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第6回:ドラマ『ロキ』がマーベルの“未来”を決める!? 本作の魅力を徹底分析

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マーベルの人気キャラクターを主人公にしたオリジナルドラマ『ロキ』が現在、ディズニープラスで配信されている。本作は“イタズラ好きの神”として知られるロキが、様々な時空間を移動しながら活躍するシリーズだが、今後のマーベル作品の流れを大きく変えてしまう重大な展開が描かれる。

アイアンマンやスパイダーマンなど人気ヒーローを次々に生み出し、今後も気になる新作が待機中のマーベル・スタジオ作品を“決定的に変えてしまうほどの出来事”とは一体、何か?

マーベル・スタジオの“未来”は、ドラマ『ロキ』から始まるのかもしれない。

一体、何が起こっている? ロキが迷い込んだ新たな世界

不思議なハンマー“ムジョルニア”を手に敵に立ち向かう神の子ソーの義弟ロキは、嘘と裏切りを愛する邪悪な神だ。彼は地球征服計画を阻止され、アイアンマンたちに捕らえられるが、不測の事態によって、強大なパワーを秘めた四次元キューブを入手。無事に逃亡……したはずが、時間変異取締局(Time Variance Authority=TVA)という謎の組織に連行される。

たとえば、あなたが去っていく恋人を何もできずに見送ったとする。呼び止めるか、それとも背中を見つめたまま立ち尽くすか? あなたが迷った瞬間、時間は“ふたつ”に引き裂かれる。あなたは彼女を見送ったことが本当に正しかったのか、折に触れて思い返すかもしれないが、おそらく答えは出ないだろう。

しかし、TVAでは本来の正しい歴史の流れ=神聖時間軸が存在すると主張し、それとは違う時間軸=選択をとった者は“変異体”として剪定=排除されてしまう。彼らは現在の我々が生きている時間とは異なる時空間に移動し、歴史の流れを変えてしまう要因を取り除いてきたという。

ロキもまた“変異体”として裁判にかけられるが、自由の身になることと引き換えに、様々な時空間に出現しては歴史の流れを変えてしまう凶悪な人物を追うことを提案される。どれだけ捜査し、追跡しても、捕らえることができない手強い変異体。それは別時空間の“ロキ”だった。

ロキはTVAエージェントのメビウスとタッグを組み、様々な時空間を移動する中で、ついに別の世界のロキ=シルヴィに出会う。シルヴィは女性のロキで幼少期にTVAに捕まるが逃亡し、ずっとひとりで様々な時空間を移動しながら生き延びてきた。

歴史の流れが違ったならば、自分ではなく彼女がロキだったかもしれない。シルヴィはTVAを司る“タイムキーパー”こそがすべての元凶だと言い、ロキは彼女と行動を共にするうちに、次第にTVAやそこで働くエージェント、そして“正しい時間を守るために、他の歴史を排除すること”に疑問を持ちはじめる。

正しい時間とは一体、何なのだろうか? それは誰が決めるのか? 仮に正しい時間があるとして、その中で自分はどのように生きればいいのだろうか? この瞬間の行動や選択が“変異”ではないとなぜ、わかるのか?

ロキとシルヴィは様々な時空を移動し、危機を乗り越え、別の時空間のロキたちに出会い、やがてタイムキーパーの正体にたどり着く。それは彼らの想像をはるかに超える衝撃の真実だった……。

迷い、変化し、恋をする!? 本作でわかったロキの真の魅力

『マイティ・ソー』や『アベンジャーズ』に登場したロキはイタズラが好きで、相手を翻弄し、本心を見せず、野心を秘めている邪悪な人物だった。その一方で、誰よりも愛されたいと願い、本当は家族を尊敬し愛しているのに逆に行動をとってしまう哀しくもせつない面が描かれた。

長年に渡って彼を演じてきたトム・ヒドルストンは「ロキは永久に興味の尽きることのないトリック満載の箱のようなもので、人々が彼のことを理解できたと思えた瞬間に、まったく違う正体を現して見せたりする」と語る。

そんなロキが本作では“様々な世界のロキ”と顔を合わせることになる。シルヴィは女性のロキだ。彼女もまたロキと同じように行動力があり、機敏で、愛されたい気持ちが強いのに相手に対して逆のことを言う。ふたりは行動を共にする中で反発し合い、時にダマし合う。なぜなら、違う歴史に生きてはいるがふたりともロキだからだ。

他にも本作には様々なロキが登場する。自信満々で窮地に陥っても反省のかけらも見せないロキ、誰かのために身を挺して戦うロキ、無口で本心を見せないとするロキ、まだ幼く誰かの愛情を求めているロキ……見た目も、衣装も、生物の種が違っても、それはみんなロキなのだ。

私たちは本シリーズを通じて、物語の冒頭から登場する主人公・ロキが様々な“別の時空間の自分”に出会う場面に立ち合い、これまで愛してきたロキの様々な側面を見ていくことになる。さらに劇中で彼は過去を振り返り、自分のこれまで歩んできた人生と選択に想いをはせる。いままで自分がやってきたことは正しかったのだろうか? 自分は今のままでいいのだろうか?

