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『野ブタ。』が迎えた“ハッピーエンド” 亀梨和也×山下智久×堀北真希が見つけたもの

リアルサウンド

20/6/21(日) 12:15

 突然転校することが決まった修二(亀梨和也)。一方で信子(堀北真希)はいつのまにか学校中の人気者となり、写真やサインを求められるように。そして転校することを彰(山下智久)と信子になんとか打ち明けた修二は、行くべきか迷い、結局弟の浩二(中島裕翔)のことを考えて決意を固めるのだ。「“誰かのために”ってのは、“自分を大事にしてない”ってことなのかな? 野ブタのために一所懸命やっている時が一番自分らしかった」。修二が彰に語るこの台詞は、作品の核心をついているように思える。それは誰かのために動くことが、直接的に自分を見つける/見つめるきっかけになるということだ。

参考:詳細はこちらから

 6月20日に放送された『野ブタ。をプロデュース 特別編』最終話(日本テレビ系)。ドラマ終盤では修二と彰、信子の3人の関係性にフォーカスがあたり、当初の目的だった“プロデュース”そっちのけで極めてオールドファッションな友情の形が描かれていくシンプルな青春ドラマに変化するということ。また、原作同様に修二が転校するというラストを迎えながらも、そのニュアンスは限りなく希望が込められたポジティブなものへと脚色されているということ。この2点は初めて観た時から15年経ったいまでも何となく覚えてはいたが、こうして改めて観てみれば、なかなか不思議な作りをした最終話という印象を抱いてしまった。

 そもそも物語の大枠となる、信子に嫌がらせをしていた蒼井(柊瑠美)とのエピソードは前回の第9話でひとしきり完結しており、最終話に必要とされていたのは修二たち3人の“別れ”という部分だけだ。その結末に向かうために、(おそらくこれまで描ききれなかったのであろう)様々な要素がオムニバスさながらにぎっしりと詰め込まれていくのである。彰が自分を下の名前で呼んでほしいと修二と信子にお願いするくだりや、巫女の格好をした信子が“野ブタパワー注入”をしたり、“一番大事な人”が修二なのか彰なのか答えを出せないくだりをコミカルに描いたり。また横山(岡田義徳)が修二に「自分が勝てるところで勝負すればいい」と言葉を贈る部分や、佐田(夏木マリ)から渡された“2つ集めると幸せになる”という人形を、3人がプレゼント交換でそれぞれ贈り合うシーンなどなど。トーンもテーマも異なるいくつもの挿話がバラバラに組み合わさってひとつのエピソードを構成していくのである。

 そういったなかでとくに目を引いたのは、とにかく走る信子の姿であろう。これまでのエピソードでも、信子が走るシーンというのはたしかに何度か描かれていた。第1話ではいじめっ子たちから逃げるために、第3話では父親の乗ったタクシーを追いかけるために、第8話では修二を避けるために猛ダッシュしていたりと、そのいずれもが追う・追われる、ないしは急いでいるという目的のために走っていたわけだ。しかしこの最終回で彼女が走るシーンは、そのいずれとも意味が異なる。感情が、しかも限りなくポジティブな感情が抑えきれなくなっているかのように無軌道に走るのだ。終盤でまり子に自分が笑えているかを訊ねると、突然走り出してガッツポーズをする。第1話で帯びていた負のオーラが完全に消え去って、その行動とともに全身から放たれる正のオーラ。これこそが、サインをねだられるシーンよりも明確に“プロデュース”の成功を表現しているのだ。

 さて、『未満警察 ミッドナイトランナー』の放送延期に伴って、こうして『野ブタ。』が全話再放送される運びとなったわけだが、その反響も視聴率についてもかなり上々だと聞く。ここ数年、それまで各局で夕方などに設けられていたテレビドラマの再放送枠がすっかり無くなってしまい、CSなどの有料放送や動画配信サービスを除いては何気なく過去の名作ドラマに触れられる機会が少なくなっている。今期のようなケースはかなりイレギュラーなものではあるが、それでもこうして過去のドラマを“リバイバル”することは、時代の流れやキャスト陣の変化を知るきっかけとなるし、様々な面で意味があるのではないだろうか。これを契機に、各局の再放送枠が復活してくれればと願うばかりである。 (文=久保田和馬)

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