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土岐麻子の「大人の沼」 ~私たちがハマるK-POP~ Vol.7 MONSTA Xを推し尽くすために、もっと知りたい!

ナタリー

21/5/20(木) 17:00

土岐麻子によるイラスト。キャラクターたちが手にしているのは、MONSTA Xのペンライトだ。

シンガーの土岐麻子が中心となり、さまざまな角度からK-POPの魅力を掘り下げていくこの連載。7回目では土岐が愛してやまない推しグループ・MONSTA Xを題材として取り上げる。5月に日本3rdアルバム「Flavors of love」をリリースし、6月1日には韓国でミニアルバム「One Of A Kind」の発売も控えている6人組ボーイズグループMONSTA X。今回は土岐が自らの言葉でグループの魅力を書き記し、さらにはユニバーサルミュージックの制作ディレクターへのインタビューも実施した。日本で発売される音源はどのようなチームで制作しているのか、コロナ禍の中で「Flavors of love」がどのように作られたかなどの秘話をじっくりと堪能してほしい。

取材・文・イラスト / 土岐麻子

※イラストは2019年から2020年にかけて開催された「TOKI ASAKO LIVE 2019-2020 “PASSION BLUE ~冷静寄りの情熱ツアー”」のツアーパンフレットに、「まちがいさがし」として掲載されたもの。

推せるときに推し尽くすために、もっと知りたい!

K-POPスターを推す人の日々は忙しい。
リリースや番組出演といった膨大な情報量による時間的、物理的な忙しさもさることながら、心のなかも年中無休でせわしないものだ。
脱退、休業、怪我、デマ、事務所とのトラブル、炎上、兵役、ディスパッチ砲(韓国のメディアDispatchによる熱愛スクープ)、解散……。
次から次へと推しへ降りかかる火の粉に、ファンも苦悩が尽きない。

私もこれまで、推しグループにまつわる大きな問題や実にささやかなデマを目にするたび、じんわりとした不安を感じたりしてきた。

……私はただ、彼らの完璧なパフォーマンスをずっと観ていたいだけなのに!!
空に向かって叫んでももう這い上がることができない沼。
K-POPヲタ道とは、どの道も茨の道なのかもしれない。

火の粉に見舞われても常に素晴らしい活動で回答をくれる彼らを見るたびに、そこから垣間見える真摯な姿や生き様にさらに心惹かれていったのも事実。
ある姿にはリスペクト、ある姿には共感、ある姿にはヒーリングを。そうしてダンスや歌とともに、人物像も含めて、そのすべてが私のエネルギー源の1つとなった。

詠み人知らずな有名なヲタ文言「推しは推せるときに推せ」には、時が経つほどに深みを感じる次第だ。ほんと、全員そろって活動できるって奇跡のように美しい刹那なのかもしれないねえ……と。

私の推しグルの名は、MONSTA X(以下、モネクと略します)。
そんなモネクが先日5月5日、3枚目の日本アルバム「Flavors of love」をリリースした。
韓国のアイドルは本国でのリリース以外にもアメリカ盤や日本盤など、他国の言語でアルバムを出すことが多いのだが、既発曲の訳詞バージョンを収録することもあれば、その国のために用意したまったくの新曲のこともある。
その国によって制作陣が変わり、作風も大きく異なることがあり、面白い。
モネクはこれまで、韓国、アメリカ、日本でそれぞれに違った音楽性の作品をリリースしてきた。

今回のアルバム「Flavors of love」では、これまで以上の「日本語ポップス」としての完成度の高さに驚いた。
驚きついでに「推せるときに推し尽くすために、もっと知りたい!」と勢いづき、ユニバーサルミュージックを訪ね、日本の制作チームへインタビューをしてきた。
モネクの魅力はもちろん、日本盤ならではの方針だったり、このコロナ禍でいったいどんなふうに録音がなされたのかなど、たくさんお話を聞けたのでぜひ読んでいただきたい。

と、その前に……モネクを知らない方に、駆け足ではあるが私から紹介させてほしい。

まずは、こちらの映像を。
彼らのデビュー年、2015年のミュージックビデオ。
彼らのよさは、なんといってもそれぞれの違う強みがある個性のマッチング。
ここでは腹筋を見せるようなダンスも印象的。

