“マブリー”こと、私たちのマ・ドンソク兄貴が、今度はヤクザの親分として帰ってキターーー！！ 連続無差別殺人事件が巷を騒がせる韓国。ある夜、殺人鬼が目を付けたターゲットは、よりによって泣く子も黙るヤクザの組長だった──。サスペンス大得意の韓国が今回生み出したのは、逃げる殺人鬼、そしてそれを追うヤクザの組長と刑事による三つ巴の攻防戦。出し抜き出し抜かれ、先の読めない展開に翻弄される。 カーチェイスも大通りを舞台とした大規模なものではなく、狭い路地裏で展開されたことで、より新鮮でよりスリリングに。アクションよりもサスペンスが色濃いこの韓国ノワールは早々にハリウッドリメイクが決まったらしいが、韓国映画ならではの魅力がたくさん詰まった本作こそで完成形だと思う（観てみたいけど）。 殺人鬼を追い詰める物語でありながら、善悪の垣根をひょいと飛び越えてやってきた本作。「悪を懲らしめる正義感」なんてものは恐らく刑事にも組長にも無くて、あるのはただ“執念”のみ。清濁併せ吞んだ喰えない漢たちの共同作戦は胸アツだ。 タイトル『悪人伝』の「伝」には「やりかた・方法」という意味もある。確かに、この映画は“悪人”とされる彼らの「やりかた」の記でもある。