海辺の映画館-キネマの玉手箱
20/7/28(火)
(C)2020「海辺の映画館-キネマの玉手箱」製作委員会/PSC
映画館で観る映画は、観客が自分の意思で止めたり巻き戻したりできない。観客にできるのは、途中で映画館を出ることだけだ。
映画は時間芸術なので、映画館では、作り手が観客の時間を支配する権利を持つ。2時間の映画なら2時間で観なければならないし、気に入ったシーンをもう一度観ることも、ラストシーンを先に観ることもできない。
大林宣彦は理知的な人だ。映像感覚の破天荒さから感性だけで作っているようにみえるかもしれないが、これまでずっと計算され尽くした映画作りをしてきた。
しかし、最後の作品となってしまったこの映画で、大林宣彦はあえて自らの情念を開放させ、緩急とか間といったものを無視して、3時間にわたり走り抜ける。まるでマラソンのように。
もしこの映画を、DVDで観たら、疲れて途中で止めてしまうかもしれない。それくらい、情報量が多く、感情の濃度が高い。
だからこそ、映画館で、大林宣彦に時間の支配権を委ね、その冷静な狂気とシンクロするのが、正しい見方の気がする。
覚悟が必要だ。しかし、観て、後悔はしないはずだ。
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