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宮野真守&北乃きいが歌う愛の悲劇。ミュージカル『ウエスト・サイド・スト ーリー』観劇レポート

ぴあ

ブロードウェイミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』 (c)WSS製作委員会/撮影:田中亜紀

ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』が絶賛上演中だ。世界中を魅了したあの高揚感みなぎるナンバーと共に繰り広げられる、暴力と抗争の街で生まれた愛の物語。現在上演中のSeason1では、トニー役を宮野真守と蒼井翔太、マリア役を北乃きいと笹本玲奈が務め、連日、IHIステージアラウンド東京の客席を沸かせている。今回は、宮野がトニー、北乃がマリアを演じた11月19日13:30回の模様をレポートしたい。

幕が上がって目を奪われるのが、精緻な舞台美術。1950年代後半のニューヨーク、多くの移民たちが暮らすウエストサイドの風景を、街の息遣いまで感じられるぐらい見事に再現している。客席がぐるりと回転すれば、そこはトニーが働くドラッグストアから、マリアが住むアパートへと早変わり。アジア初の360°シアターの舞台機構をフル活用し、セットチェンジなしに次々と場面が移行していくので、観客はシームレスに作品世界に没頭できる。特に圧巻なのが、決闘の舞台となる高架下。宙に架かるハイウェイが迫力たっぷりにつくりこまれており、そのスケール感は思わず息を呑むほど。

(c)WSS製作委員会/撮影:田中亜紀
(c)WSS製作委員会/撮影:田中亜紀

もちろんダンスも見応え十分だ。『ウエスト・サイド・ストーリー』のトレードマークとも言える脚を高く上げるダンスや、ダンスパーティーでの対決など華やかな見せ場が続く中、第2幕のトニーとマリアが結ばれる「Somewhere」はまるでここだけ別の作品を観ているような不思議な世界観。豪華な舞台装置を排除し、群舞だけでふたりの愛を表現する。それは、霧の中に迷い込んだように幻想的で、そこはかとなく官能的。ふたりの心象風景を映し出したような演出が胸に残った。

そして、この恋物語の中で最もロマンティックなシーンと言えば、トニーとマリアが歌う「Tonight」だろう。ふたりを乗せた小さなバルコニーが前方にせり出したと思ったら、一気に夜空へと駆け上っていく。スクリーンに投影された映像を用いた舞台ならではのマジックだ。胸の高鳴りを表したような疾走感溢れるデュエットが、観客に恋の魔法をかける。目の前に広がる夢の世界に、心ゆくまでうっとりしたい。

(c)WSS製作委員会/撮影:田中亜紀
(c)WSS製作委員会/撮影:田中亜紀
(c)WSS製作委員会/撮影:田中亜紀

キャスト陣も実力派が揃い踏みだ。声優業から歌手業まで幅広く活動する宮野真守は、持ち前のパワフルな歌声でトニーの恋に情熱をもたらす。恋しいマリアを欲するさまは胸の鼓動まで聞こえてきそうなほど激情的で、それがトニーの青さと若さを強く印象づける。どんな台詞もクリアに届ける明瞭な発声と、舞台映えする182 cmの長身。ミュージカル界には多くのプリンスが活躍しているが、宮野にはその勢力図を塗り替えるだけのスター性がある。

北乃きいのマリアも可憐だ。清純さもさることながら、恋に浮かれる年相応の愛らしさをコミカルに演じ、観客を虜に。バレエで培った身のこなしの美しさはこれまでの舞台でも証明済みだが、その歌声の伸びやかさはいい意味で想定外。特に高音部の透明感は、聴く者に心地よい陶酔感を与えてくれる。ミュージカル初挑戦ながらマリアという大役をオーディションで勝ち取った実力を舞台上でしっかりと示した。

ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』Season1は2020年1月13日(月・祝)までIHIステージアラウンド東京にて上演。その後、トニー役を村上虹郎と森崎ウィン、マリア役を宮澤エマと田村芽実が務めるSeason2が2020年2月1日(土)から3月10日(火)まで上演される。さらにその後はSeason3(キャスト未発表)が控えている。

(c)WSS製作委員会/撮影:田中亜紀

取材・文/横川良明

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