若者の視点も加えることで、老人だけではない現代社会全体の物語に

今回はまず、今月ようやく公開できた『チア・アップ！』から。この作品は、元々4月に公開が予定されていましたが、緊急事態宣言による映画館の休業を経て、ようやくお目見えになりました。

主人公はダイアン・キートンが演じるマーサ。彼女は余生をのんびりすごそうと、シニアが集まる町に引っ越してきました。ところが、彼女が思い描いたのんびりライフはどこへやら。お隣りさんのシェリルは世話焼きの達人で、ズカズカと私生活に踏み込んできます。

シェリルに根掘り葉掘り聞かれるうちに、彼女はつい、若い頃はチアリーダーになりたかった、と口にしてしまい、経験者のマーサをリーダーにチアリーディングクラブを作ることになってしまいます。もちろん、皆体が思うように動かない女性ばかりで、チアどころかダンスもうまくできません。そこで、彼女らは高校でチアをやっているクロエをコーチに、特訓をすることに……。

年を重ねて、年輪が刻まれた女性たちが、若い人の教えを受けながら人生の楽しみを取り戻していくコメディです。いやー、ダイアン・キートンかわいい！　彼女を見ていると、本当に年を重ねるっていいなー、って思ってしまいます。

それに、この作品ですごく良いと思えるのは、クロエの存在。クロエは自分が所属するクラブの同調圧力に嫌気を感じていて、自分の練習よりもご老人たちのコーチを優先します。自分が人とは違う考え方を持っていることをキチンと表現できる若者が出てくることで、物語が老人の話だけではなく現代社会の話になっています。

クロエがマーサたちをけっしてバカにせず、リスペクトをしながら教えているところも共感できます。すごく分かりやすいストーリーだし、笑いも適度、誰もが安心して観られる作品です。

観る人は選ぶ、でも自分のもつ“壁”に気づかせてくれる作品

次は『タッチ・ミー・ノット～ローラと秘密のカウンセリング』。これはちょっと観る人を選ぶかなー、という個性的な作品。

父親の介護が生活の大半を占めてしまっているローラは、人から触れられることを極度に嫌う精神的な障がいを持っています。ある日、彼女は病院でたまたま患者同士がカウンセリングをしているところを目撃。彼らは互いのからだに触れあって語りあうことで、自分を見つめ直していていました。その中にいたトーマスに惹かれた彼女は、彼の誘いで秘密クラブへ……。

もう、どう表現していいのか分からない映画。これを観ると、自分自身の性生活はもちろんですが、身体的、精神的な障がいを持つ人たちを含めた全ての性生活に対して、偏見を持つか持たないかを試されている気分になるんですよ。

性描写は露骨というより丸見えですし、これ本当に上映して大丈夫なの？という心配すらしちゃうシーンもあるので、観る人は確実に選びます（笑）。でも、観た後は、自分自身が何かしらの壁を作っていたことに気づかされると思うので、ご興味持っていただけた大人の方はゼヒ。

※次回は7月31日（金）に更新予定です！

取材・文：よしひろまさみち／撮影：源賀津己
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プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が、2019年9月に講談社より発売された。

『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』

講談社　1400円（税別）
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