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眩暈SIREN×しづ『spinoid』の世界観はリスナーに何を与える? 主題歌「滲む錆色」MVから考察

リアルサウンド

19/10/9(水) 18:30

 眩暈SIRENが今年2月に発表した『夕立ち』に続くニューシングル『滲む錆色/紫陽花』を10月9日にリリース。同作から制作された「滲む錆色」のMVが、非常に興味深い仕上がりとなっている。

 「滲む錆色」はマルチメディアプロジェクト「カゲロウプロジェクト」にてキャラクターデザインを担当するしづが、初めて手がけるオリジナルアニメ『spinoid』第1章の主題歌に抜擢。しづはシングル『滲む錆色/紫陽花』のアートワークを描き下ろしたほか、全編アニメによる「滲む錆色」のMV制作も担当しており、8月末には主題歌映像が公開、10月に入ってからは冒頭で『spinoid』の映像が使用されたMVティザー映像も公開され、その一部をいち早く楽しむことができた。

spinoid主題歌「滲む錆色 / 眩暈SIREN」

 眩暈SIRENといえば京寺(Vo)の描く厭世的な歌詞の世界観とバンドの直情的で激しいトラックで「日常の閉塞感や息苦しさやそれを覆う無力感」を表現する個性的な存在。ネガティブな表現やそこから生まれる虚無感は、聴き手に「救い」を与えるのではなく、日々の「終わらない苦しみ」を共有しようという意思が感じられ、日常生活で孤独を感じる多くの若者から支持を集めている。

 しづは今回のコラボレーションに際し「自分が元々眩暈さんのファンで曲をいつも聴かせて頂いていたので、歌詞や音作りから今の創作活動に多大なる影響を受けていると感じています」とコメントを寄せており、しづ自身も眩暈SIRENにシンパシーを抱いてることが伺える。そんな2組がタッグを組んで生み出したスペシャルな映像は、先にも記したようにとても印象に残る内容で、解釈によっていろいろな捉え方ができる作品だ。

 MVはシングル通常盤のジャケットに登場する謎のキャラクターと、黒いフードを被った中身が不定形のキャラクターを軸に進行していく。謎のキャラクターは鳥のくちばしのようなものがフードから飛び出し、ツノようのようなのも見受けられる。黒い服装の中からは肉体ではなく骨が浮かび上がっており、その姿は死神のようにも見える。そして天にまで伸びた赤い紐も特徴的で、MV冒頭では〈「汚れてしまえ」と鉄を噛むよう 瓦礫の海に溺れた〉という歌詞にあわせて、天まで伸びた赤い紐がもう一人の黒いフードのキャラクターを引き寄せる。もしこの謎のキャラクターが本当に死神だとしたら、赤い紐で引き寄せる様は「死期の迫った者を手繰り寄せている」ようにも解釈できる。紐を彩る赤は、どこか血をイメージさせるところもあり、生と死をつなぐ最後の手綱が血の色というのも頷けるものがある。

 赤い紐で手繰り寄せられた黒いフードのキャラクターは、中身が不定形なこともあり匿名性が高い。これはもしかしたら明日の自分の姿かもしれない……「滲む錆色」の歌詞と相まって、気づけばMVの中のキャラクターと自分が重なって見えるというリスナーも少なくないのではなかろうか。

 ところが、しづによるとこのキャラクターは『spinoid』に登場する「あるもの」の象徴とのこと。MV中に挿入されるカットの数々は、その「あるもの」に関連する作中での史実を表現しているという。つまり、今回のMVはリスナーの「自分との対峙」を表したものであると同時に、『spinoid』という作品のヒントも隠されたスピンアウト的な役割も果たしているわけだ。「滲む錆色」と『spinoid』という2つの作品を通して見えてくる世界は、果たしてリスナーに何を与えるのか。いや、もしかしたら今とは何も変わらないかもしれない。それでも、我々は眩暈SIRENが作り上げる世界観から抜け出せないし、そんな我々だからこそ「滲む錆色」後半の〈こんなに傷つけ合ってしまえるのは僕等が同じ様に願うから〉というフレーズが強く響くのだから。

 「滲む錆色」の話題に終始してしまったが、今回のシングル『滲む錆色/紫陽花』はもうひとつの両A面曲「紫陽花」や、カップリング曲「九月一日」も聴き応えのある楽曲だ。「紫陽花」は今年3月から1分動画メディア「WATCHY」で公開されたショートムービー『終わらない世界』の主題歌。『終わらない世界』自体が眩暈SIRENの楽曲や歌詞の世界観をもとに脚本・映像化した作品であり、その親和性に関しては言うまでもないだろう。

 もう1曲の「九月一日」も、今年9月1日にバンドの地元・九州を含むラジオ番組にて初解禁された楽曲で、“子どもの自殺が一番多い日”と言われる夏休み明けの「9月1日問題」をテーマにしたもの。昨今この問題はさまざまなメディアで取り上げられており、今年はNHK Eテレにて8月31日夜から日付の変わった9月1日未明まで『#8月31日の夜に。~2019年夏休み ぼくの日記帳~』と題した番組が10代に向けて生放送されたことも記憶に新しい。眩暈SIRENはこの曲とともに、生きることを選択した者/死ぬことを選択した者に向けて「僕らの曲はずっとあなたの隣にいます」とメッセージを添えている。この曲は日常生活でさまざまな悩みを抱える10代はもちろん、かつて10代だった大人たちにも響くものがあるのではないだろうか。

 筆者はかつて、眩暈SIRENの楽曲に対して「同じ状況下にいるリスナーにとっては(たとえネガティブな表現であっても)ポジティブに響くのではないだろうか」と評したことがある(※参照:“ネガティブの共有”から生まれる新たなシーン 眩暈SIRENら若手アーティストの台頭から紐解く)。今回のシングルに収められた3曲も聴き手の背中を優しく押してくれるようなタイプとは異なるものの、常にリスナーの隣にいてくれるという意味では間違いなく“生きていくうえでの手助け”になるはずだ。

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

■リリース情報

眩暈SIREN 両A面シングル『滲む錆色/紫陽花』
発売日:2019年10月9日(水)
初回生産限定盤(CD+DVD)
¥2,200(税込)SRCL-11245~46

通常盤(CD) 
¥1,320(税込)SRCL-11247
※初回・通常共通:完全招待制ライブ『音が孤独を覆うまで Special Live 』応募券封入

<CD収録内容>※初回・通常盤共通
1.滲む錆色
2.紫陽花
3.九月一日

<DVD収録内容>※初回生産限定盤のみ
2019.02.10『囚人のジレンマ TOUR2019』
@ 渋谷 WWW X ライブ映像
1.ジェンガ
2.HAKU
3.偽物の宴
4.空気より透明な
5.夕立ち

■ライブ情報
音が孤独を覆うまで Special Live
開催場所:品川教会グローリア・チャペル
開催日程:10月18日(土)Open  17:00 Start 18:00
CD購入者限定、完全招待制ライブ
CD封入抽選受付期間:2019年10月8日(火)12:00~10月14日(月・祝)23:59
※1人2枚まで応募可能
※公演当日CD封入リーフレットを必ずご持参ください。
リーフレットご持参頂けない場合はご入場出来かねます。
予めご了承頂けますよう宜しくお願い致します。

<当日ご持参頂きたいもの>
1)入場券(チケット)
2)CD封入リーフレット
3)申し込み者のみID (身分証明書)が必要です。
※同行者の方はID CHECKの必要はございませんが
「申込者の方と必ず同時にご入場ください」

■関連リンク
眩暈SIRENオフィシャルサイト

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