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花澤香菜が持つ、シンガーとしての特異性は? 多彩なサウンドデザインと呼応する歌声の存在感

リアルサウンド

20/1/2(木) 8:00

 本日1月2日にオンエアされる『オダイバ!!超次元音楽祭』(フジテレビ系)。アニソンアーティストや声優など、いわゆる“2次元”の世界で活躍する面々や、人気の2.5次元ミュージカルの俳優陣らが登場する音楽番組で、その出演者の中でも大きな話題を呼んでいる1人が声優・花澤香菜だ。これまで数多くの出演アニメのキャラクターソングを歌い、また2012年からはソロアーティストとしても活動している彼女だが、番組公式サイトによると、地上波の音楽番組でその歌を披露するのはレアケースとのこと。それだけに高い注目を集めているという。

参考:花澤香菜、アーティストとしての新たな旅立ち エネルギーに満ちたバースデースペシャルライブ

 事実、花澤の音楽活動に対する注目度と評価は高い。まずキャラクターソングのシンガーとしての彼女に目を向けてみると、2011年に『〈物語〉シリーズ』の千石撫子名義で発表した「恋愛サーキュレーション」は今なおアニソンシーンのアンセムのひとつに数えられ、2013年にはアニメ『ロウきゅーぶ!』の主演声優陣5人で結成されたユニット・RO-KYU-BU!の一員としてさいたまスーパーアリーナのステージを踏むなど、アニメファン、声優ファンの厚い支持を集めている。

 そして“ソロアーティスト・花澤香菜”はアニメファン、声優ファンはもちろん、音楽ファンをも魅了する。デビューから2017年頃まで、北川勝利(ROUND TABLE)をメインソングライターに迎えつつ、カジヒデキ、ミト(クラムボン)、西寺郷太&奥田健介(NONA REEVES)、やくしまるえつこ&山口元輝(相対性理論)、空気公団、片寄明人(GREAT3 / Chocolat & Akito)、秦基博など国内の作家陣はもちろん、ミック・ハックネル(Simply Red)やSwing Out Sisterといった海外アーティストともタッグを結成。ウェルメイドなポップミュージックの数々を発表してきた。

 さらに2018年からは槇原敬之、真島昌利(ザ・クロマニヨンズ / ましまろ)、岡村靖幸、大貫妙子、山内総一郎(フジファブリック)、橋本絵莉子(ex. チャットモンチー)、浜野謙太(在日ファンク)など、曰く「もともと聴いてきた人たち、好きな方たち」(参考:花澤香菜、区切りの年で打ち出した今とこれからの表現「自分が思ってることを全部出してる」)を作家陣に招くようになり、2019年には彼らとともにロック色の強いアルバム『ココベース』をリリースしている。

 キャラクターソング、ソロ名義のものを問わず、花澤楽曲を決定的に特徴づけるものはその歌声にある。声の仕事である声優の楽曲だけに「声が特徴的」なのは当たり前といえば当たり前だが、それでも「恋愛サーキュレーション」の冒頭〈せーのっ〉のワンワードだけで多くのアニメファン、声優ファンを虜にしたウィスパーボイスに代表される、優しくスウィートな歌声は彼女のソロ活動においても強力な武器になっている。

 2013年の1stアルバム『claire』は北川の真骨頂ともいうべき“ポスト渋谷系”的な仕上がりになり、2014年の2ndアルバム『25』はギターポップ色、ネオアコ色を強めた一作に。ジャジーな楽曲を擁する2015年の3rdアルバム『Blue Avenue』は「ニューヨーク」をコンセプトに制作され、ミック・ハックネルを迎えた2017年の4thアルバム『Opportunity』では、まさにUKロック的アプローチが採用されている。そして5thアルバム『ココベース』がロックアルバムであることは前述の通り。ソロ名義の花澤はとかく「グッドメロディとスムーズなアレンジが印象的な良質な楽曲を歌うアーティスト」と評価されるが、実はそのサウンドデザインは時期によって大きく異なっている。

 それでもそのすべてが「グッドメロディとスムーズなアレンジで、かつ花澤一流のポップス・ロック」に聞こえるのはなぜか?

 それはやはり「そこにボーカリスト・花澤香菜がいるから」だろう。実際、先に参照した『ココベース』発売時のインタビューで花澤はデビューから『Opportunity』までのプロジェクトにおいて「私の声を活かす曲を作り続けてきていた」という。そしてその「声が活かされている」のは過去作とは肌合いや制作方法が異なる『ココベース』でも同じこと。槇原敬之、ザ・クロマニヨンズ、岡村靖幸、フジファブリック、在日ファンクなどなど、指向するジャンルはバラバラで、しかもそれぞれに強烈に個性的な作家たちの楽曲群が1枚のCDに美しくパッケージされている。これは7年間にわたって自身の声を活かすレコーディングを続けてきた彼女がそのスキルを発揮して、彼らのリリックとメロディに呼応してみせているからだろう。

 「優しくスウィート」「ウィスパーボイス」というと儚げな歌声をイメージする読者もいるかもしれない。しかし、花澤のそれは単にか弱いだけではない。彼女はこれまでにRO-KYU-BU!でのさいたまスーパーアリーナ公演や、ソロアーティストとしての日本武道館公演など、何度となくアリーナクラスの大会場いっぱいにその声を響かせてみせている。そのありようは紛れもなく「ライブアーティスト」だ。

 果たして今夜、花澤がどんな曲を歌うのかはわからない。しかし、これを機会にぜひとも彼女が名うてのクリエイターたちと作り上げた上質・上品な楽曲、そしてそのボーカリゼーションに耳を傾けてみてほしい。(成松哲)

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