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[ALEXANDROS]、異彩を放つ最新曲「あまりにも素敵な夜だから」で伝える“音の楽しさ”

リアルサウンド

19/11/8(金) 18:00

[ALEXANDROS]「あまりにも素敵な夜だから」

 本日11月8日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に[ALEXANDROS]が出演する。今回の放送では「動画再生回数1億回超えヒット曲特集」に際し、YouTubeで1億再生を突破した大ヒット曲「ワタリドリ」を、加えて10月30日にデジタル配信リリースされた最新曲「あまりにも素敵な夜だから」を披露する。

 ドラマ『ミス・ジコチョー~天才・天ノ教授の調査ファイル〜』(NHK総合)の主題歌にも起用された最新曲「あまりにも素敵な夜だから」は、[ALEXANDROS]の楽曲の中でも異彩を放つシティポップ的なアレンジが印象的な1曲だ。タイトでストイックなバンドサウンドを主軸としながらもイントロから煌めくようなシンセサイザーが存在感を示し、都会的な雰囲気を底上げする。

[ALEXANDROS] – あまりにも素敵な夜だから (MV)

 ファンクの色味の強い軽快なサウンドを、川上洋平(Vo/Gt)による抑えた雰囲気のボーカルがしなやかにまとめ、爽快感のあるサビへと流れていく展開には、静かなカタルシスがある。シンプルでありながらミクスチャー的なアプローチやジャンクなコーラスなど、遊び心も満載。キラーチューンというほどの破壊力のある曲調では決してないが、そのサウンドの構成はどこまでも巧みで、何も考えずに耳を傾けているだけでも歌詞の中で描かれる“踊り明かした夜明けの街”のようなイメージがしっかりと想起されるようだ。

 遊び心や音の楽しさを表現しようとすると、どうしても奇をてらった“足し算”のアプローチになるようなイメージを抱いてしまいがちだが、[ALEXANDROS]は“足し算”だけでなく“引き算”も巧みに取り入れながら、音の心地よさや面白さを存分に感じさせるトラックを完成させている。その貫禄すら感じられるアプローチの布石となったのは、間違いなく約1年前にリリースされたアルバム『Sleepless in Brooklyn』だろう。

 アメリカ・ブルックリンを拠点として制作された『Sleepless in Brooklyn』は、それまでの[ALEXANDROS]のイメージを刷新するような革新的さに満ちたアルバムだ。これまでも取り入れてきたハードロック的なアプローチが際立つ「Mosquito Bite」「spit!」「KABUTO」などでは特にローのサウンドが際立ち、洋楽ライクなダイナミズムと重さ、そしてビート感の面白みを最大限に感じられる。一方で、「アルペジオ」や詩人・最果タヒとのコラボレーションで話題になった「ハナウタ」などのメッセージ性の高い楽曲では、日本に脈々と受け継がれてきたJ-POP的なキャッチーさとペーソスを、サウンドや川上のボーカルスタイルからも存分に感じることができるだろう。

 [ALEXANDROS]の楽曲の大きな特徴のひとつに、海外での生活や制作活動を通したグローバルな音楽への深い造詣が反映されている点がある。国内のロックバンドではあまり取り入れられないグルーヴ感やビート感を感覚的/構築的に取り入れながらも、楽曲によってそれを異物(フック)として扱うこともあれば、ごく自然に“その曲に元々必要だったもの”として配置することもある。そのフラットな姿勢が洋楽的なアプローチと日本的なキャッチーさ、哀愁が巧みに共存した[ALEXANDROS]らしいサウンドの肝となっているわけだが、『Sleepless in Brooklyn』ではそれがより洗練され、貫禄の感じられるものとなっているのだ。

 川上洋平はアルバム発売時のインタビューで「昔のものは早く捨てたい」と言い放っていた。『Sleepless in Brooklyn』は、彼らにとっていわば“再デビュー作”のようなものだったのかもしれない。それまでのサウンドを踏襲しながらも、ある種“捨て去っていく”ほどの感覚でブラッシュアップを加えたこの作品を経た今、「あまりにも素敵な夜だから」で改めて[ALEXANDROS]が聴かせるのは、“音楽は気持ちが良いものだ”という大前提だ。

 [ALEXANDROS]は、デビュー当時から全英語詞の楽曲なども当たり前にリリースしてきた。ほかにも全英語詞を取り扱うバンドが同世代にも多い中、群を抜いてネイティブの洋楽に近いアプローチをボーカルテクニックや歌詞の点でも徹底してきた彼らだが、ともすれば国内のリスナーとは距離が生まれてしまいかねないスタイルを貫き続けているのは、自らのサウンドアプローチへの圧倒的な自信があるからなのではないだろうか。

 シンプルな楽曲の中にもグローバルな表現を取り入れ、どこまでもフラットに“音楽的な気持ち良さ”を徹底した今作には、爽快感や陶酔感、浮遊感などリスナーの体感的な感覚までをも支配しうるテクニックがさりげなく詰め込まれている。そして、その心地よさに身を委ねている間に、歌詞を聴き込む前から楽曲に込められたメッセージや物語まで感じ取れてしまうのだ。

 英語詞は国内のリスナーには完璧には理解してもらえないかもしれない(現に、[ALEXANDROS]の多くの楽曲のMVでは日本語訳の字幕を入れる試みも行われている)。一方で、日本語のみの詞だと海外のリスナーには伝えたいメッセージが伝わりきらない可能性もある。その上で[ALEXANDROS]がリスナーの心を掌握するロックバンドとなりえたのは、国境を越えて伝えることができる“音の楽しさ”をひたむきに貫いているからではないだろうか。「あまりにも素敵な夜だから」は、そんな彼らの最新の姿が凝縮されたポップスだ。

■五十嵐文章(いがらし ふみあき)
音楽ライター。主に邦楽ロックについて関心が強く、「rockinon. com」「UtaTen」などの音楽情報メディアにレビュー/ライブレポート/コラムなどを掲載。noteにて個人の趣味全開のエッセイなども執筆中。ジャニーズでは嵐が好き。
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