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ちや子は『スカーレット』のシスターフッドを象徴 真奈は強さと決意を芯に秘める

リアルサウンド

20/3/17(火) 12:00

 喜美子(戸田恵梨香)は、信楽を訪れたちや子(水野美紀)と喫茶サニーで再会する。市会議員になったちや子はネットワークを生かして、武志(伊藤健太郎)のドナー探しに協力を申し出る。

参考:『スカーレット』第141話では、真奈(松田るか)が武志(伊藤健太郎)に自分の想いを伝える

 『スカーレット』(NHK総合)第140話は、患者を支える家族の葛藤が描かれた。「どうやってお礼したらええか」ともらす喜美子に、ちや子は、投票してくれた一人ひとりに直接お礼を言いたいが、その代わりに議員の仕事を一生懸命やるのだと語る。喜美子に対しても、「川原喜美子は母親であると同時に陶芸家や。今の思いを作品に込めたらええねん」とアドバイスした。

 ちや子は喜美子にとって姉のような存在だ。喜美子が新しい道に踏み出すときには、必ずと言っていいほどちや子の姿があった。女性記者の草分けとして特ダネを追い、学童保育所新設の活動を経て、市会議員として積極的に社会と関わるちや子から、喜美子は知らず知らずのうちに前向きなエネルギーを受け取ってきた。ちや子の助言でふっ切れた喜美子は、治療費を賄うためと検査を受けた人へのお礼の作品づくりに着手する。

 また、ちや子は『スカーレット』の中でシスターフッドを象徴する存在でもある。同じ女性でも、照子(大島優子)が地縁、母まつ(富田靖子)や百合子(福田麻由子)が血縁を代表する一方で、ちや子は、女性が社会的に自立し、自分らしく生きるという命題を背負ったキャラクターとして理解できる。ちや子の履歴は、ウーマン・リブの広がりと重なって見える。

 作陶のかたわら、喜美子は主治医の大崎(稲垣吾郎)から紹介された患者の会に参加する。代表の日高れい子(楠見薫)は、会うやいなや「ようがんばってはるなあ」と喜美子を抱擁。会の主な活動は情報交換や励まし合いであり、日高は骨髄移植について「うちの娘もなかなか見つからんかって」と話す。

 患者の会を主催する日高も当事者同士の連帯を担っているが、病気に関して言えば、病状に応じてその悩みは様々で深刻さも異なる。入院中に知り合った安田理香子(早織)は、日高の励ましに「元気なんて出せるわけないです」と反発して出て行ってしまう。実は、日高の娘はすでにこの世を去っていたのだが、それを知らない理香子は、喜美子や日高の明るい表情を見ていたたまれない気持ちになったのだ。

 病気のことは病気をした人でなければわからないと言われるが、あらためて病気に向き合う難しさを感じさせられる。同じことは、武志と真奈(松田るか)のシーンからも伝わってきた。バイト先を訪れた真奈に、武志は他人行儀な態度を取る。「避けてるやろ。嫌いですか」と聞かれても否定せず、「約束してへん」と言って「お元気で。さいなら」と告げる。

 一縷の望みを託したドナーも見つからず、日増しに進む病状を必死で受け止める武志が、真奈に心をシャットダウンしてしまうことは理解できる。それでも真奈は引き下がらない。「どうでもいいけど、『さいなら』は言わんといて」という言葉に真奈の強さと決意を感じた。(石河コウヘイ)

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