Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ぴあ

いま、最高の一本に出会える

『ベン・イズ・バック』ピーター・ヘッジズ監督が語る、自身の息子ルーカスと築けた新しい関係性

リアルサウンド

19/5/25(土) 12:00

 ジュリア・ロバーツ主演映画『ベン・イズ・バック』が5月24日より公開中だ。『ギルバート・グレイプ』の原作・脚本を手がけたピーター・ヘッジズが監督を務めた本作は、息子を全力で守ろうとする母の決して諦めない愛と家族の絆をサスペンスフルに描いた人間ドラマだ。

参考:ジュリア・ロバーツらがヘッジズ親子について語る 『ベン・イズ・バック』特別映像

 今回リアルサウンド映画部では、メガホンを取ったピーター・ヘッジズ監督にインタビューを行い、本作を手がけることになった経緯や、初めて監督と役者という関係で一緒に仕事をした実の息子であるルーカス・ヘッジズについて話を聞いた。

ーー『ティモシーの小さな奇跡』(2012年)以来6年ぶりの監督作となりましたが、この題材で映画を作ろうというアイデアが生まれたきっかけを教えてください。

ピーター・ヘッジズ(以下、ヘッジズ):僕の非常に親しい友人が、6年前に薬物の過剰摂取で亡くなったんです。そして、5年前にも大好きだった名優のフィリップ・シーモア・ホフマンが薬物依存で亡くなって、その同じころにも友人が、一命をとりとめたものの薬物の過剰摂取で死にかけました。立て続けにこのような出来事があったので、この問題はどれほど根深いんだろうということを、映画を通して追求したいという気持ちから、この映画は生まれました。

ーー本作もそうですが、あなたがこれまで手がけてきた作品には“家族”が描かれているという共通点があります。映画で“家族”を描くことに惹かれる理由、またその醍醐味は何でしょう?

ヘッジズ:素晴らしい質問ですね。私もなぜこんなに“家族”というテーマに執着するんだろうと自分自身に問いかけているんですけれども、まず、“家族”というものは私にとって何よりも大切なものなんです。そして、自分の友人や他の家族にとても興味があります。特に、脚本を書き始める前に、自分と意見が合わない人物や、歴史上の極悪人とされている人が、オムツを履いている姿を想像するんです。子供時代の彼らはどうだったんだろう……と。というのも、“家族”というのは最も普遍的で、誰しもに共通する最小単位だと思うんです。みんなそれぞれに家族がいますし、一つひとつの家族が独自のもので、一つたりとも同じものは存在しない。だから、いろんな家族の形に惹かれるんです。

ーージュリア・ロバーツの演技は彼女のキャリアの中でもベスト級だったように思います。なぜ彼女にホリー・バーンズを演じてもらおうと思ったのでしょうか?

ヘッジズ:まず個人的に、彼女は私が大人になってからも一番好きな映画スターであり、女優としても大好きでした。そして彼女には、本当にこのキャラクターが必要とする芯の強さと、脆さというものを同時に表現できる演技力があります。今回は特に、ホリーは問題を抱えた子供を救うためには何でもする、どんな犠牲でも払うといった固い決意を秘めた母親でありながらも、心の中では傷ついているという複雑なキャラクターで、それを完璧に体現してくれるのではないかという期待もありましたし、彼女が壊れるシーンはどの観客が観ても胸が痛くなるし、泣かせられるようなクオリティがあるのではないかと思いました。この脚本を最初に見せて話をした時に、彼女が褒めてくれたのは、とにかくホリーという母親が、どんなことがあっても子供を見捨てないという姿勢に非常に共感したということでした。というのも、彼女は実際の生活でも母親で、このような気持ちは非常に理解できると言っていましたし、この物語は世界中の人々に伝えるべきだと言ってくれました。

ーーそんなジュリア・ロバーツから、ベン役にあなたの息子でもあるルーカス・ヘッジズを提案されたそうですが、その時の心境は?

ヘッジズ:本当にナーバスになりました。ずっと前からルーカスは「父親の映画には出ない」と断言していたので(笑)。彼の言い分としては、「一緒に仕事をしたい監督はいくらでもいるけれども、父親は1人しかいない。お父さんには監督ではなくて、純粋に自分の父親でいてほしい」ということでした。私もそれを聞いて納得していましたが、ジュリアに最初に会いに行った時に、ベン役の候補者リストを持って行ったら、「いやいや、あなたの息子のルーカスがいいわ」と言われたんです。そんなこと考えてもいなかったので、自分でもかなり驚きました。「ルーカスは父親の映画には出ないと断言していたし、出てくれないと思う」という話もしましたが、ジュリアは非常に粘り強くルーカスがいいと言っていました。彼女の息子の1人がたまたまルーカスと同じように赤毛なんですが、その息子と写っている写真まで送りつけてきて、「ほら、私と赤毛の青年との画ってすごくよくない?」というようなメッセージを送ってくるぐらい諦めなかったんです。それをルーカスに伝えたら、「そこまでジュリア・ロバーツが言うなら」ということで、出るか出ないかは置いておいて、まず脚本を読んでくれたんです。それで、脚本を読んで気に入った彼が、今回限りは掟を破って出ようと決めてくれました。理由として、脚本が世に伝えるべき物語であると共感してくれたのと、やっぱりジュリア・ロバーツと共演できるというのが、彼にとっては大きな魅力になったみたいですね。

ーールーカスとは本作についてどのような話し合いをしましたか? 監督をする上で、父親であることが功を奏したこと、一方でそれがハードルになったことがあれば教えてください。

ヘッジズ:非常にナーバスな部分があって、息子を失望させてしまうのではないかと思っていました。彼はこの若さで錚々たるキャリアを築いていて、それこそ『マンチェスター・バイ・ザ・シー』に始まり、『レディ・バード』『スリー・ビルボード』『ムーンライズ・キングダム』から『グランド・ブダペスト・ホテル』まで、いろんな素晴らしい名監督たちと素晴らしい作品でキャリアを培ってきて、今の彼が欲しているようなふさわしい映画撮影の体験というものを、私の力では与えられないのではないかと自信がなかったんです。いざ撮り始めてみて一つよかったなと思う部分は、彼とこれまでに体験したことのなかった新しい関係を築くことができた点かと思います。自分にとっても新鮮でしたし、父親と息子という関係ではなく、いわゆる仕事仲間という関係でした。撮影中も彼はあえて私のことを「お父さん」とは呼ばずに、「ピーター」とファーストネームで呼んでいましたし、私も彼を自分の映画のキャストの1人として距離を置いて、あまり一緒に居たりつるんだりということはしませんでした。ジュリアとは会った瞬間から意気投合して素晴らしい関係を築いていましたけれどね。いろんな意味で、この脚本は自分にとってもともと特別な一作だったのですが、自分の息子を迎えて一緒に映画を作れたことで、より特別な一本になりました。(取材・文=宮川翔)

アプリで読む