ・ミハーイ《ほこりっぽい道 Ⅱ》1874年以降 ブダペスト、ハンガリー・ナショナル・ギャラリー © Museum of Fine Arts, Budapest – Hungarian National Gallery, 2019

まずとても良かった作品が、ハンガリー出身の画家、ムンカーチ・ミハーイの《ほこりっぽい道 Ⅱ》ですね。見た時にまず思ったのが、モネっぽいということ。何が似ているんだろうと考えたら、空気感かなと。でもモネはどちらかというと、水分を含んだような空気感な上に、もっと遠近感をつけると思うんです。対してこの絵は、タイトルに「ほこりっぽい」とあるように、土煙りやまさしくほこりが混じったような場面が描かれ、遠近感があんまり感じられないんですよね。そこも好きだなって思いました。

それにこの絵は、その土が混じったような空気と、道路や周りの景色、空までもが一体のように描かれ、境界線がないように見えます。特に空は全面的に色が塗られてはいるものの、大気なのか雲なのか霧なのか土ぼこりなのかもわかりません。やっぱり境目はよくわからないし、何が描かれているかというのも曖昧なのに、その空気感っていうのはすごく感じられるんですよね。

そうやってじっくりと絵を見ていると、自分が絵の中の土の上に立って、空気を感じて、景色をぼんやりと見ているような感覚になってしまうっていうのが、この絵の面白さだなと思いました。

色がすごくきれい!

メドニャーンスキ・ラースロー《アルプスの風景》または《ラックス山/タトラの風景》 1890年代前半 ブダペスト、ハンガリー・ナショナル・ギャラリー © Museum of Fine Arts, Budapest – Hungarian National Gallery, 2019

この作品は何より色がきれいでした! これまで、これくらいの時代の人が描いた山の風景の中で、こんなに空気が澄み渡るような感じを直に感じる絵というのは、あまりなかったのですが、この作品からはマイナスイオンを感じましたね(笑)。

でもこの作品、全然写実的ではないんですよね。家なんかもただ絵具がぼんぼんっと置かれていて、盛り上がっている。それは絵具の塊なんだけど、それでもきちんと家になっている。絵筆だけじゃなく、ペインティング・ナイフも使っていたということなので、少々荒々しい感じ。だから不思議なんですけど、でもとにかく空の青がきれい! きちんと青の濃淡がつけられているのもいいですね。

やっぱり、単純に色のきれいさを感じられるのはとても嬉しいですね。だって絵画ですから(笑)、色が綺麗って思えるのも重要だと思うんです。もちろん絵画の楽しみはそれだけではありませんが。

奇妙な男女と波紋

レオ・プッツ《牧歌》1890年頃 ブダペスト国立西洋美術館 © Museum of Fine Arts, Budapest – Hungarian National Gallery, 2019

実は今回の展覧会の中で一番好きだった作品が、レオ・プッツの《牧歌》です。一見すると、フランス的な絵画だと思う人もいるかもしれません。印象主義っぽいとか。もっと美術史の流れで細かく考えていくと、どちらかというとポスト印象主義的な目に見えない世界とか、そちらに近づいていると思います。

ボートに乗っている姿なんかは、印象主義でまさにたくさん描かれている情景なので、プッツがマネやルノワールから影響を受けたというのも納得です。

でもよくよく見ていくと、奇妙なところがいくつもあることに気づかされます。まずは笛を吹く男性。女性と一緒にボートに乗っているのに、全然楽しそうじゃないんです。どちらかというと、女性を監視するようにまじまじと見ているような、でも実は見ておらず遠くを見ているような……なんだかとても怖い目をしています。いったいこの男女はどういった関係なのでしょうか。

次に女性の指。水を掻いているんですが、影が影のようじゃなくて、下から黒さが浮かび上がってくるよう。下から手を引っぱられそうにも見えて、そういったところもとても面白いって思いました。

それに女性のドレスの描かれ方、全体的な影の入り方にも奇妙なところがあって、でもそれがまたこの絵の魅力だと思いますね。

そして波紋というか、水面に反射する光も明らかに変ですよね。でもこの表現がすごい素敵なんです!

全体がほとんどマヨネーズみたいな色(笑)。黄色の色調なんですが、実は細かくいろんな色が混ざりあって、決して単調に波紋を生み出しているわけではなくて、変化しながら、しかもうねりを見せながら、たっぷり絵具をつけて描かれている。この表現がとても好きです!それにおそらく皆さんが思っているよりもすごく厚塗りなので、ぜひ生で見て確認してほしいですね。

不可思議な色の具合などで、内面の世界に深く入っていくような、鑑賞者を絵の中に引き込むような力がある絵だと思います。決して単純に見ることができない作品です。

デザイン化された色づかい

リップル=ローナイ・ヨージェフ《赤ワインを飲む私の父とピアチェク伯父さん》1907年 ブダペスト、ハンガリー・ナショナル・ギャラリー © Museum of Fine Arts, Budapest – Hungarian National Gallery, 2019

そして最後に紹介するこの作品も、色に惹かれました。描かれている男性二人の雰囲気はちょっと暗いんですが、色は鮮やかです。

絵具はどちらかというと面でドンドンドンっと置かれているようで、造形的にもとてもデザイン的。輪郭線もしっかりとっていますが、忠実な輪郭線というよりも、やっぱりデザイン化されていて、効果的に使われているような気がしました。

そういったところは、さっきのメドニャーンスキ・ラースローの外の澄んだ色を描くのとはまた違う表現ですし、爽快な空気感もありません。どちらかというと、平面的で室内の息苦しい空気感が感じられます。それは手前の男性の憂鬱な表情であったり、明らかに絵とマッチしない蛍光黄色の背景からもそう感じるのかもしれません。特に手前の男性を見ていると、この作品も内面世界に連れて行かれるような、そんな力を感じてしまいました。

ハンガリー美術を知る最高の機会!

約400年もの壮大な美術の歴史を総覧することのできる今回の展覧会。美術史の流れに沿って、ハンガリー美術が紹介されていたので、やはりそこは自分が接しているものと近くて見やすかったです。印象派と同時代の画家たちが、印象派とどう違うのか、どういう影響を受けているのか、ということも見渡すことができました。

そして、ハンガリーだからこういう美術だ、という見せ方というよりも、大きくヨーロッパの美術史の流れも一緒に紹介することで、ハンガリーのブダペストという場所でどのような絵画が発展したのか、近隣諸国からどのような影響を受けたのかということをみることができたのも、とても面白かったですね。

いままであまり触れてくることがなかったハンガリー美術。今回、こんなにも魅力的な作家、作品があることを知ることができて、また一つ勉強になりました。


構成・文:糸瀬ふみ 撮影(和田彩花):源賀津己

プロフィール

和田 彩花

1994年生まれ。群馬県出身。2004年「ハロプロエッグオーディション2004」に合格し、ハロプロエッグのメンバーに。2010年、スマイレージのメンバーとしてメジャーデビュー。同年に「第52回輝く!日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2015年よりグループ名をアンジュルムと改め、新たにスタートし、テレビ、ライブ、舞台などで幅広く活動。ハロー!プロジェクト全体のリーダーも務めた後、2019年6月18日をもってアンジュルムおよびハロー!プロジェクトを卒業。一方で、現在大学院で美術を学ぶなどアートへの関心が高く、自身がパーソナリティを勤める「和田彩花のビジュルム」(東海ラジオ)などでアートに関する情報を発信している。

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