劇団宝船『社交辞愛』
19/11/24(日)
実は劇団宝船の船出には、三鷹市芸術文化センターは少しだけ関わりを持っている。2003年1月、下北沢ザ・スズナリで拝見した、小劇場の座長(主宰者)中心の座組による舞台、猫のホテル『新春!座長祭り』があまりにも面白すぎたので、主宰の千葉雅子さんに「もしまた座長祭りを開催するときは、ぜひ三鷹で」とお願いしてみたら、あれよあれよと話が進み、2004年2月、三鷹市芸術文化センター星のホールにて『座長祭り2004』が実現することとなるのだが、その時、千葉さんから届いた出演座長の名前の中に、新井友香さんの名前があった。
ん? 新井さんは2002年に解散したハイレグジーザスの劇団員ではあったが、その後劇団を主宰しているという話は聞いたことがないが?
少し訝(いぶか)しがりながら確認の電話をした私に、千葉さんは「あっ、大丈夫です。公演中だけ座長になってもらいますんで」と、あっけらかんとお答えになった。
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<劇団宝船HPより>
劇団宝船は、ギャグで作った架空の劇団が出発点であった。「座長祭り」という公演があり、様々な劇団の座長さんが出演することになっていた。座長でも無い私は、オファーを頂き驚いたが、猫のホテル座長の千葉雅子さんに「座長の振りをして頂ければいいので」と言われ、架空の劇団の座長という設定で出演することに。千葉さんから、「浅香光代みたいな女座長の劇団ということでお願いします。劇団名は女剣劇とか酒ってイメージがいいですね」と言われ、「劇団宝船」と名付けた。もちろんメンバーは誰もいない。だが、公演中ずっと「新井座長」と、呼ばれ続け、満更でも無い気分になっていた。
そして、公演が終わった。
翌日、ある女優さんから、一通のメール。
「私達の劇団が解散することになって、押さえていた小屋が空いてしまいました。肩代わりして公演してくれる劇団を探しています。心当たりないでしょうか?」
運命だと思った。
私は、劇団宝船を旗揚げした。
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その第一回公演『嗚呼、お前もか…』(2004年12月/下北沢「劇」小劇場)が抜群に面白かった。新井友香が導く嘘の無いセリフが愛憎に絡みつき、手練(てだれ)の役者たちが外連味溢れる芝居で、人間関係の清も濁も根こそぎ呑み干していた。それは「恋の為ならどんなに汚れても良いという主張の元に、恋愛至上主義でいて“後ろ向きな”作品を描く」(劇団HPより)を標榜する新井友香戯曲のもと、人間の裏の裏の顔を浮きがらせていく切れ味の良いセリフの応酬であり、「ああ、世の中は何でもありだなあ」と思えてくるほどの、爆発力のある舞台であった。
そして。
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気付いたら、もう愛していなかった。自分も愛していないのだから、相手もきっとそうなのだ。
それでも、互いに言い合うのだった。
「愛してる…」
なけなしの愛をかきあつめれば、なんとかなると思っているのか…
なにをなんとかしたいのか…
「愛している…」は、社交辞令になりさがった。
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第8回公演『社交辞愛』
コピーに踊る新井節に期待を高めつつ、キレッキレの役者陣が繰り広げる宝船ワールドを、堪能したい。
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