須田景凪が1月24日に最新デジタルシングル「はるどなり」をリリースした。“月9”に並ぶフジテレビ系ドラマ看板枠“木曜劇場”作品である松下奈緒、木村佳乃による女性医を主人公にしたヒューマンドラマ『アライブ　がん専門医のカルテ』主題歌に起用された話題作だ。同ドラマは、日本のドラマとしては初となる、腫瘍内科メディカル・オンコロジーというがんに特化した診療科が舞台となっていて、がん治療の現場のリアルな描写にも注目が集まっている。

参考：バルーン＝須田景凪、2019年最注目アーティストと言われる理由　須田名義で獲得した肉体性を分析

　2019年に発表した映画『ニノ国』主題歌「MOIL」やアニメ『炎炎ノ消防隊』エンディング主題歌「veil」など、これまでエッジーかつソリッドなビートやグルーヴが光るサウンドが魅力だった須田だが、2020年のスタートを切る「はるどなり」は、壮大かつビビッドな世界観を醸し出すバラードに仕上がっている。タイトルの「はるどなり」とは、“春がすぐそこまで来ていること”を意味する言葉“春隣”のこと。ドラマで描かれるセンシティブな心情、さらには聴く人すべての痛みに寄り添い、ストリングスを起用した高揚感あるサウンドが胸を高まらせてくれる。

　ドラマへ向けて須田は「自分の中にある命への価値観とリンクする描写が多々あり、ゆっくり丁寧に制作しました。 冷たくも温かい物語に添う楽曲になったと思います」とコメント。須田景凪が創作する歌詞テーマのひとつに“刹那”的な瞬間、今しかできないことがある。日常生活を送るうえで輝く美しさという瞬間。そんな、一期一会な心模様が本作「はるどなり」でも〈呼吸〉という言葉を印象的に歌うことで表現されている。〈深く吸い込んだ 冷えた空気を　あなたに見つけて欲しいと願った〉という冒頭のフレーズが、体温の変化、季節の変化とともに活きてくるのだ。

　ドラマを担当するプロデューサー太田大も「『はるどなり』は、今回のドラマのテーマである”生きる”ということを情感豊かに、かつ冷静に見つめた楽曲。辛くて立ち止まってしまうこともある毎日の中で、ほんの一筋の光は確実に差していて、それを頼りに前に進んでいく。深呼吸をして勇気を持って一歩を踏み出す後押しをしてくれるような曲です」と、楽曲とドラマとの相乗効果について語っている。（参考：須田景凪、ドラマ『アライブ がん専門医のカルテ』主題歌に新曲「はるどなり」書き下ろし）

　昨今、CDバブル期のようなパワーゲーム型宣伝が通用しない時代と言われているが、米津玄師「Lemon」、Official髭男dism「ノーダウト」、King Gnu「白日」の人気を拡散したきっかけはTVドラマタイアップだった。定額制音楽ストリーミング時代、ドラマによって毎週耳にするサウンドはスマホで聴くには相性がよく、ドラマタイアップ曲は長期的にランキング上位を独占する傾向にある。

　須田景凪、そして別名義であるバルーンを合わせたYouTubeの作品総再生回数は1億3,000万回を超える。ボカロP出身であり、現在は自身で歌唱するシンガーソングライターとして確固たる地位を築きつつある。今年1月1日にリリースされた香取慎吾（新しい地図）のソロアルバム『20200101』へポップかつグルーヴィーな「welp（feat.須田景凪）」を楽曲提供するなど認知の幅を広げているが、今回のドラマ主題歌抜擢によって須田の才能がより遠い場所へも届くことになるだろう。

　また、ライブにおいても昨年7月14日にはツアーの追加公演として自身最大キャパの中野サンプラザホール公演『須田景凪 TOUR 2019 追加公演 “teeter”』を即完。1月25日には、LINE CUBE SHIBUYA（渋谷公会堂）にて完全招待制ライブ『uP!!!NEXT 須田景凪～晩翠～ powered by au 5G』として5Gのテクノロジーを駆使した画期的演出のスペシャルライブも行われる。映像とサウンドがシンクロする没入感高いシアトリカルなライブに定評があるだけに、『uP!!!NEXT 須田景凪～晩翠～ powered by au 5G 』でのパフォーマンスにも注目が集まる。

　若い世代を中心にスタンダード化しているバルーン名義でのヒット曲「シャルル」で知られる須田だが、ボカロ文化から新たなカルチャーは芽吹き、自身で歌唱することで唯一無二となるアーティスト性の獲得を証明しつつある。疾走するビートセンスに絡み合うキャッチーなメロディ。片時も心を離すことない、中毒性の高い研ぎ澄まされたサウンドプロダクション。そして、胸を突き刺す抒情的なコトバのチカラ。2020年の須田景凪の活躍に期待したい。（ふくりゅう（音楽コンシェルジュ） ）