この曲のダンスのフォーメーションの最高さは、プラクティス(練習)動画でさらによくわかる。引きの定点で撮影しているのに、この迫力。個人個人の見せ場もありつつ、ユニゾンではまるでコピペのようにそろっているのだ。

歌のよさをもう少し拡大して観てみよう。ブルーノ・マーズのカバー。私の推し、ジュホンはラッパーでありながらボーカリストとしてもとても強い(向かって左端の、白いショートジャケットのメンバー)。

ジュホン、I.Mというラッパー2人によるHIP HOPセンスと、やや低めのウィスパーボイスのヒョンウォン、ハスキーボイスのウォノ、フェミニンで可憐なボーカリゼーションのミニョク。そしてリードボーカルのショヌにはR&Bテイストが、メインボーカルのキヒョンの歌声にはロック的な魅力がある。
ちなみに、キヒョンの強みが爆発しているカバー曲はこちら。

一転、アメリカでのリリース曲は、彼らのポップサイドであると言えよう。

この曲の制作にはリーダーのショヌが携わっている。

モネクはメンバーのうちの何人かが作業スタジオや制作パートナーを持っているようで、韓国盤では多くの楽曲を自分たちで作っているところも魅力の1つだ。
これはメンバー同士でパートチェンジに挑戦して録音をしている映像だが、自然な作業風景を見ると、普段から自分たちでオペレートして録音していることがわかる。

そして、ステージパフォーマンスを2つ。舞台でももちろん、それぞれの個性を楽しめるのだ。

ということで、本当にほんの一部だったが、モネクの魅力をピックアップしてきた。知らない方にとって、興味を持つきっかけとなれば幸いである。

さて、ここからはいよいよ今回の日本アルバム「Flavors of love」の制作ディレクター、亀田裕子さんへのインタビューをお届けする。ヲタ心を落ち着かせ、冷静沈着に臨んだ(つもり)。

亀田さんが彼らの担当になったのは、2017年。日本デビューの準備期間も含めると、モネクとは約5年の付き合いとのこと。

全員にスポットライトが当たる曲作り

──今は韓国へ行き来できないと思いますが、普段はどのぐらいの頻度であちらに行くものですか?

週1で行っていました。打ち合わせか撮影かレコーディングかをひたすらやって、忙しいときは日帰りで……っていう生活をずっと送っていましたね。

──時間的には、北海道に行くくらいの感覚で行けますからね。

そうですね。朝イチで行って最終便で帰ってくれば全然行けちゃいます。土岐さんは韓国へはよく行かれていたんですか?

──いや、そんなにです。15年くらい前に仕事で何度か行ったことがあるのですが、個人的な旅行は一度だけ。

K-POPを好きになってからですか?

──はい。2019年の秋に。MONSTA Xが日本デビューしたのは2017年ですよね。

そうですね。MONSTA Xの日本チームは、スタートからスタッフの布陣がまったく変わっていなくて。デビュー期から今まで変わることなく、全員の記憶が共通、という状態でやれているんです。

──すごい!

なかなかないことですよね。クリエイティブチーム、レコーディングチームも、5年間同じです。アーティストの個性を深く理解して作ったほうがいい作品ができると思っているので、クリエイティブスタッフを変えずに来ました。

──最初に亀田さんがMONSTA Xを担当することになったとき、日本での展開においてはどのようなビジョンがありましたか?

当時韓国での最新曲は「Fighter」だったのですが、それ以前にリリースされた「HERO」のミュージックビデオがYouTubeですごく回ってて。「HERO」はMVがカッコよかったんですよ。曲のコンセプト自体もめちゃくちゃ面白かったですし。最初にゲームっぽい音が入ってるんですけど、ああいうセンスもカッコいいなと思って。「最新曲じゃないけどこの曲で行こう!」ということで、「HERO」で日本デビューすることにしました。

──なるほど、私も最初に射抜かれたMVは「HERO」でしたよ。

ずっと屋上で撮っているだけなんですけどね。それでもあれだけ勢いがあったのは、彼らの個性、曲の個性の両方が強かったんだと思います。賭けではありましたが、それがオリコンで2位を獲り、いいスタートダッシュを切ることができました。

