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林遣都ロスのあなたに Netflix『火花』ほか、必見“関西弁ドラマ”で振り返るその実力

リアルサウンド

20/4/26(日) 6:00

 林遣都ロスである。

 2019年10月から2020年3月まで半年間、朝ドラ『スカーレット』(NHK総合)で林遣都を観ていたので、終わってしまってからはなんだか朝が物足りない。主役ではないから毎回出ていたわけではないが、終わってみて振り返ると、林遣都演じる信作のシーンが鮮やかに蘇る。

参考:林遣都×大島優子、『スカーレット』の世界観を支えた演技力 “主役”の2人が親友役を演じる贅沢さ

 信作は主人公・喜美子(戸田恵梨香)の幼なじみ。年頃になると、喜美子の妹・百合子(福田麻由子)と結婚する。滋賀県の信楽に生まれ育ち、市役所に勤め、地元を盛り上げるために全力を尽くす。おそらく死ぬまで信楽で過ごすだろうと思わせる人物を、滋賀県出身の林遣都が演じることは同郷の方々にとっては嬉しいことだったろう。やっぱり地元言葉が自然でいい。林遣都の関西弁はいかにも関西弁ですという感じではなくやわらかに響く。兵庫出身の戸田恵梨香とのやりとりも自然に楽しい感じが漂っていた。

 というわけで、『スカーレット』のほかに、林遣都が関西弁を使っているドラマで、配信で観ることができる作品をいくつか挙げてみたい。

●『京都人のひそかな愉しみ Blue 修行中』(NHK総合)

 滋賀県出身の林の関西弁は大阪よりも京ことばに近いのではないかと想像する(あくまで想像です)。だからこそ、京都を舞台にした青春群像劇『京都人のひそかな愉しみ Blue 修行中』(NHK総合)シリーズ「送る夏」(2017年)、「祝う春」(2018年)、「祇園さんの来はる夏」(2019年)の植木職人・見習いの「若林ケント幸太郎」はぴったり。「(若)林ケント(幸太郎)」とは林遣都に当てた役としか思えないが、イギリス人と日本人のハーフ設定で、母親(秋山菜津子)は中京区でBARをやっている。林はナレーションもやっていて、やっぱりやわらかな関西のことば。完璧に京都ことばかというとまた違うのかなとも思うが(その点、京都出身の吉岡里帆はさすがなのである)、ハーフ設定でそこは曖昧になっているのかもしれない。

 このドラマでは林演じる職人のかっこよさが光る。仕事に集中する顔つき、手付きが迫真なのと、職人の仕事着が凛々しい。ハーフ設定で、もともといわゆるバタくさい顔だちながら、頭に手ぬぐいを巻いてもお似合いである。さらに、浴衣をピシッと着て祇園祭に参加するため横笛を吹いている姿にも風情があった。顔は濃い目にもかかわらず、和の精神がみなぎっているのである。「京都人のひそかな愉しみ」は京都の風景も眼福で長く続いてほしいドラマである。

 林遣都と京都といえば、『京都人のひそかな愉しみ』の前に、『漱石悶々 夏目漱石最後の恋 京都祇園の二十九日間』(NHK総合)がある。京都生まれの画家・津田青楓役で、主人公・漱石(豊川悦司)を京都でもてなす。出番はさほどないが、この作品でもナレーションもやっている。やんちゃな地方都市の青少年を演じることもできる林だが、着物を着ると、キリっとして、清潔感と利発さが増幅するように思う。着物の襟元がすきっとなるのは着付けのスタッフさんがうまいのかもしれないが、本人の体型および精神性の現れなんだろうと感じる。

●『火花』(Netflix)

 さて次は、大阪もの。これこそ、やんちゃな地方都市の青年系の最たるものであろう。「関西弁しゃべれます、とアピールしてつかんだ」という『火花』(2016年)の主人公・徳永。又吉直樹の芥川賞受賞作にして大ベストセラー小説をNetflixで配信ドラマ化という話題作の主演。

 林遣都は実に生き生きと大阪弁で新人漫才師を演じていた。漫才コンビ・スパークスのボケ担当・徳永は天才的な笑いの才能をもった神谷(波岡一喜)に魅入られ、弟子入り。彼の笑いの哲学を受け継いでいこうとする。若者が売れる前の黎明期であり、青春時代の終焉。まだスターになる前で可能性と夢だけがあって、かっこ悪いところも含めて、哀愁も伴いながら最高にキラキラと輝いている時期を演じるときに、子供のときから使ってきた関西弁は有効であろう。笑いに対する思いを滔々と語るとき、“実”がたっぷり籠もって聞こえた。スピーディな漫才も、相方とのふだんの会話も軽妙。また、関西弁とは関係ないが、林遣都は強烈な人物に振り回されて、困り顔になる役が似合う。神谷に振り回されて、でもまんざらではない感じが微笑ましい。『スカーレット』でも戸田恵梨香と大島優子に振り回されていたっけ。

●『アオゾラカット』(NHK BSプレミアム)

 もう1作の大阪ものは『アオゾラカット』(2017年)。のちに『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)で春田(田中圭)をめぐるライバルとなる吉田鋼太郎と『カラマーゾフの兄弟』(2013年/フジテレビ系)に続く父子役。父と確執がある息子が母の死をきっかけに大阪・西成に帰郷し、実家の美容院を手伝う。なにかとぶつかり合う父と子だったがやがて……というデリケートな心の動きを描いた作品だ。林遣都はぶっきらぼうで反抗的な、でも内面は愛情を求めているという役を的確に演じている。『京都人のひそかな愉しみ』もそうなのだが、林は鋏の使い方が美しい。『京都人のひそかな愉しみ』では植木鋏、『アオゾラカット』ではヘアカット鋏。金属の鋏のシャープさと林の手指のシャープさがマッチして仕事に対する緊張感が増幅する。髪を切るときの表情もいい。林遣都はまるで鋏を入れるときの儀式のように、今、この瞬間を大切にして見える。

 大阪ものではもう1作、大阪の寒天職人の半生を演じた『銀二貫』(2014年/NHK総合)が林遣都を語るうえで重要だが、残念ながら、これは現在オンデマンドでは観ることができない。林がはじめて時代劇に挑戦した作品で、武士の子供が商人に転身する、その人間的成長を描いたもの。武士道と、身分を捨て市井の民としての生き方の飛距離を演じたことが、その後の林遣都を形作っているのではないかと思う作品である。こちらもぜひ配信してほしい。(木俣冬)

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