第33回東京国際映画祭「TOKYOプレミア2020」部門に出品された「ゾッキ」が本日11月8日、東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズで上映。Q&Aに監督の竹中直人、山田孝之、齊藤工、キャストの松井玲奈、森優作、松田龍平、原作者の大橋裕之、脚本を担当した倉持裕が登壇した。

本作はマンガ家・大橋の初期短編集のエピソードを多数織り交ぜて実写化したもの。スキンヘッドかつ白塗りの役で竹中から指名を受けた松井は「人生なんでも挑戦だなと思ってやらせていただきました」と振り返り、「すごく寒い中での撮影で、肌が出ているところが多かったので竹中さんが『暖かくして』と。特殊メイクをしたので、顔の型を取るのに3～4時間かかりましたが、それも心配してケアしてくださいました」と竹中の心配りに感謝した。竹中は彼女を選んだ理由を「とてもお美しく、その中に不思議な匂いがするというか……その空気は松井さんしか出せないだろうと思ったんです」と明かす。

齊藤は森を「大橋先生のイズムを持ってらっしゃる方。カメラの前に立つだけで『ゾッキ』の世界を成立させられる稀有な俳優さんです」「誇張した自分を表現の道筋にせず、地に足が付いたような“日常”を生み出せる方」と絶賛。恐縮しきっていた森は「齊藤監督は本当に丁寧に、最後まで寄り添いながら物作りをされる方。なので、自分ができることを一生懸命やりました」と思いを口にする。

山田との仕事を「刺激のある楽しい現場でした」と回想したのは松田。「山田くんは現場で終始ニヤニヤしていて、その顔を見るだけで楽しくなっちゃう感じ。僕に対してはニヤニヤするだけなのに、ほかの役者さんには熱い思いをぶつけていました。でもそれが彼のやり方なんだなって」と山田を見やる。それを受けた山田は「今回が長編初監督作なので、モニターに松田龍平が映っているとうれしくて、ずっと見ていたいなと。……ほかの方々はそれほどでもないので『やるんだよ！』と厳しく演出させていただきました」と冗談を飛ばし、会場からは笑い声が上がった。

倉持は脚本執筆を「独立した作品をつなげるのは難しくスリリングでしたね」と振り返り、続けて「ある作品のセリフがほかの作品のテーマになったり、ある作品が隣の作品の批評のようになっていく。計算せずに、テーマが通底したのが面白かったです」と話す。大橋も「脚本の第1稿をいただいたらバラバラの短編マンガがつながっていたので、冷静に見れなかったんです。『この話がここでこう来たんだ』という驚きがあって」と当時の心境を吐露。「あと2～3回観たら冷静に観れるようになると思います。すごく好きな映画です」「キャスティングもばっちりでした」と述べた。

またイベント中盤には大橋の出身地で、本作のロケ地となった愛知・蒲郡の市長・鈴木寿明も登壇。「蒲郡の魅力を映像を通して引き出していただきました。お弁当や炊き出しをしてお手伝いしまして、幸せを感じました」と述懐した。最後には竹中が、2018年に舞台「火星の二人」で共演した前野朋哉の楽屋で原作に出会ったという経緯を話し、「広げたらとても感動してしまって……。大橋さんのマンガの切なさ、不思議さ、でたらめさに震えるような思いだったんですね。これを絶対映画にしたいと思って、これが2年後に形になったのはなんか……」と感慨深げ。しかし突然高い声色に変え「本気で夢を持っていればちゃんと叶うんだなって！」と竹中らしく喜びを表現した。

「ゾッキ」は2021年春に全国で公開。本作には吉岡里帆、鈴木福、満島真之介、柳ゆり菜、南沙良、安藤政信、ピエール瀧、九条ジョー（コウテイ）、木竜麻生、倖田來未、竹原ピストル、潤浩、渡辺佑太朗、國村隼が参加するほか、石坂浩二も特別出演する。

(c)2020「ゾッキ」製作委員会