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vivid undress、紆余曲折なキャリアがもたらす音楽の説得力 コンプレックスを肯定した最新作を読み解く

リアルサウンド

20/8/19(水) 16:00

 昨年12月にメジャーデビューを果たしたvivid undressが、8月19日にミニアルバム『変身コンプレックス』をリリースする。本稿では、まだメジャーのフィールドでは新人バンドであるvivid undressの魅力を、『変身コンプレックス』という作品をベースにしながら紐解いてみたい。

 vivid undressは、メジャーバンドとしてはまだ1年目の新人であるが、バンドとしてのキャリアはすでに6年目に突入している。また、元々メンバーはそれぞれシンガーソングライターや別バンドで違った音楽活動を行っており、アーティストとしてのキャリアは豊富に持っている実力派なのだ。その実力を裏付けるように『変身コンプレックス』に収録されている6曲とも、完成度が高い。

vivid undress「主演舞台(SYUEN BUTAI)」MV

 例えば、1曲目に収録されている「主演舞台」は、アコースティックギターの弾き語りで始まる楽曲で、最初のしっとりしたサビ→短めのイントロ→Aメロの入りが秀逸なナンバーだ。“ポップ”がウリの楽曲の場合、楽曲内のメリハリの付け方が重要になってくるが、「主演舞台」はポップソングのお手本にしたくなるほど、このメリハリの付け方が絶妙なのだ。サビを劇的なものにするため、サビ前で短いタメを作り、音を継ぎ足し、それぞれの楽器のボリュームをあげることで音のダイナミズムを生み出している。さらにサビになるとバンドサウンドだけではなく、ストリングスなどを継ぎ足すことで盛り上がりを鮮やかに映しているわけだ。この、バンドサウンドと上モノのバランスが見事で、聴き心地の良さを際立たせている。

 ただポイントなのは、この楽曲が爽やかで聴き心地がいいだけではないということ。アルバムのタイトルが『変身コンプレックス』となっていることからも分かる通り、このアルバムに収録されている楽曲は、コンプレックスに光を当てているところが重要なのである。

 ポップで爽やかに感じるのが“変身後の姿”なのだとしたら、ある種の闇や苦悩も歌の中に内在していることになる。確かに歌詞をみると、その片鱗を垣間見ることができる。「主演舞台」の歌詞で大きく言葉として割かれているのが、主演になった自分の姿ではなく、主演になるまでの悩みや足踏みしている現状だったりするのだ。サビのラストを飾る〈何度だって生まれ変わる〉を言えるようになるまでの自分をフィーチャーしている、とでも言えばいいだろうか。美化した自分ではなく、生まれ変わることを決意する泥臭い自分が歌詞に投影されていると言えば、この歌の魅力がよりはっきりと見えてくるように思う。

 『変身コンプレックス』で特徴的なのは、どの歌も最後のフレーズが決意で終わっているところである。例えば「感情戦争」の〈始めなくちゃ何も変わらない〉、「Make Magic」の〈自信を持って生きてみたい〉「ララ、バイバイ。」の〈生きてから死にたいの〉。すべての歌がコンプレックスを変身させる意志を示して終わっている。歌中で語られるコンプレックスは普遍的なものばかりだ。おそらくメジャーというフィールドに立ち、バンドそのものが変身しないといけないタイミングだからこそ生まれた言葉なのだと思うし、そういう境遇にいるバンドが提示した「変身」だからこそ、どこまでもリアルに響くのだ。

 メジャーデビュー前、2017年に自主レーベルを立ち上げ、着実にバンドが成長していく最中、翌年の初ワンマン開催のタイミングでバンドの中核を担っていたメンバーが脱退。一時は“終わり”が頭をよぎった瞬間もあったというが、そこから自力でバンドを立て直し、今こうやってメジャーシーンに躍り出たというキャリアを持っている。一見すると、綺麗でポップに彩られているように見えるし聴こえるけれど、歌詞に描かれているのは葛藤や苦悩。そのギャップこそが、今作の最大の魅力なのではないか。ひいてはvivid undressが持っている奥行きの広さ、紆余曲折あったからこそ表せる音楽なのだと思う。

 vivid undressは、それぞれが音楽的なキャリアを持っている分、何でも器用にやり遂げてしまう技術があるバンドなのかもしれない。本当はこういうことがやりたいけれど、今回は置きにいった方がいいのか、その器用さが良くも悪くも「迷い」を生んでしまう。ある種の間口の広さを求められるのがメジャーデビューすることの責任なのだから、そういう迷いが出てしまうのも当然ではある。ただ、それでも、単に決められた色に染めるのではなく、自分たちの色を突きつけるような意志をvivid undressは魅せつける。だからこそ、今作では『変身コンプレックス』という、変身する前と後の中間を巧みに描いた作品をリリースしたのではないか、とそんなことを思うのである。

 自身の経験から生まれた変身願望やコンプレックス、そしてそれに対するリアルな感情をカラフルなサウンドで表現したvivid undress。ただ、本作で描かれるテーマはバンドに限らず、過渡期を迎える多くの人々の心情とリンクするように思うのだ。今まさに人生の分岐点を迎える人々のそばに寄り添い、支えてくれる。そんな一枚になってほしいと思わずにはいられない。

■ロッキン・ライフの中の人
大阪生まれ大阪育ち。ペンネームにあるのは自身が運営するブログ名から。人情派音楽アカウントと標榜しながら、音楽メディアやTwitterなどで音楽テキストを載せてます。

■リリース情報
NEW mini ALBUM
『変身コンプレックス』
2020年8月19日リリース
¥1,636+税
<CD>(※全6曲収録)
M1.主演舞台
M2.感情戦争
M3.ファンファーレ行進曲
M4.Make Magic
M5.ララ、バイバイ。
M6.ワンルームミッドナイト

■ツアー情報
『vivid undress presents 変身コンプレックスTOUR ~何が何でもQUATTROで出会いたかったんだ~』[代替公演]
10月5日(月)渋谷CLUB QUATTRO(※ワンマンライブ)
OPEN18:30 / START19:00
チケット料金:¥3,300
※ドリンク代別途

『vivid undress presents 変身コンプレックスTOUR』[代替公演]
10月30日(金)名古屋ell.FITS ALL
OPEN18:30 / START19:00
11月6日(金)札幌SOUND CRUE
OPEN18:00 / START18:30
11月13日(金)福岡Queblick
OPEN18:30 / START19:00
12月3日(木)仙台MACANA
OPEN18:00 / START18:30
12月18日(金)大阪Music Club JANUS
OPEN18:30 / START19:00

チケット料金:¥3,000
※ドリンク代別途

■イベント情報
『PROGRESS PROGRAM vol.22 ~ONEMANやっと出会えたんだ~』[代替公演]
2021年1月17日(日)新宿LOFT
OPEN16:30 / START17:30
チケット料金:¥3,300
※ドリンク代別途

■関連リンク
vivid undress オフィシャルHP
vivid undress オフィシャル Twitter
vivid undress オフィシャル YouTube
vivid undress 徳間ジャパンInformation

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