──英断! MVの再生回数は、まさに彼らのパフォーマンスの魅力が牽引した結果なんでしょうね。

デビューのときから、韓国のクリエイティブと日本のクリエイティブは分けて考え、日本スタイルにカスタマイズしたものにしようと。メンバーそれぞれの個性の出し方を曲によって変えることが大事だろうなと思っていました。私の中では曲によって毎回主人公を変えているんですよ。「この曲はヒョンウォン」「この曲はミニョク」「この曲はジュホン」という形で、全員にスポットライトが当たるような曲作りを意識しています。

日本語の響きの主張をなくす

──ところで、日本語バージョンの作詞に関して、こだわっていらっしゃるポイントってありますか?

私は韓国語オリジナル楽曲の日本語バージョンをリリースすることは、本当はリスクが高いと思っているんです。ネットがない時代ならファンの皆さんも日本語バージョンを待っていてくれるかもしれないですけど、いつでも自由に聞ける曲の言語を変えて出す必要があるのか、と。ファンの皆さんのほうがよっぽど韓国語をわかっているし、日本語バージョンがリリースされる頃には、すでにオリジナル曲が耳に馴染んだ状態だと思うんです。せっかくリリースするからには、日本語ならではの世界観も見せたいし、その中でオリジナルが好きな人たちにも好きになってほしい。なので、日本語バージョンにするときはオリジナルの詞の世界観を壊さずに「いかに耳なじみのいい日本語を使うか」ということに気を付けています。日本語の響きの主張をなくす。耳で聴いた韓国語の響きをそのまま日本語に変換してストーリーを展開していくイメージです。

──確かにモネクの日本語バージョンは無理がなく、すっと耳に入ってくる感じがあります。

K-POPってやっぱり、日本語バージョンに対する抵抗を持つ人もいると思うんですよ。オリジナルの世界観を壊してしまったら「わざわざ何してくれんねん!」って感じる方もいらっしゃるかもしれない。だからそこは細心の注意を払って言葉選びをしています。

──作詞家の方は大変ですね。

大変だと思います。条件を満たす限られた日本語しか使えないですから……。

──でも大枠での歌詞の世界は符合していなきゃいけない……相当な努力をお察しします。

オリジナルをリスペクトしながら日本語バージョンをどう成立させるかという部分は、デビュー作からこだわってやっているところだと思います。

──やっぱりファンだったら、韓国語オリジナルを聴くときに「ヒョンウォンのあのフレーズが聴きたい」とか「キヒョンのあのロングトーンが気持ちいいんだよ」とか、好きなポイントがやってくるのを待ちながら再生することが多いと思いますが、モネクは確かにそのあたりが日本語バージョンでも違和感なく入って来る感じがします。本人たちも歌いやすいのでは。

日本語はアクセントが強いので、曲に落とし込んだときに、音より言葉に耳が引っ張られちゃうんですね。なので言葉に違和感が出ないようにすごく気をつけていますね。

MONBEBEをドキッとさせたい

──先日、日本3rdアルバム「Flavors of love」がリリースされましたが、オリジナル楽曲の場合、歌割りはどのように決めているのですか? 全員スルーで録ってあとからいいところを選ぶ方式ですか? それとも、あらかじめ歌割りを決めておく?

後者ですね。さっき主役を据えるとお話したことにも通ずるのですが、「この曲はこの人が主役だからここを歌わせよう」とか、「ショヌはこんなこと言わなさそうだからここ歌わせよう」とか(笑)。いかにMONBEBE(MONSTA Xファンの呼称)をドキッとさせるかを考えながら歌割りを考えてます。

──意外性のあるパートをお願いしているということですか?

はい。「『お前』ってショヌ言わなさそうだな」とかは大事にしていますね(笑)。

──言わなさそう!!(笑) 曲自体はどのようなフローで作っているのですか?

まずは1曲を決めるのに、500曲ぐらいデモを聴きます。

──500……! 選曲の分母として、かなり膨大ですが……。

あまり感情を入れて聴くと、「MONSTA X」というイメージに縛られて選んじゃいそうな気がするので、単純にいい曲かどうかという基準で選ぶようにしています。作家さんは海外の方にお願いしています。ジャンルによっては作家さんを指名して楽曲を書いてもらったりもします。

──今回のアルバムはどちらの作家さんが多いんでしょうか?

