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Official髭男dism、1時間に及ぶ『ヒゲダンフェス』ライブさながらのパフォーマンス バンドの深い魅力が伝わる企画に

リアルサウンド

20/8/11(火) 18:00

 「1時間まるごと渡すので好きなようにライブを作って欲しい」という前代未聞のオファーにOfficial髭男dismのメンバーは苦笑いで驚いていた。それも当然だろう。ゴールデンタイムの地上波で放送する音楽番組『CDTVライブ!ライブ!』(TBS系)からのオファーなのだから。「やらせてもらえることは嬉しいですけど現実感はないですね」と語るボーカルの藤原聡。「ドッキリを仕掛けられているみたい」とギターの小笹大輔は笑う。しかしオファーを承諾するヒゲダン。ライブテーマも“お茶の間に伝えるヒゲダンの熱”と決めていた。「座って見てても心にぐっと来て一緒に歌ってもらったり、汗をかけるようなライブにできたらいいなと思います」と藤原は語る。

 ライブを行うことになった経緯や意気込みを伝えるVTRが終わり、いよいよ約1時間に渡る『ヒゲダンフェス』が始まる。始まった瞬間に「テレビ収録ではなくライブだ」と改めて感じた。通常のテレビ番組ならばすぐに演奏が始まるが、メンバーが楽器の前に立ち準備をする様子も映る。ライブ開始直後と同じ緊張感が伝わってきた。

 1曲目は最新作より「HELLO」。オファーを受けたときに苦笑いしていたことが嘘のように、自信に溢れた力強い歌声と演奏。ヒット曲に頼ってオープニングから盛り上げるのではなく、最新曲で盛り上げる。どれほどヒット曲があっても最新のバンドの姿を見せたいのかもしれない。

 同じく今年リリースの新曲「パラボラ」を2曲目に続ける。安定した演奏でしっかりと聴かせた。1時間という枠だからこそ、じわじわと胸に沁み入るような演奏で惹きつける。〈眩い光 放ってみせるよ いつかきっと〉という歌詞を表現するかのように、バックスクリーンには光が弾けて飛び散るような映像が流れる。演出でも楽曲を魅力的に彩っていた。

 「貴重な機会をいただきありがとうございます。短い時間ですが……いや今日は短くないですね」と藤原は笑いながら挨拶をして、丁寧にピアノを弾きながら歌い始める。1stフルアルバム収録の「115万キロのフィルム」だ。トランペットやパーカッションなどサポートメンバーの演奏も加わり、さらに華やかな演奏を響かせる。バックスクリーンには演奏中のメンバーの顔が映っていた。映像演出からはアリーナでのライブを彷彿とさせる。後半に花束の映像が映った理由は、結婚式の定番ソングとして使われることが多い楽曲だからだろうか。ファンの心をつかむ粋な演出である。

 藤原がハンドマイクになると「いつもライブでやっている曲です。地上波で初めてやります」と話し「FIRE GROUND」と次に演奏する曲名を叫ぶ。テレビ初披露だが人気のライブ定番曲だ。サポートメンバーが「オイ!オイ!」と普段のライブと同じように煽り、ファンキーなリズムに自然と体が動いてしまう。炎が吹き出る特効演出でパフォーマンスを盛り上げる。中盤のメタルを感じる演奏が注目部分だ。視聴者の度肝を抜く激しい演奏。物凄い声量で叫ぶように歌う藤原。世間のイメージを覆す演奏のカッコよさに痺れてしまう。

 新曲「Laughter」では壮大で包み込むように演奏をした。照明でメンバーを美しく照らしてはいるが、映像演出や特効などで過剰に演出はしない。演奏だけで世界観を創り上げている。貫禄を感じる演奏だ。

 「Stand By You」でまた盛り上げていく。藤原はハンドマイクで動き回りながら歌い、他のメンバーは手拍子を煽る。普段のライブと同じような盛り上げ方だ。バックスクリーンには過去のライブ映像が映る。観客が手拍子したり腕を上げて盛り上がっている様子がスクリーンに映る。ライブと同じようにバンドとファンの繋がりを感じる、そんな演出をテレビで行っていた。

 そして出世曲になった「Pretender」へ。明るい照明の中で突き抜けるような歌声を響かせる。歌声を支える安定した演奏が心地よい。誰もが認める名曲を、誰もが認める素晴らしい演奏でしっかり届ける。

 「次で最後の曲になります」と告げて最後の曲が始まる。ラストは「I LOVE…」。ラストを盛り上げるように曲が始まった瞬間に銀テープの特効が飛び出た。R&Bの影響を感じる心地よいリズム。メンバーの手拍子やコーラスによって、ゴスペルのように幸福感溢れた雰囲気をパフォーマンスで創り出す。もはやこれはテレビ番組ではない。完全にOfficial髭男dismのワンマンライブだ。それほどに感動的な瞬間だった。

 ライブを終えて「本当にありがとうございました」と言って頭を下げる。ライブを終えた時と同じようにやり切ったことを感じさせる表情をしていた。

 祝日のゴールデンタイム帯のうちの1時間を1組のバンドに費やすことは地上波のテレビ番組では前代未聞だ。しかしそんな前代未聞の企画によって、短い時間では伝えきれないアーティストの深い魅力をテレビを通じて伝えていた。こうした試みが増えていけば、音楽シーンはさらに魅力的なものになるかもしれない。

■むらたかもめ
オトニッチというファン目線で音楽を深読みし考察する音楽雑記ブログの運営者。出身はピエール瀧と同じ静岡県。移住地はピエール中野と同じ埼玉県。‬ロックとポップスとアイドルをメインに文章を書く人。
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