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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

マヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)

アーティストを作った名著 Vol.20 マヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)

ナタリー

19/8/27(火) 18:00

日々創作と向き合い、音楽を生み出し、世の中に感動やムーブメントをもたらすアーティストたち。この連載は、そんなアーティストたちに自身の創作や生き方に影響を与え、心を揺さぶった本について紹介してもらうものだ。今回は日本のアンダーグラウンドシーンを牽引するロックバンド・GEZANのマヒトゥ・ザ・ピーポー(Vo, G)が登場。5月に初となる小説「銀河で一番静かな革命」を発表した彼の愛読書を紹介してもらった。

01. 逢沢りく(文春文庫)
著者:ほしよりこ 

白と黒で割り切れない世界

カンペキな家庭に生まれたりくの不完全なこころ。白と黒で割り切れない世界の曖昧さと、その間にある色や感情を受け入れてようやく始まる人生についての物語。クラスに何人かいた、いじめっ子でもいじめられっ子でもない、授業中いつも窓の外を見ている、あの子。イヤホンで何聞いてるんだろうな、とか考えてた。
きっと学校の先生はそんな子のことを覚えていないだろう。いつも思い出話の主役になるのは優等生か不良ばかりだから。
あの時みた、中庭を吹き抜けていった風のことは誰が覚えておくのだろう? 屋上に上がってたタバコの煙は? 体育館の真ん中、片付け忘れたバスケットボールは? 毎分、毎秒、物語に光が当たることなく忘れられていく世界。その一つ一つ、すべてが存在していた物語なんだ。 

02. 「CANARY」(赤々舎)
著者:志賀理江子

世界の曖昧さを許してくれた写真集

この世界とあの世界、どちらも存在するということを潜在的に知っている人とこの世界だけが現実と決め込んでいる人とでは、会話をしてても日常的にずれが生まれてくる。

この写真集にうつされた得体の知れないものからは、いつ、どこで、誰が、なんていうプロフィールや記号が剥奪されているにも関わらず、どこか懐かしいとさえ思った。自分ですらない頃、記憶の中で出会っていた景色。一度知ったことは思い出せなくても、忘れない。写真集を買って抱えて帰る道、雨が降っていた。

2008年、音楽を始めるためにギターを触り始め、メンバーとスタジオに入り始めていた頃にこの写真集と出会って、毒を漂白して、ないものとして扱わなくていいのだと諭されたように思う。この世界の曖昧さを許してくれたこのページをめくる時間が何より優しかったのだ。壊れたままでいていいのだと。  

03. 「からすたろう」(偕成社)
著者:やしまたろう

小数点以下としてとりこぼされた者のストーリー

この絵本のからすたろうはわたしだった。学校生活、集団意識、協調性。その後訪れる社会の予行練習と呼ばんばかりに張り巡らされたいじめの構図。授業をサボって冷房のきいた図書館でページをめくった。カラスの鳴き真似のかわりにわたしは変な声がでた。

そういえばカラスの黒色って、該当する色を認識できないから黒と呼んでいるだけで、本当は黒色ではないらしい。小数点以下としてとりこぼされた者のストーリーが人知れず消えていく。今日も、からすたろうは泣いている。お前の耳元で。

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