今回はヨーロッパとアメリカの方が多いです。アメリカの方はわかりやすく音楽の旬を反映してくれます。

──どういうつながりで人選をされているのですか?

興味がある楽曲の作家さんを調べて、作家さん個人のInstagramを覗きに行きますね。どんな曲を作っているのかがリアルタイムでわかるのですごく参考になります。ダンスミュージックが上手かどうかはすごく気にしています。K-POPは「目で見る音楽」だと思うので、映像に落とし込んだ時にダンス映えする曲が得意かどうかは大切にしていますね。

──書き下ろしというよりはストックからのセレクトですか? あとはコライトとか?

どちらもあります。コライトの楽曲が多いですね。毎回楽曲のテーマを決めてから作家さんに発注をします。2週間程度で500曲くらいのデモが集まるので全曲試聴して。しっくりくるものがなかったら、その中でイメージに近い方に「あと数曲書いてほしい」って相談したりもしますね。

──おおー。時間をかけてらっしゃいますね。曲を決めてからはスピーディーに?

スピーディーですね。今回は残念ながらコロナの影響で進行が延びたりしましたが、楽曲や歌詞の季節感をすごく大事にして作っているところもあって、基本的には予定しているリリース時期からあまりズレることなく進むプロジェクトだと思います。

──曲と歌詞ができてからは、このご時世ですと、データをメンバーに送ってやりとりするという形でしょうか。韓国の現場にも日本語詞をディレクションするような方はいらっしゃるんですか?

はい、今はZoomでのレコーディングが中心なので、日本語ディレクションができる方に立ち会ってもらって作業しています。

──間に人が増えると、日本語のアクセント、発音のディレクションはさらに難易度が高くなりそうですね。

メンバーがちゃんと覚えてくるので、そんなに手こずることもないですよ。「さっき始めたばかりなのにな」ってくらいパパッと録り終わることもあります。ジュホンは特に速い! どんなに難しいラップでも一瞬です。

──さすが! 今回の1曲目「WANTED」のラップの部分なんて、日本人のラッパーにしか聞こえなくて。こっちの耳ががんばらなくても、日本語がばっちり聞こえてきます。

私でもこんなにきれいな発音で歌えないなって思うくらいです(笑)。

──ラップがうまいのはもちろんだけど、ちゃんと日本語に聞こえるっていうのがすごいことだなと。韓国語って、日本語よりも子音が短いというか……その短い子音を日本語にすると、言葉がシュッと空中に漂う感じがして。それが魅力的に感じられることもあれば、曲によってはリズムがピタッとハマらない感じになったり、違う言葉に聞こえすぎたりということがあると思います。でも「WANTED」はそういったことがなく、日本語の気持ちいい響きが聴けますね。レコーディングの前に、仮歌も用意するのでしょうか?

はい、用意します。メンバーには「目で覚えないで、耳で覚えて」って伝えているんです。たぶん私たち日本人も普段、文字通りに発音していないときがありますよね。なので音で覚えてもらわないと不自然になってしまう。

──なるほど、そうですよね。パートごとにメンバーが歌う場所が決まってるわけですが、仮歌の方に、そのメンバーに雰囲気を寄せて歌ってもらったりとかはありますか?

ないですね。完成するとメンバーらしさが必然と出てきます。

──じゃあ、メンバーは仮歌を聴いたあとで、自分のニュアンスを入れていく、みたいな感じなんですね。

はい。メンバーが歌うとめちゃくちゃよくなるんです。よく、仮歌マジックってあるじゃないですか。仮歌がよすぎて本録音がそれを超えられない魔法というか呪いというか。それがMONSTA Xはまったくないんですよね。本当に彼らの個性がちゃんと出る。

──いいですね……そのあたりのお話、もっとください!(笑)

