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A3!「Home」に宿る“始まりの存在”としての決意 春組メンバーの個性生かす園田健太郎の手腕

リアルサウンド

20/5/22(金) 6:00

 現在放送中のTVアニメ『A3!』(TOKYO MXほか)のエンディング曲を収めた、シングル『Home/オレンジ・ハート』が5月20日にリリースされた。収録曲である「Home」は、春組(佐久間咲也/CV:酒井広大、碓氷真澄/CV:白井悠介、皆木綴/CV:西山宏太朗、茅ヶ崎至/CV:浅沼晋太郎、シトロン/CV:五十嵐雅)のメンバーが歌っており、アニメの『SEASON SPRING』エンディングテーマとなっている。

(関連:『A3!(エースリー)』第三部開幕 主題歌「モノローグ」と“永遠”をテーマに紡がれる第9幕から新章を考察

 「Home」の作詞・作曲・編曲は、歴代の春組ソングを担当してきた園田健太郎。多数のアニメ主題歌や、アイドル、声優の楽曲を手がけてきた園田の持ち味は、作品やキャラクターに合わせて細やかにカラーを変える柔軟さ、そして、ストリングスやピアノを組み込んだ華やかなアンサンブルで展開する、明るく広がりのある曲調だ。その手腕が、『A3!』春組の音楽にも大いに発揮されている。

 もともとはスマートフォン向けアプリゲームである『A3!』は、MANKAIカンパニーを舞台に、春組・夏組・秋組・冬組の4つの演劇ユニットの劇団員たちと交流し、成長していく役者育成ゲームだ。現在『SEASON SPRING & SUMMER』と銘打たれたアニメで放送されているのは、春組と夏組にフォーカスしたストーリーで、まずは春組のパートから描かれている(この5月より夏組をフィーチャーした『SEASON SUMMER』がスタート)。

 物語は、借金まみれのMANKAIカンパニーを立て直しするところから始まる。劇団員1名の状態から団員をそろえて「春組」を結成し、初公演の成功を目指す。なかばかき集めのような5人は、全員が演劇未経験。しかも、サラリーマンから学生、外国人を含む、年齢も職業も国籍もバラバラのメンバーだ。ゼロどころかマイナスに近い状態からスタートした春組の前には、関係値ができていないがゆえのすれ違い、経験のなさからの失敗、演劇に対する気持ちの温度差、成功しなければ次がないというプレッシャーなど、いくつもの困難が立ちはだかる。

 だが、彼らは前向きさを捨てず、手探りながらも前に進んでいく。最初のユニットテーマ曲である「Spring has come!」には、そんな前向きな春組らしさがいっぱいに詰まっている。きらめくような音の連なりが生み出すメロディ、そのなかで歌われる〈いつか春爛漫の街角に 僕ら色した花を咲かせましょう〉という景気のいいフレーズのサビは、聴いているとぱっと心が華やぐようだ。

 また、組み込まれたキャラ同士のかけあいも楽しい。日本語が苦手な外国人団員・シトロンのボケたセリフや、二面性のあるゲーマー・茅ヶ崎至の素が出る瞬間など、キャラクターソングも手がける園田の、キャラの個性を生かすテクニックが光る。個性豊かなメンバーをひっくるめて受け入れる〈少しちぐはぐなのがいいじゃない?〉という歌詞が象徴的だ。

 そんななかで今回リリースされた「Home」は、「居場所」や「家族」などのテーマを強く感じさせる楽曲となっている。ミドルテンポの曲は、明るさに加え、より優しく、やわらかなメロディが印象的だ。そして、「Home」というタイトルや〈きっと「いつか」の「どこか」で巡り合えたなら僕らは家族になれる〉という歌詞に見られるように、春組のメンバーが一つになっていくさまを描いており、メッセージ性も強い。

 両親を亡くし、親戚の家を転々としながら、居場所を見つけられずに生きてきた佐久間咲也。自由奔放で、周囲との合わせ方を知らない碓氷真澄。劇作家になりたいと思い続けながら、家計を支えるために夢を後回しにし続けてきた皆木綴。夢中になれることを見つけられずに生きてきた茅ヶ崎至。生まれた国を離れ日本にやってきた、訳ありらしきシトロン。それぞれが寄る辺なさを抱えた5人が、不器用ながらぶつかり合い、助け合っていくことで、自分たちの居場所を手に入れていく。そんな彼らの試行錯誤の関わり合いが、〈言葉の裏 視線の奥 隠しきれない想いすらも受け止めよう〉という詞につまっている。

 〈僕らはまだ それを知らない 独りじゃないそんな毎日を〉。決して順風満帆ではないが、歩き続けていれば芽吹くときがくると信じる芯の強さと、これから楽しいことが起こるようなワクワクした予感は、春組のナンバー全体に通底するものだ。そしてそれは、少しずつ明るく、あたたかくなっていく春という季節にも似ている。

 まっさらな状態から5人が作り上げた、春組というホーム。その功績がもたらしたものは、実は彼らの居場所だけではない。春組の活躍があったことで、崖っぷちだったMANKAIカンパニーは夏、秋、冬組へと続く足がかりを得て、より大きくなっていく。

 2018年にユニットの新テーマとして発表された「春ですね。」では〈春は始まりの季節〉、〈春は再会の季節〉と歌われている。『A3!』の物語が続いていく中で、いつも軽やかに4組の先陣を切る春組は、春の季節と同じく、輝かしい始まりの存在といえる。そんな彼らの道のりを、園田健太郎が手がけた花開くようなメロディは、より華やかに彩っていくことだろう。(満島エリオ)

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