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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

『ポリティカル・マザー ザ・コレオグラファーズ・カット』 (C)高木由利子

立川直樹のエンタテインメント探偵

度肝を抜かれたパフォーマンス『ポリティカル・マザー ザ・コレオグラファーズ・カット』、美輪明宏が演出・美術・主演した『毛皮のマリー』

隔週水曜

第23回

19/5/1(水)

 上田竜也とホフェッシュ・シュクター・カンパニーが大きい文字で、少し級数が小さめの文字で中村達也とTOKIEの名前が[出演]としてクレジットされ、「総勢40名を超えるアーティストが放つ圧倒的エネルギー/音楽、ダンス、アクティングのすべてが融合した光と闇、轟音と静寂が交錯する最強のパフォーマンス」という『ポリティカル・マザー ザ・コレオグラファーズ・カット』のモノクロのチラシを目にした時から軽い胸騒ぎはしていた。

 でも、4月7日にオーチャードホールで目撃したパフォーマンスには度肝を抜かれた。オハッド・ナハリンやインバル・ピント&アブシャロム・ポラックらを輩出したことで知られる名門カンパニー、バットシェバ舞踊団からダンサーとしてのキャリアをスタートさせたイスラエル出身のホフェッシュ・シェクターは2010年に上演した後、2011年にさらなる進化系として発表したこの作品について「数ある演目の中でも、間違いなく、私が最も愛する作品です。ワイルドかつラウドで、まるでエネルギーが爆発するかのような、ロックな体験をもたらしてくれる本作は、ロンドン、パリ、ベルリン、香港等の都市で、熱いオーディエンスの歓声に包まれて上演されてきました。ロック・コンサート用の会場でも、いわゆる通常の劇場でも、どちらでも上演されてきましたが、どんな会場も我々の勢いを止めることはできず、そこがどこであれ、ロック・コンサートのような空気に包まれました。……これは音楽、自由、身体の表現を謳歌した作品です。東京のアーティストや観客の皆様と、この特別な体験を共有できることを、心から楽しみにしています」(『ポリティカル・マザー ザ・コレオグラファーズ・カット』コメントペーパーより)とコメントしているが、4層に作られた舞台での展開は、緻密な計算と偶然性が絡みあって予想も想像もつかないものが表出されたのである。

寺山修司の作り出す世界観は時空を超えて存在し続けている

『毛皮のマリー』 写真提供:株式会社パルコ 撮影:御堂義乘

 そして、こういうものが観られるので劇場通いはやめられない。映画は観逃しても再上映があるし、DVDでもチェックできるし、コンサート/ライヴも中継や収録ものでも何とかなるのだが、ダンスや映像、照明、音楽などがミックスされるパフォーマンスや、斬新なアプローチをしている演劇については自分の目で確かめるしかない。それは美輪明宏が演出・美術・主演の三役をこなして上演された寺山修司・作の『毛皮のマリー』にも、J・A・シーザーの唯一無二の才能が今回も爆発していた『チェンチー族』についても言えることだった。また2作品ともが、寺山修司ものということも偶然以上のものがあるが、読みごたえのあるプログラムの“御あいさつ”で美輪さんが書いている文章が実にいい。

 「……不道徳、不健全と、人前で公に口にするのは、はばかられる言葉として差別扱いされている“性関係の言葉達”にも又“表現”にも他の言葉達と同等、同格の市民権とロマンや芸術性が与えられるべきだと云う寺山氏の理念の一端として、この詩劇は書かれている側面も御座います」(『毛皮のマリー』プログラムより)

 これは本当に言い得て妙だが、プログラムの中にはもうひとつ紹介しておきたい文章もある。

 「寺山氏の作り出す世界は、コンテンポラリーでありながら、いろいろなものがごちゃまぜになっています。デカダンス、頽廃美が漂う中に、猥雑なもの、グロテスクなもの、ナンセンスなものがいろいろ出てくる。芸術というのは、三島由紀夫さんが言っていたように、あらゆる芸術の模様であり、寄せ集め、コラージュです。古今東西のあらゆる芸術、あらゆるジャンルのものをいったん自分の中に取り込んで消化し、これまでのものと違う形にして出す――寺山氏の世界は、まさにそういったものでした」(『毛皮のマリー』プログラムより)

 だから、時空を超えて存在し続けているのだと思う。「寺山さん母子の複雑な愛憎生活を、男娼と養子と云う関係に置き換えて書かれたアート作品」(美輪明宏)である『毛皮のマリー』は今度は6月8日から16日まで下北沢 小劇場B1で、花組芝居によって“実験浄瑠璃劇”として上演されるが、寺山修司の作り出す世界観はローリング・ストーンズに代表される本物のロックの作り手たちにも通じるところがある。4月17日に青山のレッドシューズで開催された森永博志とのオフレコトークショーでも話がそこに及んでいったのは、今の気持がそのまま反映しているからに他ならない。

作品紹介

『ポリティカル・マザー ザ・コレオグラファーズ・カット』

日程:2019年4月6日~11日
会場:Bunkamura オーチャードホール
出演:上田竜也/ホフェッシュ・シェクター・カンパニー/中村達也(ex. BLANKEY JET CITY)/TOKIE(HEA,LOSALIOS/ex.RIZE,AJICO)

『毛皮のマリー』

日程:2019年4月2日〜21日
会場:新国立劇場 中劇場
作:寺山修司
演出・美術:美輪明宏
出演:美輪明宏/藤堂日向/麿赤兒/深沢敦/大野俊亮/三宅克幸/プリティ太田/小林永幸/真京孝行/松田拓磨/米田敬/谷沢龍馬/菅沼岳/川瀬遼太/樋口祥久/岡本祐輔/吉岡佑也/岩井克之/大濱和朗/重岡峻徳/重松直樹
※5月8日に愛知県芸術劇場 大ホール、5月24日~26日に梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて上演

幻想寓意劇『チェンチ一族』

日程:2019年4月5日~14日
会場:ザ・スズナリ
演出:J・A・シーザー
出演:髙田恵篤/伊野尾理枝/小林桂太/木下瑞穂/飛永聖/森ようこ/髙橋優太/今村博/太刀川亮/吉家智美/山田桜子/三好華武人/三俣遥河/小林仁/曽田明宏/加藤一馬

花組芝居 実験浄瑠璃劇『毛皮のマリー』

日程:2019年6月8日~16日
会場:下北沢 小劇場B1
作:寺山修司
脚本・演出:加納幸和
監修:寺山偏陸
作曲:鶴澤津賀寿/杵屋邦寿
出演:花組芝居役者連

プロフィール

立川直樹(たちかわ・なおき)

1949年、東京都生まれ。プロデューサー、ディレクター。フランスの作家ボリス・ヴィアンに憧れた青年時代を経て、60年代後半からメディアの交流をテーマに音楽、映画、アート、ステージなど幅広いジャンルを手がける。近著に石坂敬一との共著『すべてはスリーコードから始まった』(サンクチュアリ出版刊)、『ザ・ライナーノーツ』(HMV record shop刊)。

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