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躍進続く長澤まさみの女優人生 『キングダム』『コンフィデンスマンJP』で引き出しの多さを見せる

リアルサウンド

19/5/23(木) 7:00

 公開初週(5月18日から19日)の全国映画動員ランキングで首位を獲得した映画『コンフィデンスマンJP』で女性信用詐欺師ダー子を演じる女優の長澤まさみ。2018年4月クールに連続ドラマとして放送されて以来、ダー子の背景はほぼ描かれていないにも関わらず、長澤の弾けた演技は多くの人の印象に残り、イベントではアイドルさながら「ダー子ラブ」といったプレートが散見できるなど、人気キャラクターとなった。近年さまざまな役柄に挑み、ダー子のような特異なキャラクターをものにするなど、目覚ましい活躍を遂げる長澤のキャリアを振り返ってみたい。

【写真】ダー子たちの4人目の仲間・モナコ

■小6でグランプリ受賞、女優業には「危機感を持って」

 東宝が主催する「第5回東宝シンデレラオーディション」で、当時小学校6年生ながらグランプリを獲得した長澤。2000年に映画『クロスファイア』でスクリーンデビューを果たすと、2003年公開の『ロボコン』で初主演、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞する。その後も、映画・ドラマでキャリアを重ねてきたが、その名を大きく知らしめたのは、2004年公開の映画『世界の中心で、愛をさけぶ』だろう。

 本作で、白血病におかされる高校生・広瀬亜紀を演じ、その瑞々しい演技は多くの反響を呼び、第28回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞した。17歳での受賞は、史上最年少という快挙だった。翌2005年からは、『タッチ』、『ラフ ROUGH』、『涙そうそう』、『そのときは彼によろしく』など主演映画が相次いだ。

 しかし長澤自身は以前筆者が行ったインタビューで「私は『東宝シンデレラ』オーディションでデビューしているのですが、大きな会社ですし、安定しているというイメージもある。ただ若いころから得をしている人間だと思ったら負けだと思い、努力しないといけないという気持ちはずっと持っていました」と語っているように、常に危機感を持って女優業へ取り組んでいた。

 こうした長澤の発言のとおり、作品が続くなか、自身の持つ清潔感のあるポテンシャルを活かしつつも、貪欲にいろいろな役にチャレンジした。2011年公開の映画『モテキ』では、雑誌編集者のサブカル系女子・松尾みゆきを演じ、森山未來演じる幸世を手玉に取る小悪魔ぶりを発揮。仕事に向き合う姿勢など、これまでの“ピュア”というイメージを残しつつも、相手を振りまわす女性を好演。男性ばかりではなく、女性からも、嫌味のない可愛らしさは賞賛された。

■役柄の幅を広げ、ワクワクする女優へ

 さらに2017年上演された松尾スズキ演出のミュージカル『キャバレー』では、大胆な衣装を身にまとい、サリー・ボウルズ役を熱演。妖艶な佇まいを持ちつつも、長澤の持つ清廉さもしっかり活かされており、自らの持つパーソナリティを役柄に落とし込むことができる女優という印象を持った。その後も、NHKの大河ドラマ『真田丸』(2016年)で演じた“きり”や、黒沢清監督の『散歩する侵略者』の怒れる妻・加瀬鳴海など、一筋縄ではいかないキャラクターを演じ、役柄の幅を広げていった。

 このころには、出演作が発表される際「こんな役なんだろうな」と想像できる女優から「どんな役をやるのだろう」と次回作がワクワクする女優という評価になった。そんなか、現在公開中の映画『キングダム』では、山の民を束ねる女王・楊端和を好演。その圧倒的な存在感と美しさは、これまでの長澤に「力強さ」という新たなイメージを植え付けた。

■『コクリコ坂から』『君の名は。』“声”の演技

 また長澤を語るうえで欠かせないのが“声”の演技の説得力だ。声優として2011年に公開された『コクリコ坂から』で主人公・松崎海や、2016年に公開され歴史的大ヒットを遂げた『君の名は。』では、主人公のアルバイトの美人でお洒落な先輩・奥寺ミキの声を担当し、素朴ながらも物語の世界観にピッタリとはまる表現力の高さを見せていたが、長澤自身も、以前のマネージャーから「女優は一に声、二に顔、三に姿」という言葉を教わり、女優という仕事をする上で、声のトーンが果たす役割はとても大切だと意識しているとインタビューで話していた。前述した『世界の中心で、愛をさけぶ』でも、劇中、カセットテープによる交換日記の長澤の語りは、圧倒的な存在感と表現力だった。“声”という視点で長澤を見ると、また違った趣が感じられる。

■長澤の懐の深さをあらわす“ダー子”

 作品ごとに違った魅力を提示する長澤。『コンフィデンスマンJP』では、前述したように、背景がまったく描かれないなか、とにかくハイテンションで“オサカナ”と呼ぶターゲットを騙し、大金をせしめる天才詐欺師ダー子を痛快に演じている。

 脚本を務める古沢良太は、ダー子というキャラクターを「あてがき」と話していたが、長澤は「古沢さんは私のなかにある“意外にお調子者”な部分を見抜いていたんだと感じました」(クランクインより)と、自らの性格を投影している部分もあることを述懐している。デビューから19年という歳月を経過しているが、まだまだ引き出しはいっぱいあるのだという長澤の懐の深さをあらわすエピソードだ。

 この言葉通り、劇場版でもダー子は“お調子者”ぶりを発揮しつつ「ロマンス篇」と銘打たれているだけあり、しっとりとした“魅せる”演技も披露している。ダー子の相棒として活躍するリチャード役の小日向文世は「もう代表作と言ってもいいと思う」(映画.comより)と長澤の演技を絶賛する。

 作品ごとに“進化”を続ける長澤。インタビューやイベントでも「もっと続けていきたい」と語ったダー子。まだまだ伸び代は多そうなキャラクターだけに、シリーズ化を期待するファンは多いだろう。

(磯部正和)

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