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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

おとな向け週末映画ガイド

今週のオススメは『ゴールデン・リバー』と『Girl/ガール』。野村芳太郎監督回顧、伊藤雄之助&西村晃の名脇役対決などの特集上映も好企画が並びました。

ぴあ編集部 坂口英明
19/7/5(金)

イラストレーション:高松啓二

今週ロードショー公開の作品は21本。全国300スクリーン規模での拡大上映は、藤原竜也が殺し屋専用の謎のレストランのシェフを演じる『Dinerダイナー』のみ。ミニシアター系作品の多い週です。

おとなの映画ファンに『Diner』は若干刺激が強すぎな感じ。アクション映画で、オススメは『ゴールデン・リバー』です。

ゴールドラッシュの西部を舞台にした髭面のむくつけき4人の男たちの追跡劇。ジョン・C・ライリー、ホアキン・フェニックスが殺し屋兄弟、彼らを追うのはジェイク・ギレンホールと、ともかく役者が個性的です。監督はフランスのジャック・オーディアール。暗闇のガンファイトや酒場のドンパチ、マッチョな男たちならではのユーモラスなやりとりなど、久しぶりの西部劇をお楽しみ下さい。ぴあ水先案内では、伊藤さとり、真魚八重子、高松啓二、春日太一の4人の水先案内人の方々がセレクトされています。

『ゴールデン・リバー』は昨年のヴェネチア映画祭の銀獅子賞(監督賞)を受賞していますが、ベルギー映画の『Girl/ガール』は、今年のカンヌ映画祭カメラドール(新人監督賞)受賞とこちらも評価の高い作品です。

15歳の主人公ララはトランスジェンダーで、バレリーナを目指しています。この映画はもちろん、その少女の物語なのですが、映画で重要な役どころは父親。少女を取り巻く医療スタッフなど、ベルギーは日本では考えられないほど、理解のある環境ではあるのですが、やはりいじめや、差別はある。その中で「女性になることを急ぐ必要はない。パパだって時間をかけて男になった。焦っちゃダメだ」と暖かく見守る父、そんな家族の映画でもあります。この作品も、渡辺祥子、伊藤さとり、水上賢治、杉本穂高の4人の水先案内人の方々がオススメです。

今週は名画座の特集上映に注目すべき企画が3つもあります。

「生誕100年記念 映画監督 野村芳太郎」

(神保町シアター) 7/6〜19

渥美清、山田洋次監督を育てた一人、といってもいい松竹の職人監督、野村芳太郎の回顧上映。松本清張原作のミステリーにも傑作を多く残した監督です。清張原作では、代表作『砂の器』や『張込み』『ゼロの焦点』など6本、渥美清の寅さん以前の主演作『拝啓天皇陛下様』、『白昼堂々』では渥美=倍賞千恵子の名コンビが出演しています。私は『東京湾」というサスペンスがオススメです。水先案内では、植草信和さんが『張込み』を取り上げています。

この映画の水先案内

植草信和

「名脇役列伝IV 伊藤雄之助生誕百年記念 怪優対決 伊藤雄之助vs西村晃」

(シネマヴェーラ渋谷) 7/6〜26

お人好しか、はたまた曲者か、馬面の怪優伊藤雄之助と、のちに水戸黄門に変身したが、映画では気が弱そうで実は悪人とか、暗躍する敵役が多いこれまた怪優の西村晃という名脇役二人に注目した特集。伊藤雄之助は『現代インチキ物語 騙し屋』の詐欺師や、『にっぽん泥棒物語』などの刑事役、『一等女房と三等亭主』では風采のあがらないサラリーマン…、どの映画も実は強い印象を残す脇役だ。西村晃は『ある脅迫』『散歩する霊柩車』のこれぞ小心者、『北陸代理戦争』で雪の中に首だけだして埋められ、リンチされる伝説のシーンも見ものです。

「キネマ旬報創刊100年記念 キネ旬ベストワンからたどる昭和・戦後映画史」

(新文芸坐) 7/7〜17

キャプションの内容を記載

映画雑誌『キネマ旬報』が今年、創刊100年を迎えるのを記念した特集。この雑誌の看板企画であるキネ旬ベストテンの、ベストワン作品を集めて、昭和・戦後日本映画史を振り返ろうという企画です。小津安二郎『晩春』『麦秋』の2本立てから、山田洋次『幸福の黄色いハンカチ』と深作欣二『蒲田行進曲』までの20本。組み合わせも興味深い、いかにも新・文芸坐らしいプログラムです。

映画の上映ではありませんが、映画ファンにとって見逃せない展覧会が始まりました。

「高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの」

(東京国立近代美術館) 7/2〜10/6

よくこんな資料が残っていたと驚きます。台本、絵コンテ、セル画、演出メモなど。デビュー作『太陽の王子 ホルスの大冒険』では、登場人物の出番とドラマの「テンションチャート」を組み合わせたグラフや、制作の遅延を恐れた会社とのやりとり、いわば「一筆を入れた」書類まで。入り口近くに「ぼくらのかぐや姫」企画ノート、という企画書が展示されています。東映動画時代、内田吐夢監督でかぐや姫を映画化する話があり、自分なりのプランをまとめたもの。遺作『かぐや姫の物語』とループで繋がる高畑勲の原点というわけです。高畑さんは自分で絵を描く訳ではない、アニメの演出のプロです。作品に込めた思いをスタッフに伝えるために使われた様々な表現物で、高畑さんの世界をうかがえるまたとない展覧会です。『アルプスの少女ハイジ』のコーナーでは、ハイジの住む家と大自然のジオラマも設置されています。背景美術用に描かれた風景画の素晴らしさも見もの。関係したスタッフのコメントも入った音声ガイドは借りた方が良いです。

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