いや、ホントすごいと思います。キヒョンに関しては、私たちの想像をはるかに超えていくんですよ。「RE:VERSEDAY」のサビは仮歌さんにファルセットで歌ってもらったんですけど、キヒョンがいざ歌ったら、地声で出るっていう(笑)。「こんなキー出ないはずなんだけどな」ってところも地声で歌えちゃって。あっけにとられるみたいなことはありますね。あと、ジュホンとI.Mはすごくアイデアマンなんですよ。レコーディング中に「ここでこういうコーラス入れたらよくないですか?」「ここでこの煽り入れたらカッコよくないですか?」って提案をたくさんしてくれます。そういうアイデアも全部録って作品に生かすので、仮歌にはない完成度になっていくんだと思います。作品に対しての「前のめり感」っていうのは、一緒に作業していてすごく面白いなって思います。

フラットで優しいメンバーたち

──自分たちが主体的に曲作りに関わっていることが、作品やパフォーマンスの強さにつながっているんでしょうね。亀田さんからの視点でアルバムの聴きどころを、1曲ずつ教えてもらえたりしますか?

はい! ではまず1曲目の「WANTED」から。ショヌが歌う「世界へ」「未来へ」というファルセットの高音部分が、とても色っぽく仕上がっています。「Follow -Japanese ver.-」はI.Mのラップパフォーマンスの個性が際立っていますし、「FANTASIA -Japanese ver.-」では、キヒョンのどんどん駆け上がっていく高音メロが聴きどころです。「RE:VERSEDAY」は……先ほどお話したエピソードの曲ですね。キヒョンのサビ頭の「今すべてを0に戻して」の部分は、当初ファルセットを使ってもらう予定だったのですが、音源では地声で歌っていて、圧巻です。

──かなり高いのにこれで地声なんて。本当にきれいですよね。

そうなんです。5曲目「Diamond heart」は、ジュホンとI.Mのラップワークが主役の曲ですね。続く「Secret」は、ショヌが「Secret」のあとに「シーッ」と言っているのが隠し味。7曲目の「Love Killa -Japanese ver.-」は韓国語オリジナルでもですが、ジュホンの「Love Killa」になりきっている表現力が素晴らしいんです。そして「Detox」は、ミニョクの「La la la la la la 」のイントロの部分に注目ですね。異世界に連れ出してくれそうな表現で歌ってもらいました。「Wish on the same sky」では、キヒョンとショヌのサビの追っかけがバラードらしい壮大さを演出してくれるのですが、ヒョンウォンの「抱きしめてる」の表現力も最高です。10曲目「NEO UNIVERSE」の「“いつか”の約束をしよう 指折り数えて」というところは、ヒョンウォンにMONBEBEと指切りするイメージで歌ってもらっています。そして最後の「Flavors of love」は、ミニョクがいろいろな甘いものをMONBEBEとの関係に例えて歌っているところが胸キュンポイントです!

──ありがとうございます! これからアルバムを聴く人は、ぜひガイドにしてほしい……! ところで、メンバーとほかの音楽の話をすることはありますか?

はい、会ったときには「最近僕は日本のこの曲が好きです」と教えてくれます。

──そうなんだ!

曲の好みも六者六様です。休憩中や待機時間も「最近日本でどんな曲が流行ってるのか教えてほしいです!」と聞いてくるんですよ。メンバーはずっといろいろな音楽を聴いてる感じがありますね。

──日本の音楽シーンを意識して、向き合っているんですね。だからこその日本語歌唱のクオリティの高さなのかな。あと、メンバーはストイックなイメージがありますが、実際現場での姿はどうですか? 先日I.M氏にラジオでインタビューした際(今年2月、土岐のラジオ番組「TOKI CHIC RADIO」にI.Mがゲスト出演した)にも、日本語の「つ」などの難しい発音はものすごく練習して録音に臨んでいる、とおっしゃっていて。

そうですね、発音はできるまでやります。全員、自分が納得するまで何度もやり直してくれますね。あとは、すごく優しいです。スタッフにご飯食べたかを毎回確認したりとか、ジュースを買ってきてくれたり。スタッフへの気遣いがあります。初めてメンバーと接したスタッフはみんな、「なんていい人たちなんだろう」って言いますね(笑)。

──優しい! オープンマインド!