「この番組は、ロキのもっと内省的な側面を掘り下げようとしていると思う」と本作の脚本を手がけたマイケル・ウォルドロンは説明する。「TVAはロキが自分をかえりみるように強制するんだ。彼に鏡をかざして、自分自身に質問させる。“自分は本当は何者なんだ?”とね。兄ソーや父オーディン、故郷アスガルドから解放されたロキは、何が自分を自分たらしめているのか問われることになる」

興味深いのは、様々なロキを見れば見るほど、知れば知るほど、私たちはロキの複雑で、ひと筋縄ではいかない彼のキャラクターを好きになっていくことだ。劇中でロキはシルヴィと一緒に冒険をする中で、彼女に特別な感情を抱き、彼女に心を打ち明けたいと思い始め、シルヴィのためなら危険な目に遭ってもかまわないと思うようになる。通常のドラマであれば、これは“恋”と呼ばれるはずだ。しかし、思い出してほしい。シルヴィは違う時空間を生きるロキなのだ。

もし、アイアンマン=トニー・スタークや、スパイダーマン=ピーター・パーカーが違う時空間の自分を好きになったら、それは単純な自己愛やうぬぼれだと思われてしまうかもしれない(ちなみに映画の中でトニーとピーターは、そんな自分のうぬぼれを鋭く指摘し、ヒーローでもない本来の自分を認めてくれる人をパートナーとして選んでいる)。しかし、ロキが別の世界のロキを愛することは、彼の変化を描いていると思える一方で、自己愛が強いロキの内面を別のアプローチから描いているようにも見えるのだ。

ロキはシルヴィに会って変化した、と考えるか? ロキが心から愛するのはやっぱりロキだった、と考えるか? 本作で起こる様々なドラマや意外な出来事は、無理矢理につくったものではなく、すべてが“ロキが自分自身に向き合う”ドラマになっている。すでに全話を視聴した人もこの観点で最初から見直してみると、意外な発見や初見では気づかなかった“細やかな感情の変化”を見つけられるかもしれない。

迷い、変化し、恋をしたことでロキは大きく変わったように見える。しかし、もしかしたらロキはそのままで、本作の描かれている要素はロキの中にずっとあったものかもしれない。どれだけ見ても全貌が掴めない。そんなロキの真の魅力が本シリーズにはあふれているのだ。

本作がマーベルの“未来”を決める!? この夏のマーベル作品が見逃せない理由

本作は繰り返し説明している通り、様々な時空間が登場する。時間の流れは実はひとつではなく、何かしらの選択によって“分岐”し、複数の時間が平行して流れている。マーベル作品ではこのような考え方を以前から少しずつ導入していて、複数の時空間が平行して存在することを“マルチバース”と呼んできた。

そしてドラマ『ロキ』でついにマルチバースの存在が物語の最前面に出てくるようになった。複数の時間が存在し、そこにはそれぞれのロキがいて、なんとその時空間を移動することができる! なぜ、こんなことが可能になったのか? 別の世界には別のアイアンマンがいるのか? その世界でも彼はチーズバーガー好きの天才社長なのか? そして別世界のアイアンマンもやはり剪定=消されてしまうのか?

今後、マーベル作品で起こるかもしれない様々なドラマを楽しむ上で、絶対に外すことのできない基本的な設定やルールが、ドラマ『ロキ』のクライマックスでついに明らかになっていく。

本作の脚本家マイケル・ウォルドロンはこう宣言する。「本作が、これからのマーベル作品全体に影響を与え、オリジナルドラマだけじゃなく将来の世界にまでその影響が広がる。それが僕たちが願っていることだよ。観客は『ロキ』の結果や影響が、この先のマーベル作品に現れるのを観ることになると思うよ」

ディズニープラスで楽しむことのできる映画、オリジナルドラマはすべて何らかのかたちで今後のマーベル・スタジオ作品につながっている。

現在、プレミア アクセスで配信中の『ブラック・ウィドウ』はアベンジャーズの人気メンバーでもあるスゴ腕スパイ、ブラック・ウィドウ=ナターシャ・ロマノフの知られざる過去と、壮絶な戦いを描くアクション大作だが、劇中には観客の予想もしなかった“未来のマーベル・スタジオ作品へのリンク”が埋め込まれている。

8月11日(水)から全世界で独占配信を開始するオリジナルアニメーションシリーズ『ホワット・イフ…?』は、マーベルのヒーローたちの“ありえたかもしれない別の運命”を描く注目作だが、『ロキ』を事前に観ておくと“ここで時間の分岐が起こった”と思うかもしれない。

秋には新たな映画最新作『シャン・チー/テン・リングスの伝説』と『エターナルズ』が登場。ここで初登場する新キャラクターの存在は、これまで活動してきたヒーローたちの関係を変えることになるだろう。

この夏、ディズニープラスで映画、オリジナルドラマ、新作アニメーションシリーズをまとめて楽しむことで、マーベル・スタジオの“未来”が見えてくるはずだ。

『ロキ』
ディズニープラスで配信中

『ブラック・ウィドウ』
映画館&ディズニープラス プレミア アクセスで同時公開中

(C)2021 Marvel.

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