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大槻ケンヂ楽曲と久米田康治原作アニメはなぜ相性が良い? 『さよなら絶望先生』と最新作『かくしごと』から考察

リアルサウンド

20/4/8(水) 6:00

 4月2日から放送がスタートして話題を集めている、アニメ『かくしごと』。原作が久米田康治、主人公・後藤可久士の声を神谷浩史が担当ということで、思い出されるのはアニメ『さよなら絶望先生』だろう。そこで、もうひとり忘れてはならないのが、“大槻ケンヂと絶望少女達”として同作のOPテーマ「人として軸がぶれている」などを手がけた大槻ケンヂの存在だ。アニメ『かくしごと』とでも、久米田康治ワールドと大槻ケンヂのコラボが実現し、6月17日にコラボCD『愛がゆえゆえ/あれから(絶望少女達2020)』がリリースされる。久米田作品と相性抜群の大槻ケンヂ楽曲。両者を引き寄せ合うものとは?

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■話題のアニメと大槻ケンヂがタッグ

 アニメ『かくしごと』は、講談社『月刊少年マガジン』で連載中の久米田康治による漫画が原作。主人公でマンガ家の後藤可久士が、小学4年生の娘・姫に自分がマンガ家であることを隠しながら暮らす様子をコミカルに描いた内容で、マンガ家という職業の裏側を描いたコメディでありながら、ほのぼのとした親子のホームドラマという側面も持つ異色作だ。人気マンガ家である自身をネタにしたシニカルさと、洗練されたタッチの絵も相まって幅広い読者から人気を得ている。

 この『かくしごと』と大槻ケンヂのコラボCD『愛がゆえゆえ/あれから(絶望少女達2020)』は、両曲の作詞を大槻ケンヂ、作編曲を特撮のメンバーで、アイドルからアニソン、ドラマの劇伴などを手がけて活躍するNARASAKIが担当している。「愛がゆえゆえ」は、歌唱を“大槻ケンヂとめぐろ川たんていじむしょ”が務めた。めぐろ川たんていじむしょとは、可久士の娘・姫が小学校のクラスメイト=古武シルビア、東御ひな、橘地莉子と結成した4人組で、劇中では小学生らしい好奇心と可愛さで可久士らを翻弄する。

 メンバーには、『からかい上手の高木さん』や『LISTENERS リスナーズ』などで人気の高橋李依(姫)を筆頭に、『BanG Dream!』の氷川日菜などで人気の小澤亜李(シルビア)、『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』のメイプルで話題を集めた本渡楓(ひな)、そして1月にソロデビューも果たしている和氣あず未(莉子)といった、今をときめく声優陣が名を連ねる。それぞれ数多くのキャラクターソングを担当しており、歌唱力に定評があるだけに期待度も非常に高い。

 もう1曲の「あれから(絶望少女達2020)」は、2007年からアニメ放送された久米田の代表作『さよなら絶望先生』の主題歌などを担当した、大槻ケンヂと絶望少女達が約10年ぶりにタッグを組んだことで話題だ。“絶望少女達”は、アニメ『さよなら絶望先生』シリーズに登場する女生徒役を務めた、野中藍、井上麻里奈、小林ゆう、新谷良子、沢城みゆきらの声優によるキャラクターソングユニット。大槻ケンヂと絶望少女達として主題歌や挿入歌など数多くの楽曲を歌い、2009年にイベント『Animelo Summer Live 2009 -RE:BRIDGE-』に出演した他、東京・日比谷野外大音楽堂でワンマンライブを開催するなどして人気を集めた。その大槻ケンヂと絶望少女達の約10年ぶりの復活とあって、当時ファンの間で期待が高まっている。

■シニカルさの共鳴で生まれたコラボ

 アニメ『さよなら絶望先生』シリーズの例からも、久米田作品と大槻ケンヂは非常に相性が良い。それはシニカルという両者共通の持ち味が、共鳴しているからかもしれない。まず久米田の作風として、社会風刺とパロディ精神が挙げられる。ブラックコメディ漫画として現在も根強い人気のある『さよなら絶望先生』では、仲間の漫画家の作品をネタにしたり、その時代のニュースを揶揄したり、次はどんなネタが飛び出すか、ファンはそれを楽しみにした。アニメ『かくしごと』ではマンガ家である自らをパロディしながら、第1話では人気おしゃれスポットや有名コーヒーチェーンが、サブカルの対極にあるものとして描かれた。皮肉を辛辣に、しかし決してシリアスに陥ることはなく、思わず笑ってしまうユーモアで包み込んだ表現手法は、可愛く例えると、甘いのに舐めると口のなかでハジけて舌を刺し、そんな刺激が癖になるパチパチキャンディーのようだ。

 一方、大槻ケンヂは、サブカルの代表格として知られる。漫画、アニメ、小説、映画、アイドルなど多岐にわたる分野に造詣が深く、自身でSF小説を執筆するほど。大槻原作の『縫製人間ヌイグルマー』は、中川翔子の主演で映画化もされた。また、2018年にメジャーデビュー30周年を迎えたロックバンド・筋肉少女帯では作詞を手がけ、メジャーデビューの翌年の1990年には初の日本武道館公演を開催するなど人気を博した。その人気の一端を担ったのが、大槻のキャラクターと一筋縄ではいかない歌詞の世界観だ。

 「踊るダメ人間」(1991年)などでは世の中を斬り、「トゥルー・ロマンス」(1996年)では最愛の恋人がゾンビになっても愛せるのか? と命題を投げかけ、独自の視点が光っていた。そうした大槻節は、大槻ケンヂと絶望少女達でもいかんなく発揮された。『さよなら絶望先生』OPテーマ「人して軸がぶれている」では、アッパーのハードなサウンドに乗せてアイデンティティというものについてシュールに歌い上げ、『俗・さよなら絶望先生』OPテーマ「空想ルンバ」では、ヘヴィメタルサウンドに乗せて、人の価値というものについての疑問を投げかけていた。重いテーマも決して重く聴こえないのは、人気女性声優によるユーモラスで可愛らしいコーラスによるものだろう。また「人して軸がぶれている」は、昨年開催された『平成アニソン大賞』で、企画賞にノミネートされている。

 久米田作品と大槻ケンヂの歌詞の世界観は、非常に近しい感受性が感じられ、出会うべくして出会ったと言って良いだろう。『かくしごと』とのコラボは、もはや必然だ。大槻ケンヂと“めぐろ川たんていじむしょ”の4人が、「愛がゆえゆえ」でどんな新たな化学反応を起こすのか。また、絶望少女達との10年ぶりのコラボによる「あれから(絶望少女達2020)」は、どんな新たな衝撃を与えてくれるのか。シニカルの共鳴から生まれた2曲のコラボソングに熱い期待が寄せられている。(榑林 史章)

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