私は韓国語が話せないので、メンバーは日本語で話そうとしてくれます。レコーディングのときはオンラインの画面から「元気ですか?」「最近どんなアニメが流行っていますか?」と聞いてきたり(笑)。日本のファンのこともすごく気にしていて、「日本に行きたいです。まだ行けないですか?」ってよく言っていますよ。

──うれしい! モネクが日本で愛されている要因は、そういうところもあるんでしょうね。ファンと相思相愛のような。公の場でも、日本語を積極的にしゃべってくれる印象があります。楽屋でメンバー同士で教え合っていたりとか。

特にミニョクは日本語が上手で、「日本語全部しゃべれるんじゃないかな?」って錯覚することがあります(笑)。

──確かにミニョクさんの日本語力はすごいですね。私の経験上、レコーディングスタジオでは本当にそこにいる皆のテンションが一致しないといいものを作るのは難しいと思っていて。言葉が通じないにしても、心をお互いに開き合っていないと、作品をいい方向に持っていきづらいと思うんです。モネクはいい現場作りがされているんですねえ。

はい。例えばリリースする曲1つとっても、メンバー全員の希望通りになっているかというと、そうではないと思います。でも毎回リリースするタイミングで、彼らの今の日本での立ち位置や世の中の状況を踏まえて楽曲を決めていて、「私が言う事が正しいわけじゃないけど、今この曲をリリースすることがベストだと思う」とちゃんと伝えるようにしています。できるだけチームとして良いものができるように、温度差が出ないように一緒にやっていけるといいなと思い、5年が経ちました。

──モネクの音楽はまず、メンバーそれぞれの声と歌唱力が武器だと思っていましたが、お話を聞いていて、それを生み出す環境の力が大きいんだなと感じました。そして、スタッフの皆さんも含めてのMONSTA Xなんだっていう。そういう現場作りっていうのは本当に大事なことでありつつ、双方にとって簡単なことではないと私は思います。

うれしいです。私たちスタッフはチーム内でめちゃくちゃ話すんですよ。クリエイティブやプロモーションなど、いろんなことを。私1人で決めている感じがあまりしません。否定も含めて意見を言ってくれるので、とても作品作りの参考になります。チームとして同じ目線で作品を作れている感じがありますね。

願わくば40代、50代になってもずっと

素晴らしい。モネクチーム丸ごと、推していきたい。

兵役や、日本とは違った契約文化がある国のアイドルを応援していくことは身も心も忙しいし、とくにコロナ禍においては、ともすれば遠くに感じてしまいそうになることもあるが、亀田さんを含めたチームの皆さんのモネクへの愛は頼もしかった。

今回のインタビューを踏まえつつ彼らの日本アルバムを繰り返し聴くたび、メンバーの日本活動への覚悟と、日本MONBEBEへの愛を感じる。

アイドルとともに歳を重ね、そのときそのときのパフォーマンスを愛するという応援の歴史を持つ日本で育った、私たち。最近は韓国でも長く活動するグループが増えているが、亀田さんたちのような頼もしいチームと日本のファンがいれば、メンバーの舞台を守り続けるビジョンが強く描けるのではないか……なんて思ったりした。

いつか「推せるときに推せ」が杞憂だったねと笑えるくらい長く、できれば40代、50代になってもずっと、老舗のグループとして唯一無二のパフォーマンスを見せ続けてほしい。
そして、そのクオリティを支える彼らの心と体の健康を、心から願っている。

土岐麻子

1976年東京都生まれ。1997年にCymbalsのリードボーカルとして、インディーズから2枚のミニアルバムを発表する。1999年にはメジャーデビューを果たし、数々の名作を生み出すも、2004年1月のライブをもってバンドは惜しまれつつ解散。同年2月には実父にして日本屈指のサックス奏者・土岐英史との共同プロデュースで初のソロアルバム「STANDARDS ~土岐麻子ジャズを歌う~」をリリースし、ソロ活動をスタートさせた。2019年10月にソロ通算10作目となるオリジナルフルアルバム「PASSION BLUE」を発表。2021年2月17日にカバーアルバム「HOME TOWN ~Cover Songs~」を発売し、今夏には全国6都市にて1年半ぶりのライブツアー「TOKI ASAKO LIVE 2021 Summer "MY HOME TOWN in your home town"」を12公演開催する。

TOKI ASAKO OFFICIAL WEBSITE
土岐麻子staff (@tokiasako_staff) | Twitter
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