和田彩花の「アートに夢中!」
国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展
毎月連載
第20回
国立西洋美術館設立のきっかけとなった、神戸の実業家・松方幸次郎が1910〜20年代に収集した西洋美術のコレクション“松方コレクション”の100年にも及ぶ歴史を振り返る『国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展』。当初はモネやゴーガン、ゴッホからロダンの彫刻、近代イギリス絵画、中世の板絵、タペストリーまで多様な時代・地域・ジャンルからなり、日本のために買い戻した浮世絵約8000点も加えれば1万点に及ぶ規模だった同コレクションだが、第二次世界大戦前後にその多くが世界各地に散逸。フランスに接収されていた作品のうち375点が戦後、“松方コレクション”として日本へ返還された。国内外に散逸した作品約160点が奇跡の再会を果たした同展。国立う西洋美術館にはよく足を運び、コレクション展を鑑賞することも多いという和田さんだが、改めて同コレクションとどのように向き合ったのだろうか。
コレクションの成り立ちを
追体験できる展覧会
まず単純に、一人であの時代にこれだけの作品を収集できたということにも驚いたのですが、松方幸次郎さんがどのように作品収集をしてきたのか、それをちょっと追体験できるような展示方法も、新しい発見があってとても面白かったです。
昔から「●●コレクション」と題された展覧会、とても多いですよね。でもその多くが、もちろんどのように作品収集をその人が行ってきたかということを説明してくれてはいますが、作家別、時代別という展示が多いように思うんです。
でも今回は、時代やテーマ別に展示されているだけでなく、国別で分かれているのも面白いなと思いました。だから、松方さんがこの時代、どの国でどんな作品を買ったのかっていうのを教えてくれて、ますます理解が深まると思いました。
ドガがマネを描く
そして破く
今回一番楽しみにしていた作品は、なんと言ってもエドガー・ドガがマネ夫婦を描いた《マネとマネ夫人像》です。
タイトルの通り、ドガがマネ夫婦を描いたもの。ドガとマネが作品を互いに交換した時に、ドガがマネに送った作品です。でもマネが、ピアノを弾いている奥さんの顔が気に入らない! と、カンヴァスをバッサリと切断してしまったといういわくつきの作品なんです(笑)。
もちろんドガは激怒して、作品を取り返したそうです。そして奥さんの顔を復元するためにカンヴァスを付け足したのですが、先延ばしにしているうちに、結局そのままの状態で置かれてしまっていたそうです。
実際に作品を生で見てみると、破られた切り口はガタガタで、勢いに任せてマネが切ったのがわかります。